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飯田朝陽はDFリーダーに、そして「チームとして成長しなければ」。大黒柱離脱の中で公式戦再開、夏の王者・明秀日立は全員でまた強くなる

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CB飯田朝陽(3年=坂東市立岩井中出身)はコーチングも向上させ、明秀日立高を支える

 夏の王者は全員で成長して冬を迎える。明秀日立高(茨城)は今夏のインターハイで静岡学園高(静岡)、青森山田高(青森)と優勝候補を撃破して初の準々決勝、準決勝、そして決勝へ進出。決勝でも桐光学園高(神奈川1)をPK戦の末に破り、同校にとって初、茨城県勢にとっても44年ぶりとなる日本一に輝いた。

 その明秀日立は、2日の茨城県1部リーグ第11節で古河一高と対戦。インターハイ決勝以来の公式戦に臨む。県1部リーグでは首位を独走中だが、インターハイでMVP級の活躍を見せた大黒柱・CB山本凌主将(3年)が夏のフェスティバルで負傷。長期離脱を強いられている中で、プリンスリーグ関東昇格への戦いを再開することになった。

 チームにとって痛いアクシデント。だが、一人ひとりが成長して乗り越えるしかない。山本に代わるDFリーダーとして期待されるCB飯田朝陽(3年=坂東市立岩井中出身)は、リーグ戦再開を控えたトレーニングで一際声を発し、ミスが起こらないように引き締めていた。

 飯田は「実際に山本がいなくなったことで自分の中にも、チームの中にも不安があるんですけれども、その中で自分が落ち込んでしまったり、止まってしまったら、このままチームにも迷惑をかけてしまうし、自分の成長にも繋がらないので、自信を持って、強い使命感を持って、リーグ戦や選手権で戦っていきたい」と語る。

 飯田はインターハイで全6試合フル出場。身長は173cmで特別なサイズはないが、山本とともに高さを発揮し、随所で前へ出る強さも示していた。静岡学園戦や日大藤沢高(神奈川2)との準決勝では、「誰も行けない状況でシュートブロックして阻止できたというのがある。そこで勝てたので自分の中で自信になっている」。中学時代までは前線の選手で高校進学後にCBへ転向。「自分はどうなるのか」という不安の中、元FWの経験則を活かしたディフェンスや身体能力の高さによって台頭し、日本一チームのストッパーになった。

「山本がいなくなって、みんな不安もあると思う。自分がどっしり構えて安心感や安定感を与えられるように。自分がやらないと、というのがありますし、チームとして成長しなければいけないというのがあるので、山本が戻ってきて、良い意味で山本の出る場所がないよ、くらいに自分もチームもやっていきたい」

 インターハイの活躍は自信になった。だが今後、飯田はDFリーダー・山本の役割も求められる。「コーチングの部分で自分が言わないと前にも伝わらない。ちょっとずつできていると思うんですけれども、細かいところで山本の方が正しく的確なコーチングができていたので、そういうところを山本に教えてもらっている」。山本は対人守備やカバーリング、ビルドアップでも貢献してきたが、何よりも大きかったのがコーチングの面だ。その山本は負傷後も練習に参加し、飯田のコーチングについて指摘。飯田は課題に向き合い、声がけの質を上げようとしている。
 
 中盤の要であるMF吉田裕哉(3年)は、「(山本や他の主軸が不在で勝てなければ、)冬の選手権でもけが人が出た時に勝ち切れないと思うので、こういう機会に飯田とかDF斉藤(生樹)にはリーダーシップを持ってやってもらいたい」と期待。今後、プリンスリーグ関東昇格を目指す戦いや選手権を勝ち抜いていく上でけが人や出場停止が出る可能性はある。飯田、明秀日立はピンチをチャンスに。「山本がいなくなったことを自分の中でも(良い意味で)ポジティブに捉えて、自分の成長に繋がるというので、自分がステップアップできるチャンスだと思うので、良い意味で捉えてやっていく」と力を込めた。

 インターハイでは前評判を覆して日本一。だが、成長しなければプリンスリーグ関東へ昇格することも、選手権で勝ち上がることもできない。インターハイ終了後、Aチームは福島復旧・復興祈念ユース大会に出場。一方で萬場努監督は福島と茨城を往復し、大塚義典GKコーチとともにセカンドチーム以降の選手たちの強化を優先した。

 萬場監督はトップチームだけでなく、明秀日立全体を強くする考えだ。精力的に下のカテゴリーの選手たちの成長をチェック。またAチームには、今後や将来を見据えてさらに上のレベルを求めている。「インターハイがマックスだったとならないように。これからやり辛さとかと向き合いながら、作り直しということもしていかないといけない。彼らもアップデートできないとそこで成長が止まってしまうので」という。早速、Aチームメンバーの入れ替えがあり、1年生も先発組でテスト。夏からのポジション変更やシステムの変更もありそうだ。その中で選手たちは、貪欲に次の勝利と成長を目指している。

 周囲からターゲットとされる中、自分たちに目を向けながら力をつけていけるか。ここからチャンスを掴む選手、下のカテゴリーから這い上がってくる選手もいるはずだ。山本も順調に回復すれば、秋冬の重要な戦いの前に復帰する模様。飯田は「日本一取って自分たちの中でプライドがありますし、茨城県内で負けていられないなというのもあります。また、プリンス参入戦でしっかり勝って、来年からプリンスでやっていくというのがあります」。本気でプリンスリーグ昇格、選手権日本一に挑戦。明秀日立全体で成長し、また強くなる。



(取材・文 吉田太郎)
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吉田太郎
Text by 吉田太郎

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