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本格強化2年目の城西国際大、“J並みの施設”でスケールアップ!

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 札幌のチーム統括部長や横浜FMのゼネラルマネージャーを歴任し、2010年の南アフリカW杯で日本代表のチームコーディネーターを務めた小山哲司監督を迎えて本格強化2年目の城西国際大サッカー部が、充実の夏を過ごしている。5月22日に高円宮妃殿下ご臨席の下、日本サッカー協会の川淵三郎名誉会長らが出席して竣工式が行われたJFA公認の人工芝グラウンド、「PRINCE TAKAMADO MEMORIAL SPORTS PARK(高円宮殿下記念スポーツパーク)」が大学正門目の前の位置にオープン。これまでは大学構内の土のグラウンドでトレーニングを重ねてきたが、ナイター設備もあるグラウンドが完成したことで雨の日も夜間も充実したトレーニングをすることが可能になった。

 また来訪者を驚かせているのが、「Jクラブ並み」と評価されているクラブハウスだ。延べ面積約450平方メートルで監督室やミーティングルーム、シャワー室、筋トレルームなどを完備。ホーム用ロッカー数50、ビジター用ロッカー数30が設置されたロッカールームは非常に広く、プレーするサッカー部員だけでなく、試合に訪れる対戦相手や練習参加する高校生に向けても気分良くサッカーに集中できるための配慮がされた施設となっている。MF古川大貴(1年=佐賀東高)は「(大学で)この施設を越えるところはそんなにないと思います。グラウンドも土のグラウンドだとダイレクトプレーとかミスになってしまうところがあったけれど、ピッチがいいのでミスが減って、ミスが減った分、パススピードが上がっていいプレーが増えたと思います」と新グラウンドがもたらす効果について口にしていた。

 現在チームは千葉県大学リーグ2部所属。だが、5月の千葉県大学サッカー選手権大会兼総理大臣杯千葉県代表決定戦では千葉大、江戸川大に連勝し、昨年千葉県1部優勝の明海大とも1-2の接戦を演じた。メンバーは新1年生のみ、それも入学直後でほとんどトレーニングをしていない状況で臨んだ大会だったが、関東予選進出まであと一歩のところにまで迫ったことで周囲の期待も自然と高まっている。当然、今秋の千葉県大学2部リーグ優勝がノルマとなっているが、次なる公式戦を目指すチームはわずか2か月で大きな成長を遂げていた。

 もちろん新グラウンドも成長をサポートしているが、何よりトレーニング風景を見て感じられることは小山監督をはじめとする指導者、選手たちの意識の高さだ。メニューとメニューとの間隔がとにかく短く、グラウンド上では数秒の休憩時間も常にジョグ。選手たちは水を一口含むと、もう次のメニューがスタートしている。トレーニングではワンタッチ、ツータッチのプレーが徹底されていたが、そのスピード、精度に対して指導者たちも妥協せずに高いレベルを求めていた。技術、体力、集中力を要するメニューが続く中、小山監督の熱い声が選手達の背中を後押し。運動量が落ちた選手に対しては「シンドイ時にボールもらわねぇと。ボールいらねぇじゃサッカー選手じゃないよ!」とボールに絡む動きを求め、攻守両面において「もっとスピードを持ってやれよ!」と選手たちを鼓舞し、「一生懸命やっているヤツに順番が回って来るんだよ!」と奮起を促していた。

 普段の練習時間は1時間30分。だが、練習の密度は関東1部の強豪チームに引けをとらないほど濃く、レベルも高かった。そして非常に高い選手たちのモチベーション。一般入学でBチームからAチームへ這い上がってきたDF小川翔太(1年=習志野高)は「最初はBチームの一番下でしたけれど、Aチームに行って出たいと思ってやってきました。今Aチームでやっているんですけど、目標を持ってやってこれたことがこういう結果を出せている要因だと思います」。メンバーは1年生から3年生まで計45名いるが、特に1年生はJクラブユースや全国屈指の強豪校中心に35名もおり、競争は熾烈。トレーニング終了後、居残りで大粒の汗を流していたMF花本敏生(1年=米子北高)は「いつもこういう感じです。練習時間が短いので自主練とかで周りに差をつけるしかないと思っている。いつもやっています。(周りの選手達に)勝ちたいです」と更なる成長へ向けて意気込んでいた。

 練習試合では関東大学リーグ1部の強豪、国士舘大の2軍と引き分けるなど、大学関係者たちからも徐々に認められる存在となってきている。「前の4枚、5枚は(現時点でも)凄い。ほかにも上でやる可能性のある選手がいる」と語る小山監督はチームのポテンシャルについて「自分で言うのも変だけど、まだ3か月、4か月でしょう? それだけでこんなになるのかと思うと、今後どうなるのかという楽しみがある。こいつらが4年になったらどうなるのか楽しみ」。自らの夢をかなえるために関東、関西の名門ではなく千葉県2部の城西国際大でスタートを切った選手たち。着実に進化を遂げているが、この進路を選択したことが正しかったことを証明するためにもそれぞれが結果を残さなければならない。FW米澤康太(1年=都城工高)は「高校とか他の大学を見てきても絶対にこんないい環境でできない。自分たちが結果を残すことで評判が上がると思うし、これから自分たちが頑張っていきたい」と誓っていた。

 まずチームの目標は9月開幕予定の千葉県2部リーグで自分たちのサッカーをして優勝すること。FW井之元和之(1年=都城高)は「まずは試合に出続けることと、自分のスピードを活かして点に絡めたらと思います。監督から常に判断が遅いと言われている。そこを速くしていきたい」。最高の環境の中で集中してトレーニングする予定の今夏。3年後の関東大学リーグ1部昇格を狙う城西国際大が高いモチベーションと最高の環境の中でスケールアップする。

(取材・文 吉田太郎)

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