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[船橋招待]大胆なドリブルでピッチを鋭く切り裂く左利きのジャックナイフ。柏U-18FW市村健が目指すのは「日本で一番のアタッカー」

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柏レイソルU-18の注目レフティ、FW市村健(新3年=柏レイソルA.A.TOR’82出身)

[3.30 船橋招待U-18大会 柏U-18 0-1 静岡学園高 日立柏総合グランド]

 一歩ずつ、着実に、成長している自信はある。あとはそれをハッキリとした結果で表現するだけ。目指すのはこの世代でトップ・オブ・トップのアタッカー。磨き続けてきたこの左足で、もう一度のし上がってやる。

「1人でボールを持ったらシュートを決め切るとか、前を向いたらラストパスでゴールをおぜん立てするとか、そういうところで自分は日本で一番にならないと、代表とかトップチームへの昇格も厳しいと思うので、攻撃面でのクオリティでは日本で一番になりたいと思っています」。

 すべてのベクトルをゴールへと向ける、柏レイソルU-18(千葉)のアグレッシブなレフティ。FW市村健(新3年=柏レイソルA.A.TOR’82出身)は誰もが認める『日本で一番』を目指して、今まで以上に自分の中に携えたアクセルを踏み込んでいる。


「最近は大学生と試合を重ねている中で、強度や守備の決まりごとで全員がやらないといけないことは結構できているんですけど、自分たち攻撃陣はゴール前でのクオリティや決定力が求められていて、そういうところをチームとして開幕までに仕上げていこうと話していますし、良い経験ができていると思います」(市村)。

 プレシーズンの柏U-18は大学のチームとトレーニングマッチで肌を合わせ、基準を上げてきた。「最初の方は判断やスピード感に慣れなくて、後ろから奪われるシーンも結構多かったんですけど、ポジショニングでもちょっと頭を使ったりして、自分の持ち味であるドリブルとかシュートには結構良いイメージを持てています」という市村も、高い強度の中で力を発揮する術を磨いている。

 『第29回船橋招待U-18サッカー大会』の2日目はロアッソ熊本U-18(熊本)、静岡学園高(静岡)と対峙。13番はそれぞれ右ウイングと2トップの一角に入ったものの、やるべきことに大きな違いはない。「自分はまずゴールに向かっていく姿勢を持ちながら、ドリブルやパス、シュートでチャンスメイクに関わることが一番の特徴だと思っているので、まずはゴールから逃げないで向かっていくプレーを心掛けています」。

 ただ、どちらの試合も結果は0-1での敗戦。「今までも『試合を決め切る力は自分に足りないな』とも思っていたので、1人でかわしてシュートまで持っていくようなプレーを、今シーズンは見せたいなと思います」。ゴールに関わる決定的な仕事で、チームの勝利に貢献することは絶対的な役目。個人としてもより明確な課題を実感したようだ。


 中学時代に所属していた柏レイソルA.A.TOR’82では、もともとパスやキックに強みを持つボランチを務めていたが、自身の武器を見つめ直した時に「『ドリブルをして試合を決められる選手になりたいな』と思って、ひたすらドリブルの練習をしました」とプレースタイルの変更に着手したという。

 すると、その躍動を目に留めた柏レイソルのアカデミーから練習参加のオファーが届く。「自分たちの代のジュニアユースのチームに練習参加して、合格を戴きました。もう中学校2年生の年末くらいの早い段階で声を掛けていただいたので、『レイソルに行こう』と思いました」。レイソルと提携を結ぶ『アライアンスアカデミー』のU-15年代から、いわゆる“本部”への加入はかなりのレアケース。地元の憧れのチームから認められたことが、とにかく嬉しかった。

 3年時の夏にはU-15日本代表候補合宿にも招集され、満を持して柏U-18へ飛び込む。だが、高校1年時はいち早くプレミアデビューを果たしたものの、リーグ戦でピッチに立ったのはその1試合のみ。2年に進級した昨シーズンも、プレミアでは12試合に出場して1得点。ここまでは思い描いていたような時間は過ごせていない。

「1年生と2年生の時は、『自分のサッカー人生の中でも苦しんでいるな』という気持ちも少しはありましたけど、他のことに自分の気持ちをブラさずに、サッカーに集中することで、『やっぱりそこからは逃げられないな』と思いましたし、代表でも同世代の選手が活躍しているのを見て、『自分もやらないとな』『絶対に活躍してやる』という強い気持ちはより持っていますね」。


 昨年の秋に開催されたU-17ワールドカップでは、かつて代表でともにプレーしたある選手に小さくない刺激を受けたそうだ。「FC東京の佐藤龍之介選手は話したりしても、プレーを見ても感じますけど、サッカー選手としても、人間としても、一流だなと思います。ワールドカップを見ていても、彼がいないと試合が決まらないというか、決定的な仕事をしている中でも献身的な守備も見せていて、そういうところは『自分もこれからやらないとな』とは思っています」。

 さらに続けた言葉に、逞しいメンタルが滲む。「今はレイソルでも絶対的な存在にはなれていないですけど、ここまで成長できていないとは思わないですし、自分もドリブルでは佐藤選手にも負けていないので、そういうところで違いを見せられたらなと思います」。人は人。自分は自分。絶対的な武器をブラッシュアップさせて、スペシャルな選手へと駆け上がってやる。

 その先には、改めて帰りたいステージが待っているはずだ。「やっぱり代表というのは、1回行ったら絶対に外れたくないものだなと実感していて、あそこに選ばれた選手にはそのぐらいの価値があると思うんですよね。それでもU-16の最初の頃から代表には絡めなかったので、当時のメンバーと一緒に試合に出たいですし、今年1年間はそこを目指して、必ず代表に入れるように頑張りたいと思っています」。

 目標はより大きく、より高く掲げるに越したことはない。目指すのは『日本で一番のアタッカー』。大胆なドリブルでピッチを鋭く切り裂く、柏U-18のジャックナイフ。アカデミーラストイヤーに強い覚悟を持って挑む市村健の躍動から、今まで以上に目が離せない。



(取材・文 土屋雅史)
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土屋雅史
Text by 土屋雅史

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