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[MOM3574]関東一MF神山寛尚(3年)_Bチームでかけがえのない経験を得た3年生が、圧巻の2ゴールで大逆転劇の主役に!

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Bチームも経験したMF神山寛尚は2ゴールで大逆転劇の主役に!

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[9.4 高円宮杯東京1部リーグ第9節 FC東京U-18(B) 2-3 関東一高]

 Bチームで過ごした1か月が、多くの気付きをもたらしてくれた。自分を見つめ直し、プレーに自信を取り戻し、仲間の想いを背負って臨んだ一戦での2得点は、決して偶然なんかじゃない。「それまでは最後の局面で『自分が、自分が』というプレーが多くて。でも、やっぱり『そうじゃないな』ということをBチームで思うことができましたし、『チームのためにプレーする』というところに、この夏で本当に気付かされた部分がありました」。

 関東一高の副キャプテンを務めるMF神山寛尚(3年=町田JFC出身)は、『チームのためにプレーする』ということの本当の意味を理解し始めている。

 出番は思っていた以上に早くやってきた。FC東京U-18(B)と対峙した、T1(東京都1部)リーグ第9節。前半21分に、神山はピッチに投入される旨を指揮官から伝えられる。「ほとんどアップもしていなくて、準備しろと言われてから入ったんですけど、少しドキドキしました(笑)」。1点ビハインドの状況で左サイドへ解き放たれる。

「チームの流れが良くないというのは見ていてわかったので、どうにか基点を上手く作れるようにやりながら、攻撃でテンポを作ろうという意識で入りました」。ただ、チームもなかなかリズムが掴めない上に、2失点目も献上。小さくないビハインドを負って、前半は終わってしまう。

 ハーフタイム。小野貴裕監督から的確な指示を受け、関東一は生き返る。後半9分にはMF肥田野蓮治(3年)のスルーパスから、途中出場のMF鹿岡翔和(2年)が1点差に迫るゴールを奪うと、以降もゲームリズムを掌握し、攻撃の手数を繰り出し続ける。そして、終盤。神山が眩い輝きを放つ。

 右サイドでレフティの肥田野が前を向く。「最初は肥田野がもう1回切り返すかなと思ったんですけど、『やっぱり入っておかないと』と思って、必死に入りました」。利き足とは逆の右足で送り込まれたグラウンダーの速いクロスに、神山は身体ごと突っ込んでゴールネットへボールを突き刺す。39分。2-2。

 左サイドでこちらも途中出場のMF小谷旺嗣(2年)から、インサイドに潜ってパスを受ける。「最初は裏を走ろうと思ったんですけど、ここは我慢だなと思って中に入って、味方が縦に走ってくれたので、最初はそこを使おうと思ったんですけど、角度的にちょっと厳しいかなと思いましたし、今日は1発決められていたので、最後も『チャレンジしよう』と思って、強気で振りました」。

 自ら打ち切ったシュートが、綺麗な軌道を描いてゴール右スミへ力強く飛び込むと、そのままベンチメンバーの待つ歓喜の輪へまっしぐら。45+2分。3-2。「ちょっと練習では出ないようなシュートでした(笑)。やっとチームに少し貢献できたなという感じで、素直に嬉しかったです」と笑った神山の2ゴールが、劇的な大逆転勝利を鮮やかに呼び込んだ。

「自分は夏にBチームの方で活動していて、ああいうところに入るということを意識してプレーしてきたのが、今日のゴールに繋がったと思います」と自ら話したように、神山は7月からの1か月間をBチームで過ごしていた。その理由を小野監督はこう明かす。「神山は中盤の真ん中をやるような選手なんですけど、今年は点を獲る選手が出てこないといけないので、そのために本人にも『そっちでチームの中心になって、勝たせる仕事をしてこい』ってBチームに行ってもらいました」。

 神山は目の前のボールと、真摯に向き合う。「監督からは『今のままではチームの戦力に繋がらない』ということで、『もう1回戻って来たいなら、もう1つ自分がギアを上げてやって来い』という感じで言われました。このタイミングでBチームに行かせてもらったことは、やっぱり凄くプレーに生きていると思いますし、良い意味で凄く今に繋がったなと思っています」。特に意識して取り組んだゴール前への入り方とスプリントが、この日の2ゴールに直結。重ねた努力は嘘をつかなかった。

 仲間の大切さも、自分の中でより実感している。「Bチームで一緒だった3年生のヤツらは試合の前日にLINEを送ってくれたり、顔を合わせた時にイジったりされることもあるので(笑)、ありがたいです」。誰もが自分の立ち位置に悩み、もがき、それでも、大好きなサッカーと毎日を過ごしている。当たり前のようだが、それを改めて実感した神山は、自分がこのチームにもたらせるモノもようやく見えてきたようだ。

「自分は副キャプテンという立場もある中で、今まで自分の役目って何かなというのがあったんですけど、今年はチームの雰囲気的にも少しマジメな部分があるので、そこはちょっと雰囲気を和ませながらとか、今はそういうところも意識してやっています。最後はチームが1つになって、リーグ戦も選手権もしっかりやり切って、次の代に繋げられるように、何かを形として残せればなと思っています」。

 迷いは消えた。チームのために。仲間のために。神山は残された関東一での4か月を、自分にしかできない役目を考えながら、全力で走り切る。

(取材・文 土屋雅史)

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