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中体連出身の素材系ストライカー。千葉U-18FWアジズブライアン瑛汰が突き付ける同世代への挑戦状

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得意の左足でゴールを奪うジェフユナイテッド千葉U-18FWアジズブライアン瑛汰

 182センチの長身。左利き。しなやかなボールタッチ。抜群のスピード。期待を寄せたくなるスペックを兼ね備えた素材系フォワードは、穏やかな口調の中にも自身の描く未来をしっかりと表現する。

「今年はリーグ戦で一番点を獲りたいですね。得点王を目指していますし、まずはこのチームで結果を残して、トップに昇格したいです。その先は海外に行って、憧れているラシュフォード選手みたいに活躍したいと思っています」

 大きな伸びしろを感じさせるアタッカー。ジェフユナイテッド千葉U-18(千葉)を前線で牽引するFWアジズブライアン瑛汰(2年=荒川第九中出身)のポテンシャルには、見守り続けていきたい魅力が秘められている。

「最近はゲキサカでもそうですけど、同年代の選手が活躍しているのを見て、『自分もやってやりたいな』という気持ちが強かったので、点を決めるという結果で示せたのは良かったです」。2022プーマカップ群馬の2日目。前橋育英高(群馬)と対峙したアジズは、その能力をゴールという形できっちり示してみせる。

 1点ビハインドで迎えた後半。まずは右サイドからスピードに乗ったドリブルでカットインしながら、ゴールを見据えると左足一閃。右のポストを叩いたボールは、そのままネットに吸い込まれる。この一撃が“剛”だとすれば、2点目はまさに“柔”といった形だった。

「自分たちのチームはカウンターの得点が少ないという課題があるんです」と話すアジズは、MF南波将人(2年)がカウンターからドリブルで運ぶコースを予測しつつ、巧みにポジションを確保。ラストパスを引き出すと、飛び出したGKも冷静に見極めてチップキックでボールをゴールネットへ送り届ける。



「朝岡(隆蔵)監督にも『キーパーが出てきたら“ツン”と浮かすようなシュートはイメージしろ』と言われていたので、イメージ通りにできて良かったです」。アイデアと技術が融合したゴラッソ。異なる形で2ゴールをマークしたものの、「得点は嬉しかったですけど、同年代のみんながもっと頑張っているので、もっとやっていきたいです」と自らを引き締める言葉も印象的だ。

 昨年の4月にはU-17日本代表候補合宿に参加。トップレベルの空気を感じる中で、何度も口にしている“同世代”から大きな刺激を受けた。「福田師王選手(神村学園高)と内藤大和選手(ヴァンフォーレ甲府U-18)は意識していますね。そんなにたくさん話はしなかったですけど(笑)、『力強さが凄いな』と思いましたし、前で収める動きは自分にできない部分もあるので、そこは参考にしています」。4日間の“非日常”を味わったことが、“日常”にも小さくない影響を与えているという。

 中学時代は中体連の荒川第九中でプレー。ただ、当時からサッカーに対する意志の強さは学校の選択にも現れていた。「本当は違う中学校が家からは一番近かったんですけど、小学校の時のチームの先輩が第九中学校に通っていたこともあって、練習参加に行った時に『良い雰囲気だな』と思って決めました」。

 その才能はすぐさま発見される。中学1年生の時に東京都中体連選抜での活躍が千葉のスカウトの目に留まり、U-18へと練習参加することに。「櫻川ソロモン選手がいるというのは知っていて、ユースの練習に1回だけ参加した時に『凄いな。自分もああなりたいし、あの人を超えたいな』と思ったので、入りました」とJクラブで挑戦する選択肢を自ら選んだ。

 去年はケガが多く、なかなか思うようなパフォーマンスを発揮できなかっただけに、今年に懸ける想いは誰よりも強い。「去年はあまり良い成績は残せなかったので、今年は結果にこだわる年にしたいですね。フォワードは点を決めることが求められると思うので、ゴールを決めることと、あとは前線でボールロストを減らして、基点になれる選手になりたいと思います」。トップ昇格を考えても大事な1年に、大きな決意を抱いて立ち向かっていく。

 大好きな選手は昔から変わらない。「マンチェスター・ユナイテッドのラシュフォード選手ですね。身長や体格も似ていて、スピードという武器も一緒で、決め切る力が凄いので、参考にしています」。イングランド代表のストライカーに自身を重ね合わせ、同じステージで戦う日々を夢見ている。

 まだまだ課題は多いものの、それを補って余りあるスペシャリティを携えていることも間違いのないところ。歳の近いフォワードたちには負けられない。ここからの努力次第で世代有数のタレントに成長するだけの可能性を、アジズは間違いなく有している。

(取材・文 土屋雅史)

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