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仙台ユースが球際の強さ見せプレミアPO出場権獲得!! 今季健闘見せた山形ユースは一歩及ばず

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2点目のゴールに喜ぶ仙台ユースの選手たち

[9.30 プリンスリーグ東北第17節 仙台ユース 2-0 山形ユース マイナビベガルタ仙台泉パークタウンサッカー場]

 大詰めを迎えた高円宮杯JFA U-18サッカープリンスリーグ2023東北。9月30日に第17節5試合が行われた。宮城県仙台市のマイナビベガルタ仙台泉パークタウンサッカー場では、前節2位に浮上したベガルタ仙台ユースと、3位のモンテディオ山形ユースが対戦した。

 前節青森山田高セカンドの優勝が決定し、東北1枠のプレミアリーグプレーオフ出場権争いはこの2チームに絞られた。試合前の両者の勝点差は1。仙台ユースはこの試合に勝てば、残り1試合で勝点差が4に広がり、プレミアリーグプレーオフ出場権獲得が決定。引き分けか山形ユースの勝利でプレーオフ出場権決定は10月7日の最終節(第18節)に持ち込まれる。仙台ユースは最終節青森山田高セカンド戦、山形ユースは最終節尚志高セカンド戦を残していた。

 前半立ち上がり、勢いを見せたのはホームの仙台ユースだった。テンション高く試合に入り、球際に強く行き、ドリブルが得意な選手たちが積極的に仕掛けていった。その持ち味が出たのが前半9分。MF齋藤俊輔(2年)がドリブルで相手陣内深くまで進入し、その後MF松本琉聖(3年)もドリブルで中へ切れ込む。一度相手にボールが渡ったが、こぼれ球を拾ったのがMF河野和真(3年)だった。「自分の前にボールがこぼれてきて、相手も寄せてきていなかったので、絶対決めたいと思っていました。脚を振り抜いて決められたので良かったです」と振り返った通り、右足を強振し豪快にゴールに突き刺した。仙台ユースが良い形で先制に成功した。

 20分過ぎからは山形ユースも決定機をつくり始める。MF天野瑠成(3年)や、MF渡辺哲多(3年)のオーバーラップからのクロスや、トップ昇格内定のDF千葉虎士(3年)やDF青木拓真(3年)のロングフィードから決定機をつくり出す。千葉は自らが相手陣内にドリブルで仕掛け、ミドルシュートまで持ち込む場面もつくった。しかしこの日の仙台ユースはキャプテンMF各務剛良(3年)を中心に球際勝負で強さを見せ、ピンチをしのぐ。1-0で仙台ユースリードのまま前半を終えた。

 後半は仙台ユースも再び得意のパス回しから決定機をつくり出すが、山形ユースはトップ昇格内定、U-17日本代表GK上林大誠(3年)がファインセーブを見せ追加点を許さない。追いつきたい山形ユースは徐々に攻撃の圧を強めるが、仙台ユースもゴール前最後のところで多くの選手が体を投げ出してはね返す。

 そうして迎えた後半40分、中盤でFKを得た仙台ユースは、キッカーの各務は前線でフリーとなっていた途中出場のFW櫻田彪仁(2年)にボールを送る。「1つ前のプレーで歩夢(FW古屋歩夢(1年))が倒れていて、その後プレーが止まりました。相手が準備していないように見えて隙が見えたので、その裏に走ったらボールが来ると思いました」と各務からボールを受けた櫻田は、「後ろ向きのトラップになって難しかったですが、うまくタッチして、そこからはうまくGKを見ながら冷静にゴールに押し込むことができました」と振り返った通り、迫ってきたDFやGK上林を振り切るようにドリブルして、左足でシュートを決めてリードを2点差に広げた。このまま相手の反撃をしのいだ仙台ユースが2-0で勝利し、4年ぶり6回目のプレミアリーグプレーオフ出場を決めた。

 仙台ユースの木谷公亮監督は「最初の笛が鳴った瞬間から良い入りをしてくれて、それを求めて今週も練習してきました。このタイミングで今年のベストゲームができたと思います」と大一番での会心の勝利を喜んだ。

 球際勝負に強くなったのは理由がある。9月2日に行われた第13節聖和学園高戦では、相手の攻撃を止められず1-5で大敗を喫してしまった。「聖和に大敗した時からこの1か月、1日も緩まずに彼らがやってきたことが、こういう試合でしっかり出せました」と大敗をきっかけに、球際勝負にこだわり続けた成果がこの試合で出た。キャプテン各務も「全員勝ってやるという気持ちがありましたし、今週の練習のチームの雰囲気から見て、負けるわけが無いと思っていたので、その気持ちが全員ピッチに出たのかなと思います」と練習から高い強度でプレーできたことが、この大一番でも生きた。

 それでもその時2位を走っていた山形ユースとの勝点差が4に広がった聖和学園戦の大敗はショッキングなものだった。各務は「ああいう負け方をして、チームとしても落胆と言いますか、心にぽっかり穴が空いたような感じだったのですが、まだプレーオフへの望みはあったので、チーム全体でやろうという気持ちになれたのが一番だと思います」。昨年尚志高戦での大敗をきっかけに3連敗してプレーオフ出場を逃した苦い経験を生かし、全員一丸となれたことが好結果につながった。

 就任3年目で初めてプレーオフへとチームを導いた木谷監督は「あと2か月、一つの目標に向かってまた3年生がサッカーできるのは僕も嬉しいですし、彼らのキャリアにとっても大事なことだと思います」と12月に控えた大きな目標に向かえることを喜び、意欲を燃やしていた。パスワーク、ドリブルといった攻撃面の魅力に加え、球際の強さを身につけた仙台ユースが今度こそプレミアリーグ参入を成し遂げられるか、期待がかかる。

 一方の山形ユースは一時は2位を走り、仙台ユースの聖和学園戦大敗により優位に立っていたかに見えたが、第15節帝京安積高戦の引き分けと、第16節青森山田高セカンド戦の大敗が響いて順位が入れ替わり、結果的にあと1試合を残してプレーオフ出場を逃した。内山俊彦監督は「こういうシチュエーションで緊張感のある試合をベガルタ仙台さんとやれたことが、まず選手たちに良いことだったと思います。結果は残念でした」と緊張感のある好ゲームができたものの、一歩及ばずプレーオフ出場を逃したことを悔やんだ。

 それでも迫力のあるサイドアタックからのパワフルな攻撃と、トップ昇格内定の上林、千葉を中心とした強固な守備を見せ、今年のプリンスリーグ東北を盛り上げた山形ユースの戦いは賞賛に値するものだ。内山監督は「積み上げてきたものがリーグ戦の結果に表れていると思います。それは選手たちの頑張りでここまで来れていると思います。感謝しています」と語り、上林は「最後にこういう舞台をつくることができたのは自分たちの成果でもあると思います。プレーオフという大きな目標を達成することができなかったのですが、自分たちのやっていることは間違いないと思います」と胸を張った。敵将の木谷監督も「モンテも今年は素晴らしいチームでした。彼らの存在が僕らを緩まずにやらせてくれた原因だとも思うので、だからこそこういう良い試合ができたのかな、と思います」と山形ユースの戦いを讃えた。敗れはしたが、山形ユースのリーグを通しての健闘も素晴らしいものだった。

(取材・文 小林健志)

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小林健志
Text by 小林健志

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