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鹿児島城西が1-0で初のプレミアリーグ昇格!15日からの選手権予選準決勝、決勝へ弾み

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鹿児島城西高がプレミアリーグ初昇格を決めた

[12.10 高円宮杯プレミアリーグプレーオフCブロック決勝戦 鹿児島城西高 1-0 近江高 Eスタ]

 目標の「二兎取り」へ、第一関門を突破した。高円宮杯 JFA U-18サッカープレミアリーグ 2023 プレーオフ Cブロック 決勝戦が10日に行われ、鹿児島城西高(九州1、鹿児島)が近江高(関西2、滋賀)に1-0で勝利。初のプレミアリーグ昇格を決めた。

 鹿児島城西は5日後の15日に選手権鹿児島県予選準決勝(対鹿児島実高)を控えている。勝てば翌16日に同決勝。今回のプレミアリーグプレーオフ1回戦(対新潟U-18、2-1)、決勝から選手権予選2連戦と2週連続で厳しい戦い。だが、選手たちは「二兎取り」を掲げて大目標の選手権だけでなく、プレミアリーグ昇格も本気で目指してきた。そして、プリンスリーグ九州1部王者として挑んだプレミアリーグプレーオフで2勝。初昇格を決め、選手権予選へ弾みをつけた。

 昇格を懸けた一戦は、難敵・近江との高体連勢対決。滋賀県3部リーグからわずか8年でプレミアリーグ昇格決定戦まで勝ち上がってきた近江は技術力が高く、守備も粘り強い。鹿児島城西は中盤の底の位置で利いていたMF坂上日向(3年)や攻守のキーマン・10番MF石内凌雅(3年)、MF山下慶人(3年)、MF上間大嘉(3年)が前向きに奪ったボールを前進させて押し返す。

 そして、トップ下の位置で違いを生み出す藤枝内定MF芹生海翔(3年)のクロスをFW岡留零樹(3年)が狙ったり、山下の鋭い仕掛け、CB横山輝人(3年)の右足FKなどで先制点を狙う。

 前半、鹿児島城西が連続でシュートへ持ち込むシーンもあったが、守備意識も高い近江はゴールを隠すことを徹底。シュートコースを与えずに相手の攻撃を封じ切る。そして、ボールを繋いでクロスまで行き切っていた近江は後半3分、効果的な攻め上がりを見せていたDF金山耀太(3年)が左クロス。FW小山真尋(3年)の放ったヘッドがクロスバーをかすめる。

 後半立ち上がりは近江のペース。だが、鹿児島城西は岡留の力強いキープからカウンターを繰り出すなど攻め返す。そして18分、右の石内からパスを受けた芹生がカットイン、細かな切り返しのドリブルでゴール前へ抜け出すと、最後はGKの肩上を狙った右足シュート。1回戦の決勝点に続く、2試合連続ゴールでスコアを動かした。

 近江も反撃。MF西飛勇吾(3年)が再三ボールに係わってパスを配給し、エースMF山門立侑(3年)や金山、右WB鵜戸瑛士(3年)、左WB浅井晴孔(3年)が個人技も活かして守りをこじ開けようとする。だが、押し込んだことで逆にスペースが減少。前線の選手が運動量多く走り続けるなど、コンパクトさを維持する鹿児島城西の強度の高い守りを受けてしまう。

 鹿児島城西はCB横山とCB内田輝空(3年)を中心に右SB水口政輝(3年)、左SB木原綾汰(3年)のDFラインも集中した守備を継続。相手に決定打を打たせない。近江は後半38分、山門のスルーパスで鵜戸が抜け出して右足を振り抜いたが、鹿児島城西のゲーム主将・GK橋口竜翔(3年)がストップ。新田祐輔監督が「空中戦も、地上戦も、やっぱりこの子たち強さがあるから」と評する鹿児島城西は43分に内田が負傷交代したものの、投入されたCB當眞竜雅(2年)を含めて最後まで守備の強さを見せ続けて勝ち切った

 鹿児島城西は、新田監督就任1年目の2018年にプリンスリーグ九州10位で鹿児島県1部リーグに降格。翌年に参入戦で敗れると、その後はコロナ禍もあってプリンスリーグに昇格することができていなかった。夏冬の全国大会予選も神村学園に連敗。宿敵に差をつけられてしまっていた。

 だが、昨年の参入戦に勝利すると、今年はプリンスリーグ昇格1年目で優勝。新田監督は言う。「(近年の鹿児島城西は)上手いやつもいるし、頑張れるけど、良い試合をしながらも(どこかで)ダメなんじゃないけ、みたいなのがあった。でも、この子たちにそれはないです。このチームに言ってんのが、『君たちはまとまれないよね』って。『だけど、目の前の試合、こいつに負けたくないっていうのは素晴らしいかな』と」。芹生もこの言葉に同調していたが、一つの目標に向かう力は近年の鹿児島城西にもなかった強さになっている。

 今年は県新人戦決勝と九州新人戦決勝で神村学園高に連勝。インターハイ予選決勝で苦杯を喫したものの、リーグ戦を戦いながらまた成長し、神村学園に続くプレミアリーグ昇格を果たした。橋口は「選手権前にとても良い結果が残せて、すごい嬉しい気持ちでいっぱいです。『二兎取り』を目指して来ていて、後輩のためにもプレミアもしっかり取って、選手権に繋げていこうっていう感じで雰囲気を作って来ました」と説明する。

 ここからあと2勝し、神村学園の連覇を6で止めて7年ぶりに選手権切符奪還へ。タフなスケジュールだが、新田監督は「子供たちはもうやる気満々だから、もうあんまり考えてなくて。あんまりコンディション気にすると、勢いがなくなるから。オレらは元気があってなんぼだから、続けるだけです」と語る。

 橋口も「スケジュールはハードなんですけど。自分たちはしっかり夏とか走り込んできて、鍛えてるんで、大丈夫です」と自信を見せ、芹生は「この流れで行けるんじゃないかなと思います」頷いた。“高校年代最高峰のリーグ戦”へ昇格した快挙。プレミアリーグ昇格決定後に選手権予選を戦う例はこれまでないが、自分たちが成し遂げてプレミア、選手権切符の両取りを果たす。

(取材・文 吉田太郎)



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吉田太郎
Text by 吉田太郎

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