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[クラブユース選手権U-18]清水ユースを逆転で下した広島ユースが9大会ぶり決勝へ

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[8.2 日本クラブユース選手権準決勝 広島ユース3-2清水ユース 三ツ沢陸上]

 第37回全日本クラブユースサッカー選手権(U-18)は2日、準決勝を三ツ沢公園陸上競技場で行い、サンフレッチェ広島ユース(中国1/広島)と清水エスパルスユース(東海2/静岡)が対戦した。前半35分にDF荒木隼人のゴールで先制した広島だったが、わずか2分後にMF柳沢拓弥に同点ゴールを決められてしまう。さらに後半3分にも清水のエースFW北川航也に逆転ゴールを許す苦しい展開となった。それでも同35分にFW越智大和のゴールで試合を振り出しに戻すと、同41分にはMF横山航河が決勝点をマーク。逆転勝利した広島ユースが、2004年以来9年ぶりの決勝進出を決めている。

 キックオフ時、30.2度という暑さの中で行われた試合の前半は両チームの最終ラインが落ち着かない。互いに高い位置でボールが転がり込んでくる形になったが、広島は前半21分のチャンスを生かせず。清水も同29分に北川のシュートがGK中村慧の正面を突き、得点を挙げることはできない。

「プレスをされたときに、落ち着いて後ろからボールをつなげなかった」と、広島の望月一頼監督が反省するように、ビルドアップがうまくいかない広島に対し、徐々に清水がボールを保持するようになる。しかし、清水もチャンスをつくれない。大榎克己監督が「もう少し攻撃のところで、ボールを動かすとか。崩しの部分も、もうちょっとできるんじゃないか、やらせたかったというのはありました」と話したように、トップチームと同じ3-4-2-1の布陣で、左右のWBが最終ラインまで下がってスペースを消す広島の守備を崩せなかった。

 すると前半35分、広島がセットプレーから先制点を挙げる。越智のショートCKを受けたMF野口翼がゴール前にクロスを入れると、荒木がヘディングシュートを決めた。ところが、このリードも長くは持たない。先制点から2分後、今度は清水が同点ゴールを挙げる。北川が左サイドを突破しシュートに持ち込む。これはGK中村に阻まれたが、浮き球を広島のDFがお見合いしてしまう。その間からボールを回収した北川がパス。これを受けた柳沢が右足でゴールに決めた。

 後半に入り、広島は左WBにU-17日本代表MF宮原和也を投入する。しかし、前半の流れのまま、清水が早々に追加点を挙げた。後半3分、相手のパスをインターセプトしたMF浅沼大和が縦パスを送る。これを受けた北川が左足で確実にゴールネットを揺らして、清水が逆転に成功する。

 リードされた広島も、左WBの宮原を起点に反撃に出る。準々決勝の愛媛戦(3-2)でも機能した戦い方だ。「引かれた相手に対して、サイドを使うことは必要。確かに(宮原が)起点になったと思いますし、この前の試合で崩せていたことからも、選手たちも『行ける』という思いがあったのでしょう」(望月監督)。だが、ゴール前まで迫りながらも、GK高木和徹の好セーブなどもあり、得点を挙げることはできなかった。

 1点のアドバンテージを得ていた清水は、全体が下がり気味になった。その中で1トップの北川は前線でボールを収め、相手最終ラインにもプレスを掛けるなど、チームを助ける働きをしていた。ところが、その北川が両足をつってしまい、後半22分という時間で交代を余儀なくされた。「彼がいなくなったのは、大きかった」と大榎監督も認めるように、ここからは圧力を掛けて来る広島の攻めに耐える時間となる。

 ただし、清水に試合を終わらせるチャンスもあった。後半30分の場面である。広島の波状攻撃をGK高木和のパンチングで断ち切ると、一気のカウンターに出た。途中出場のMF大木凌多が左サイドを突破し、ゴール前へクロスを送る。DFに当たり少しコースの変わったボールに同点ゴールを挙げた柳沢が反応したが、ゴール前数メートル位置からのシュートを、枠に飛ばすことはできなかった。

 命拾いした広島は、後半35分に同点ゴールを決める。左から攻め続けていたことで、中央が空いたか、MF川辺駿の縦パスが、1トップの越智に通る。スピードに乗ってボールを受けた越智は、左足でGK高木和を破り、2-2のイーブンに持ち込んだ。これで流れは広島に移った。同41分には中盤から野口が絶妙なロビングを相手PA内に送り込む。そこに右WBの横山が走り込んだ。

「シュートに持って行くイメージは持っていましたし、絶対に決めてやろうと思っていました。今大会、全然良いプレーができなかったので、チームのためになるプレーをしたかった。(清水の)GKがボールを取るかなと思ったんですが、飛び出してきて一度止まってくれたので、うまく流し込めました」(横山)

 この横山のダイレクトシュートで再びリードした広島は、3-2で逃げ切り、決勝進出を決めた。3日の決勝に勝てば、実に9年ぶりの大会制覇となる。日本一を目前にした選手たちは鼻息が荒い。「明日は勝っても、負けても、次の日はオフですからね。燃料ゼロになるまで走って、勝って、良い気分でオフを迎えたいと思います」と、決勝点の横山は力を込めた。

 その一方で望月監督は「大会を通じて選手が成長することが、一番大事です」と、柔らかい笑顔を見せる。もちろん、自信がないわけではない。「自分たちがトレーニングでやってきたことをピッチで出せれば勝てる」。この試合のハーフタイム、選手たちに伝えた言葉を、もう一度、選手たちが実践できるようにという指揮官の心配りだろう。


(取材・文 河合 拓)▼関連リンク【特設ページ】第37回日本クラブユースサッカー選手権(U-18)大会

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