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個性まとまる千葉明徳が大一番で力を発揮。王者・日体大柏下し、初の関東大会へ!

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延長前半8分、千葉明徳高MF菅野文太(6番)が決勝ゴール

[5.13 関東大会千葉県予選準決勝 日体大柏高 2-4(延長)千葉明徳高 ゼットエー]

 令和5年度関東高等学校体育大会サッカーの部千葉県予選は13日、市原市のゼットエーオリプリスタジアムで準決勝を行った。千葉明徳高が延長戦の末、日体大柏高に4-2で勝利。初の関東大会出場を決めた。

 歴史を変えた。千葉明徳の吉岡英樹監督は「明確に自分たちができること、やるべきことというのを最後までやり切った結果だと思います」とコメント。また、前半途中からキャプテンマークを巻いた左WB藤沼海(3年)は「今まで何回もベスト4までは来ていたんですけれども、自分たちが歴史を変えないといけないと全員の気持ちが一つになっていたと思うので、勝って良かったです」と胸を張った。

 タフに戦った。対戦相手は関東大会予選2連覇中で、1月の全国高校選手権8強の日体大柏。千葉明徳は個々の技術力の高い相手に対し、「そのタフさで(相手の)良さを消すしかなかった」(吉岡監督)と立ち上がりからハイプレスを徹底する。ファーストディフェンダーが相手選手に触れるほど鋭く距離を詰め、後方ではファイターのDF徳永塁(3年)やDF小関快(3年)が球際で厳しいチェックを連発していた。

 一方の日体大柏は、ダイレクトプレーを多用したビルドアップで相手のプレッシングを掻い潜る。ミスが起こるシーンもあったが、トライし続ける。そして、10番を背負う攻撃の柱・左SH片野拓久(3年)へボールを運び、崩しへ持ち込んだ。

 試合は千葉明徳が先手を取った。前半32分、MF伊藤進之将主将(3年)が中央からのFKをPAへ蹴り込むと、混戦でボールが日体大柏の選手の手に当たったいう判定。これで得たPKを伊藤が右足で左隅へ蹴り込んだ。

 千葉明徳はスタンドの応援団と先制点を喜んだが、中盤の要である伊藤が手首を負傷して交代するアクシデント。勢いを持って反撃する日体大柏を食い止めることができない。38分には、左SB岡田ナミト(3年)の左足FKのこぼれを右SB宗村将吾(3年)に押し込まれて同点に追いつかれた。

 日体大柏はさらに後半2分、この日高さと精度の高いキックを見せ続けていたCB神野匠斗(3年)が左サイドからダイレクトでの縦パス。ハイサイドへ抜け出した岡田がクロスを上げると、FW吉村友佑(2年)が1タッチでゴールへ沈めて勝ち越した。

 逆転された千葉明徳だが、前半終盤頃から本来の距離間を意識した攻撃。チャンスの回数を増やしていた。後半も「走力はいつもチームで一番くらいに走っているんで、それをチームのためにしっかり走り切るということを意識していました」というMF菅野文太(3年)がアグレッシブにボールを前進させ、左の藤沼、右の櫃本泰輝(2年)の両WBが運動量を発揮する。

 そして、千葉、京都などで活躍したMF工藤浩平(現栃木シティ)を父に持つFW工藤陸豊(3年)の存在感が増す。後半13分、その左足ミドルパスで藤沼の決定機を演出したほか、工藤は巧みな身のこなしとキープ力で攻撃の中心に。交代出場の選手たちも球際で健闘し、クロスに迫力を持って飛び込んでいた。

 日体大柏はカウンターからMF佐藤伸哉主将(3年)やFW斉藤海智(2年)が大きく持ち上がるなど3点目のチャンスを創出していたが、システムを変えてくる相手に攻撃が停滞することも多く、終盤は守勢の展開に。GK原田眞透(3年)や神野を中心に跳ね返していたものの、千葉明徳の執念に屈してしまう。

 後半40+2分、千葉明徳は左サイドからドリブルで仕掛けた工藤がDF2人を剥がす。そして、ゴールへ迫ったところで相手選手と交錯。だが、切らさずに櫃本が左サイドからクロスを上げる。すると、手前のDFに当たったボールがGKの頭上を越えてゴールイン。劇的な同点ゴールで延長戦に持ち込んだ。

 勢いに乗った千葉明徳は、交代出場DF齋藤一太(3年)のロングスローや工藤のドリブルで相手にプレッシャーをかける。そして延長前半8分、左サイドからDF間を狙ってドリブルした工藤が中央の菅野へパス。菅野は、対応したDFの股間を狙って強烈な右足シュートを打ち込む。

「蹴った瞬間、『入った』と思いました。前半、藤沼が中に折り返してくれたんですけれどもGKにストップされて『絶対に決めてやる』という気持ちで2本目しっかり蹴りました」。この一撃がゴール左隅に突き刺さり、千葉明徳が逆転した。

 千葉明徳は延長後半3分にも工藤のスルーパスから交代出場MF赤澤宏樹(3年)が左足シュートを決めて4点目。日体大柏は、岡田が気迫の攻撃参加を繰り返すなど諦めずに戦っていたが、千葉明徳が守り抜いて関東切符を勝ち取った。

 日体大柏の根引謙介監督は「細かいところを見つめると甘い部分がたくさんある。きょうはしっかり完敗を感じて、次に進んでいきたい」。一方、千葉明徳は前回準優勝の専修大松戸高、U-17代表擁する中央学院高、そして日体大柏と強敵を3連破しての関東進出だ。

 菅野は「全員が最後まで諦めないで『前に行くぞ』という気持ちと、試合前の声がけで『歴史を変えるぞ』と言い合っていた。(対戦した日体大柏は)去年の全国ベスト8のチームで最初は尊敬している気持ちも千葉県のチームとしてあったので、きょうはその気持ちはなくして『俺たちが食ってやるぞ』という気持ちで全員がやれたと思います」。昨年、リーグ戦で2戦2分だったこともあって、気持ちの部分で怯まなかった。そして、追い込まれても諦めずに戦い抜いて歴史を変えた。

 就任12年目の吉岡監督は、今年のチームについて、「まとまりというところでいうと今までで一番面白いかな。個性が上手く合わさって、一つのサッカーが描けるようなグループではあると思います」と説明。そして、「彼らにとって自信になったと思うんで。でも、ここで終わりじゃないので、やっと一歩進めた部分でもあるので明日もありますし、その先に繋がる取り組みをしなければいけない」と語った。選手たちは満足していない。八千代高との決勝(14日)も勝って、千葉王者として関東大会に臨む。

千葉明徳高が初の関東大会へ

(取材・文 吉田太郎)

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