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何かを起こす男。京都U-18MF黒澤蒼太がジョーカー起用に応える同点弾!

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同点弾を叩き込んだMF黒澤蒼太(中央)

[7.28 日本クラブユース選手権U-18大会グループステージ 大宮U18 1-1 京都U-18 前橋工業高校G]

 残り10分での投入。自分のやるべきことは明確だった。「フレッシュな状態で入るので、前から追い掛けることと、蹴られた時にセカンドボール回収は考えていて、『とりあえず運動量を増やしてやってくれ』と言われたので、そういう気持ちで入りました」。京都サンガF.C.U-18のジョーカーとして、MF黒澤蒼太(2年=京都サンガF.C.U-15出身)は1点ビハインドのピッチに解き放たれる。

 6分後。千載一遇のチャンスが到来する。左サイドを崩した流れから、SBの飯田陸斗(1年)が深い位置まで持ち運ぶと、黒澤は瞬時に自らの取るべきポジションを察知する。「最初はニアに飛び込もうと思ったんですけど、1人フォワードの選手が潰れてくれて、マイナスが空いていたので、そこで待っていたら良いボールが来て、あとは決めるだけというか、ちゃんと浮かないように抑えるだけでした」。

 マイナスに来たボールを、とにかくふかさないように、丁寧に右足で叩くと、軌道がゴールネットを貫く。「試合が始まる前もある程度ピッチの状況も見て、ゴールした側のピッチが悪いという印象はあって、コーチからも『浮かさないように』と言われていたので、そこは意識していましたし、いつもチームでもクロスの練習はよくやるんですけど、入り方の部分は監督からもよく言われるので、その練習が生きたなという感じでした」。

 日頃からの積み重ねが呼び込んだ、値千金の同点弾。「とりあえずベンチに行きました(笑)。みんな迎えてくれたので、嬉しかったですね」と笑った殊勲の2年生を迎えるベンチメンバーも、駆け寄ったチームメイトも全員笑顔。黒澤の一撃がチームにグループ首位通過という確かな成果をもたらした。

 この全国大会を前に、自分の立ち位置は揺らぎつつあった。「プレミアも最初の2節まではスタメンだったんですけど、それから徐々に出場機会が遠くなっていって、このクラブユースも今日が初めての出場だったんです」。厳しくなる状況の中で、起用に応える貴重な同点ゴール。「相手も間延びしてきた中で、スペースを使うのが上手いので、『あそこに入ってくれないかな』という、あくまでも願望で入れたので、交代が当たったのはたまたまです」と笑ったのは志垣良監督だが、本人は「とりあえず気持ちだけ持ってピッチに入りました。ホッとしています」と安堵の表情を浮かべた。

 足元の技術には自信がある。参考にしている選手も、聞けば納得の人選だ。「ゴール前のアイデアやったり、シュートは自分の武器やなと思っています。そこまで自信を持って言えないですけど、足元もあると言えばあります(笑)。チアゴ・アルカンタラのプレーは言葉で表せないぐらい好きですね」。目指すは“京都のチアゴ・アルカンタラ”。なかなか響きも悪くない。

 1つ結果は出した。確実にチームの中で、存在感は高まっている。「スタメンで出た時はもちろん最初から頑張っていきたいと思いますし、途中から出てもフレッシュな状態を、チームにまた還元できるように、自分の持っているものを生かしていきたいと思います」。

 スタートでも、途中出場でも、ピッチに立ったら何かを起こす気配は、今の黒澤に間違いなく漂っている。

(取材・文 土屋雅史)
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