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若きクリムゾンレッドの10番を背負う左利きの異才。神戸U-18MF濱崎健斗はプレミア制覇を目指しつつ「日本全体に知られる選手になりたい」

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ヴィッセル神戸U-18の10番を背負うMF濱崎健斗(1年=ヴィッセル神戸U-15出身)

[3.15 サニックス杯 神戸U-18 0-1 明秀日立高 グローバルアリーナ]

 もうこの16歳であれば、文字通り他を圧倒する活躍を見せる必要がある。新シーズンで託されたのはクリムゾンレッドの10番。トップチームのレジェンドと同じ番号を背負い、誰もが認めるパフォーマンスを披露することで、もっと大きな世界へと飛び出していかなくてはならない。

「個人としてもゴールとアシストは当然多く獲りたいと思っていますけど、そこで相手を圧倒するような活躍を見せたいですし、チームとしても少しでも点差を付けて相手に勝とうということは話しているので、そういうところにもこだわっていきたいなと思っています」。

 プレミアリーグ制覇だけを見据えるヴィッセル神戸U-18(兵庫)が誇る、左利きの異才。MF濱崎健斗(1年=ヴィッセル神戸U-15出身)は自身の躍動がそのままチームの結果に直結すると信じて、ひたすらに成長するための道を突き進む。


「自分たちのサッカーはできていて、ボールも保持していて、全然そこはできていたんですけど、最後の質のところで決め切れなくて、相手はそこを決めてきたので、自分たちに要因があって負けた印象です」。

 反省の弁ばかりが濱崎の口を衝く。『サニックス杯国際ユースサッカー大会2024(福岡)』の3日目。昨年度のインターハイ王者・明秀日立高(茨城)との一戦は、神戸U-18が前半から押し込む展開を作ったものの、相手の堅守をこじ開けきれない時間が続くと、後半に許した1点を返せず、0-1で敗れてしまう。

 もちろん負けたゲームで、自身の出来に納得しているはずもない。『ボールも呼び込んで、自分がゴールを決めて、楽なゲーム展開に持っていきたかったんですけど、そこで決め切れなくて、チームを良い方向に持っていけないゲームでした」。勝敗の責任を負っている自覚が、言葉の端々に滲む。

「シーズンが始まる前にこういうゲームが経験できたので、今日は良くなかったですけど、リーグ戦に上手く繋げることができたら、この負けも良い負けということになると思うので、これを今後に生かせるようにチームで話し合って、力を高めていきたいなと思います」。この時期に得られる経験を無駄にするつもりはない。ポジティブに前を向く姿勢も印象的だ。



 神戸U-15で高円宮杯日本一に輝き、大きな期待を寄せられて昇格したU-18での1年目は、濱崎にとっても充実したシーズンになった。「3年生が1年生を引っ張ってくれましたし、自分たちが頑張っている時に3年生が凄く声を掛けてくれたので、去年はメンタル面が成長したと思います」。

 プレミアリーグでは19試合に出場して6ゴールを記録。「身体では勝てない部分もあるんですけど、足元の技術やセンスやったりは結構通用していたと思います」。推進力に富んだドリブルで相手の守備網を切り裂けば、機を見たスルーパスで急所をグサリ。その攻撃性能は高校年代最高峰の舞台でも、十分すぎるほどに通用していた。

 加えて昨秋には、神戸が戦略的パートナーシップを結んでいるイングランドのアストン・ヴィラで、1週間の短期留学を経験。「向こうの選手は身体が大きかったですけど、自分も全然やれるなとは思いましたね。良い経験になりましたし、海外のレベルも知ることができて良かったです」と話しつつ、「もうちょっと長くやってみたかったですし、試合にも出てみて、どれくらいできるかは味わってみたかったですね」と高いレベルへのさらなる渇望感も持ち帰ってきた。


 新シーズンの背番号は10番に決まった。「小学生の頃は10番で、中学生の頃は7番で、『ユースでは10番を付けたいな』と思っていたので、10番に選んでもらえて嬉しかったです」。希望通りのエースナンバーを纏うからには、担うべき役割ももちろん把握している。

「10番を付けているからには、自分が中心になってやっていかないとチームの元気が出ないと思っていますし、自分が点を獲ってチームを救うような場面をもっともっと作っていかないといけないので、もっと10番として活躍して、チームの勝利に貢献したいと思っています」。

 チームは2年続けてプレミアリーグWESTで2位という結果に。一昨シーズンは得失点差で、昨シーズンは勝点差1で優勝を逃しているだけに、今季は開幕からアクセルを踏み込む必要があることは言うまでもない。

「去年は開幕戦に引き分けて、最終的に2位という悔しい結果だったので、今年は1位をみんなで獲るために、自分がチームの主導権を握りながら、1節目からしっかり勝利していけるように頑張っていきたいと思います」。そう言い切った表情も逞しい。


 まだ1年生だった昨年の9月。プレミアリーグのある試合後、ここから先の目標を訪ねた際の回答が印象深い。「もう1年生で試合に出られているので、来年にはトップチームに練習参加して、Jリーグの試合に出て、もう1個上の代表にも入って、日本全体に知られる選手になりたいと思います」。

 改めて同じ質問をぶつけてみると、さらに力強いフレーズが返ってくる。「あの時に話した想いは変わっていないです。ユースでしっかり結果を残して、トップに絡んでいきたいなと思っていますし、トップでも中心になるぐらいじゃないと海外にも行けないと思っているので、そういうところは意識してやっています」。

「プレミアでは他のチームを圧倒して優勝したいですし、個人としてはプレミア得点王を目指していますし、自分が中心となってチームを助けていきたいです。15点以上は獲りたいと思います」。

 その才能がプレミアのステージで通用することは、もうとっくにわかっている。あとは、とことん突き抜けるのみ。より高いステージを目指し続ける、神戸U-18の新10番。濱崎健斗はその磨き抜いた左足で、自らの輝く未来を手繰り寄せる。



(取材・文 土屋雅史)
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土屋雅史
Text by 土屋雅史

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