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FW福田師王の3発など圧巻の「7-0」。決まりごと徹底の神村学園が個の力も見せつけて静岡学園に大勝

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後半12分、神村学園高FW福田師王が右足シュートを決め、ハットトリック達成

[8.13 ユースワールドチャレンジ・ プレ大会第1節 神村学園高 7-0 静岡学園高 J-GREEN堺]

 高体連トップレベルの神村学園高(鹿児島)、興國高(大阪)、静岡学園高(静岡)、昌平高(埼玉)の4チームが優勝を争う「ユースワールドチャレンジ・プレ大会2022」が13日、大阪府堺市のJ-GREEN堺で開幕した。開幕試合でプレミアリーグWEST3位の静岡学園とプリンスリーグ九州首位・神村学園が激突。神村学園がU-19日本代表候補FW福田師王(3年)の3得点など7-0で大勝した。

 今大会は公式戦ではなく、フェスティバル。秋冬の公式戦や選手の成長のためにテストした部分もあった。とは言え、ともに注目選手擁する強豪対決で、神村学園が衝撃的な勝利。コロナ禍の影響による不振からチームの決まりごとを作ってきたという神村学園が、「奪われた瞬間の5秒間とそこの5秒間で奪えなかったら30秒間スプリントして帰る」(有村圭一郎監督)を徹底し、また個の力を見せつけた。

 神村学園は前半5分、注目FW福田がファーストゴールを奪う。左スローインからMF積歩門(3年)と日本高校選抜MF大迫塁主将(3年、C大阪内定)がワンツー。積のラストパスを福田が左足ダイレクトでゴールネットに沈めた。

 神村学園は、9分にも敵陣での奪い返しから福田がダイレクトの左足シュート。これは静岡学園のU-18日本代表候補GK中村圭佑(2年)に阻止されたが、神村学園はテーマ通りの切り替えの速さ、球際の強度、攻撃の精度でも静岡学園との差を示す。

 19分には、大迫の展開からFW西丸道人(2年)が右サイドへ抜け出す。MF笠置潤(3年)を経由して左へ繋ぐと、粘ってキープした積がファーサイドへラストパス。これを西丸が左足ダイレクトで流し込み、2-0とした。

 さらに26分、敵陣で大迫と福田が立て続けに鋭いアプローチ。奪い返してFKを獲得すると、笠置がボールを運んで右SB有馬康汰(2年)がロングクロスを上げる。中央でマークを外した福田が頭で右隅に決めて3点目を挙げた。

 静岡学園は今夏、いずれも主にトップ下などを務めるMF望月空(3年)、MF西井大翔(3年)を左右のSBに配置。内容を向上させてきたというが、この日は孤軍奮闘していたU-17日本高校選抜の10番MF高橋隆大(3年)を除くと、全体的に戦う姿勢を表現できず、仕掛ける回数も少ない。各選手が随所でテクニックを見せていたものの、会場を沸かせたシーンはわずかだった。

 一方の神村学園は、36分にも大迫の左足キックから、切り替え速い動きを連発していた西丸が右ハイサイドでキープ。そして、MF高橋修斗(2年)、笠置が粘り、最後は左へこぼれたボールを積が右足で決めて4-0で折り返した。

 静岡学園の川口修監督は「ハーフタイムに伝えたのはそこだけ。出足が一歩遅いから」。戦う姿勢を厳しく指摘された静岡学園は後半、明らかに攻撃のテンポが上がり、ゴールへ向かう姿勢が強くなった。開始直後にU-18日本代表候補MF寺裏剣(3年)の仕掛けからFW神田奏真(2年)が右足シュート。ドリブルで魅せる高橋を中心に仕掛ける回数、シュート数を増やした。

 迫力と意地も感じられた静岡学園の反撃。だが、神村学園は止まらない。後半9分、右サイドでの素早いリスタートから高橋が得意の左足でクロス。これを西丸が頭で決めると、12分にも大迫からのパスを受けた福田が相手のU-18日本代表候補CB行徳瑛主将(3年)から激しいチェックを受けながらも倒れずに前を向き、右足シュートを叩き込む。

 怪物ストライカーは、復調を印象付けるハットトリックを達成して笑顔も。この日はU-16日本代表FW名和田我空(1年)ら年代別日本代表候補3選手を国体予選の活動で欠いた神村学園だが、有村監督は「やることがウチだけがちょっと上手くいった感じでしたね。プリンスの後期の開幕へ向けてと選手権へ向けてのところをやって、夏も底のところもあったし、そういった意味では良い戦いができた」。27分にも右サイドでパスを繋ぎ、高橋が逆サイドへ展開。積がコントロールから右足で決めて7-0とした。

 終盤は静岡学園のテクニックの前に攻め込まれるシーンも増えていたが、GK広川豪琉(3年)、CB大川翔(3年)、CB中江小次郎(3年)、左SB下川温大(2年)や交代出場組もやるべきことを貫徹。相手に得点を許さなかった。

 日本一を期待されたインターハイは練習不足もあって身体が動かず、勢いもなかった。その後の遠征も内容・結果が出せず、「チームとしてどうすればよいか分からない状態だった」と大迫は明かす。

 その状態は今大会直前まで続いていたようだが、有村監督の提案でスタートした奪い返しとスプリントがトンネルから抜け出すきっかけに。各選手が実直に続けた静岡学園戦で大迫も「一番ビックリしています。静学さんの状態もそんなに悪くなかったと思う。勝ちたいという気持ちとかこのゲームに向上心を持ってやれたので快勝できたと思います」という白星を収めた。

 コンディション不良があったとは言え、インターハイは不甲斐ない結果。その悔しさも注目の一戦でぶつけて会心のゲームを演じた。この1試合だけでなく、内容・結果の伴った試合を続けること。大迫は「まだ1試合目なので2試合、3試合。これが選手権だったら5試合続けていかないといけない。それを続けられるように意識してやっていきたい」。本人たちも驚く快勝を良い意味での自信に。多くの観衆や関係者が見守る大会で、チームのために走り、繋ぎ、個の特長を出し合って3連勝する。

(取材・文 吉田太郎)

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