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怪我を乗り越えて心も身体も逞しさがアップ。献身的なプレーで鹿島ユースを支えた右SB池田健将

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鹿島アントラーズユースを支えた右SB池田健将

[12.10 高円宮杯プレミアリーグプレーオフ決勝 仙台ユース 0-7 鹿島ユース 広島広域公園 第一球技場]

 誰よりも走った。タッチライン際を何度も駆け上がり、深く抉ってクロスを入れる。闇雲に前へ行くだけではなく、状況を見ながら最適なプレーを選択し続けた。試合終了のホイッスルがなった瞬間。仲間と喜びを噛み締めると、色んな想いが込み上げてきた。

「今年はみんなできつい練習を乗り越えてきた。本当に去年とは比べものにならないくらいキツかったんです…。しかも、自分も夏前に怪我をして、クラブユース選手権もギリギリ間に合った形で(上手くいかない時もあった)。最高の仲間がいたから、きつい練習も乗り越えられたし、プレミアリーグにも昇格できた」

 右SBとして鹿島アントラーズユースを支えたDF池田健将(3年)にとって、この1年間は苦しい時間が長かった。今年5月初旬に左足の第5中足骨を疲労骨折。手術をしたため、夏の日本クラブユース選手権(U-18)大会の出場は絶望視された。さらにこのタイミングの怪我は自分の進路にも関わる。「なんで今の時期だったんだろう……」。何度も怪我を悔やみ、今後のキャリアを考えたら、不安を覚えずにはいられなかった。

「去年も同じ箇所を怪我した。前回は手術をせずに治療をしたけど、今回は手術をするしかなかったんです。正直、このタイミングでの怪我はあまりにも辛かった。進路を決める時期と重なったりしたので……」

 だが、いつまでも下を向いているわけにはいかない。池田は怪我と向き合い、復帰した時にさらに強くなった状態で戦列に戻ることを誓った。特に筋力トレーニングに力を入れたという。

「筋トレは重点的に行いました。怪我の原因になった筋肉もあったので、(もう一度怪我をしないように)しっかり強化したんです」

 懸命にリハビリを続け、心身ともにパワーアップ。さらに回復が予想以上に早かったため、クラブユース選手権にも出場することができた。そこから右SBのレギュラーに返り咲き、献身的なプレーでチームに貢献。このプレミアリーグプレーオフでも1回戦から2試合連続で先発起用され、この仙台ユース戦でも気の利いたポジショニングやオーバーラップで攻撃に厚みをもたらした。

「自分の武器は推進力。キャプテンのMF小倉(幸成、3年)が持ったら、自分が前に走り出す。アイコンタクトでそれはやっていたし、今日も変わらずにやれてチャンスに絡めた」(池田)

 さらにこの日は相手と駆け引きし、冷静な判断でゴールを演出。45+2分にFW馬目隼乃介(3年)が奪った4点目の場面ではタッチライン側から持ち運ぶと、中にクロスを入れる素振りを見せつつ、サポートに入ってきた小倉にボールを預けてゴールのきっかけを作った。

 振り返れば、辛いことも苦しいこともあった。しかし、2019年以来となるプレミアリーグ復帰を勝ち取り、最後は笑顔で締め括れた。この経験は次のステージでも生きるはず。池田はさらなる成長を目指し、次のステージで新たな挑戦をスタートさせる。

(取材・文 松尾祐希)

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松尾祐希
Text by 松尾祐希

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