beacon

静岡学園が0-2から3発逆転勝ち!選手権有力校の履正社は継続、集中することの必要性を再確認

このエントリーをはてなブックマークに追加

後半20分、決勝ゴールを決めた静岡学園高CB行徳瑛主将(名古屋内定、左)が同じく1得点のMF寺裏剣と喜ぶ

[11.26 高円宮杯プレミアリーグWEST第21節 履正社高 2-3 静岡学園高 履正社茨木グラウンド]

 高円宮杯 JFA U-18サッカープレミアリーグ 2022 WESTは26日、第21節の履正社高(大阪)対静岡学園高(静岡)戦を行い、3-2で静岡学園が逆転勝ちした。

 前半、「攻撃的な守備ができていた」(平野直樹監督)という履正社が運動量を増やしてコンパクトな守備。「相手の嫌なことをしろ」という指揮官の言葉通り、静岡学園のボランチ、サイドプレーヤーに前を向かせなかった。

 静岡学園はボールを握る時間を増やしていたものの、バックパスが増え、ボランチが前へ飛び出すような動きもなかった。一方の履正社は、ボールを奪うとゴールへ向かう攻撃。前半からボールに触れる回数を増やしていたU-18日本代表MF名願斗哉(3年、川崎F内定)が左サイドから3度4度と仕掛けてラストパスへ持ち込む。

 26分にはWEST得点ランキング2位、14得点のFW古田和之介(3年)を起点にMF川端元(3年)のクロスを名願が右足シュート。静岡学園はMF高橋隆大(3年、G大阪内定)がドリブル、ワンツーで幾度かDFを剥がし、MF白井柚希(3年)が反転シュートを放つシーンもあったが、なかなか相手の脅威となるような攻撃をすることできなかった。

 38分、履正社が先制する。FKのクリアボールを拾ったCB石塚蒼空(2年)がPA方向へループパス。静岡学園DFがクリアしきれず、こぼれ球に反応したFW小田村優希(3年)が右足ボレーでゴールへ叩き込んだ。

 さらに41分、履正社は川端が右サイドを抜け出すと、古田がドリブルで鋭く中へ。最後は短いラストパスから名願が右足で決め、2-0と突き放した。静岡学園の川口修監督は「前半は0点。この一戦に懸けるという気持ちでやっていない」。選手間では、厳しい言葉が出ている一方、険悪なムードを気にして「悪口言うの止めようぜ」という声も。だが、指揮官はハーフタイムにその甘さを排除する。人生を懸けてワールドカップを戦う選手たちのレベルには届かなくてとも、17歳、18歳に求めた本気、この一戦に懸ける姿勢。檄を受けた静岡学園が後半に試合を引っくり返した。

 6分、右サイドから仕掛けた高橋のクロスをMF寺裏剣(3年)が右足ダイレクトで合わせて1点差。さらに8分には、PAで粘った高橋の落としをMF保竹駿斗(3年)が左足で突き刺してあっという間に追いついて見せた。

 履正社は後半、中盤の運動量が低下。一方で静岡学園は後半、前向きにボールを運び、白井、保竹ら中盤の選手が前方のスペースを突く動きを見せる。加えて、後半から右SBへ移った林築玖(3年)がインサイドのスペースへ侵入。相手に的を絞らせず、高橋ら技巧派たちが躍動した。「(前半とは)本当に別のチームだよね。(選手に伝えたのは選手権でも課題となった)マインドの部分が足りないと今後のサッカー人生で成長しない、良い未来が待っていないよと」と川口監督が振り返ったように、静岡学園は前向きに変化。一方、履正社はボランチが押し下げられて対応が後手となり、相手の波状攻撃を受け続ける展開となった。

 静岡学園は保竹の左足ミドルなどで相手ゴールへ迫ると20分、CKのクリアを落ち着いて繋いで右サイドへ。そして、高橋がクロスを上げ切ると、CB行徳瑛主将(3年、名古屋内定)が豪快ヘッドをゴールに突き刺した。前日まで内定先の名古屋に帯同し、セリアAの強豪・ローマとの親善試合(25日)にも出場した行徳の一撃で静岡学園が逆転に成功した。

 履正社は交代出場した選手たちのテンポが遅れたり、ゴールへ向かうプレーができず。この日は徳島内定の左SB西坂斗和(3年)や中盤の柱であるMF森川楓大(3年)が欠場し、192cmCB平井佑亮(3年)も先発を外れる中、前半の頑張りを後半に維持することができなかった。平野監督は「(守備や走り続けることは)シンドいことかもしれないけれど、相手に勝とうと思ったらやらないといけない」。選手たちには得意な動きも、苦手な動きもある。そのことに理解を示した上で、選手権で1試合でも多く戦うために各選手が集中力を切らすことなく、苦手なことでもやるべきことを継続し続けることを求めていた。

 リードした静岡学園は終盤、狭い局面でも失わずにボールを繋いで見せるなど保持しながらゲームコントロール。諦めずに攻め返してきた相手の攻撃を行徳やCB黒澤翔太(3年)が跳ね返し、U-18日本代表GK中村圭佑(2年)が安定したキャッチングを見せるなど後半は被シュートゼロで勝利した。

 選手権予選敗退の決まっている静岡学園の今シーズンはリーグ最終節を残すのみ。相手は優勝争い中の2位・神戸U-18だ。選手権予選敗退後2勝1分の静岡学園は過去最高の5位以内に入ることが濃厚。数字上は2位のチャンスもある。行徳は「ヴィッセル、優勝かかっている相手に対して良い内容でしっかり勝って、選手権負けたけれどチームとして強かったと思われるような試合をして締めくくりたいです」と誓った。

 一方の履正社・古田は「選手権出ない高校に負けるというのは日本一を目指すチームである以上、あってはならないこと」と猛省。そして、「やり続けるメンタルを持っていないと。プレミアリーグで全国準決勝・決勝レベルの相手とできているので、そこはもっと研ぎ澄ませて、もっとアラートにガンガン集中して戦うところとかはやっていかなあかんと思います。選手権予選は終わったけれど、リセットして、あと1試合大津があるのでというのはみんなに話しました」。同じく選手権有力校・大津高(熊本)との最終節までの一週間、ゲームで成長して、また選手権へ向かう。
 
(取材・文 吉田太郎)
▼関連リンク
●【特設】高校選手権2022
●高円宮杯プレミアリーグ2022特集

TOP