beacon

“ハリル・ノート”を披露した新監督「速い攻撃がすべてではない」

このエントリーをはてなブックマークに追加

 日本代表のバヒド・ハリルホジッチ新監督は13日の来日会見で自身のサッカー哲学、コンセプトの一端を明かした。「負けることが大嫌い」「私がいつも口にする一言目は勝利だ」という新指揮官は「勝利することが大事で、みなさんに勝利という言葉をたくさん届けたいと思う。この考え方に貢献する選手が必要だ」と、選手にも高い要求を課すつもりだ。

「フットボールには2つの面がある。ボールを持っているときと、ボールを持っていないときだ。現代フットボールでは、ボールを持っていないときは全員が同時にディフェンスしている。ブロックをつくって、全員が守備をしている。全員が努力しないといけないときに、一人だけ欠けてはいけない」

 チームとしての組織的な守備、選手個々の献身的な守備。攻撃に関しても「ビルドアップにみんなが関わらないといけない」と、全員守備・全員攻撃を基本コンセプトに掲げた。そのうえでゴール前にかける人数を重視。「ワンタッチ、ツータッチを多く使い、最後のペナルティーエリアでは何人かの選手が関わっているという状況をつくりたい。3人ないし4人。日本代表の選手はそういうクオリティーを持っている」と持論を展開した。

 現役時代はFWだったハリルホジッチ監督は「どちらかというとオフェンスが大好き」と語り、手元のノートを掲げて報道陣に披露。「このノートに今からやるべきことをたくさん書いている。今日はその詳細には入らないが、いくつかの点を伸ばしていきたいと思っている」と話しながら、攻撃に関しては具体的な改善点を挙げた。

「引いてきた相手に対して、あるいは引かない相手に対して、どんなスピードで戦ったらいいのかという話をしたい。速く攻撃することだけがすべてではない。スピードも大事だが、スピードだけでなく、リズムの変化や動きのフェイントが必要だ。小さいことはいろいろあるが、そういうことを教えていきたい」

 ブラジルW杯で10人のギリシャを崩し切れなかったザックジャパン、縦へのスピードを重視しながらアジアでベスト8に終わったアギーレジャパン。ハリルホジッチ監督はいずれの監督とも異なるアプローチを示す。ボールをつなぐだけの単調な攻撃でも、シンプルに縦に急ぐ攻撃でもなく、少ないタッチ数でボールを素早く展開しながら、試合展開や相手の状況を見極め、リズムに変化を付けて戦う。日本代表に求められている試合の中での柔軟な対応力や引き出しの多さ、攻撃のバリエーションを新監督がもたらすことができるのか。

「全選手に期待したいのは、効果的な選手であるということ」と語るハリルホジッチ監督は選手を特別扱いすることもない。「チームがスターだと思っている。スター選手の能力を持った選手でも、チームのために仕事をしてもらわないといけない」と力説。「バルセロナやブラジルのようなサッカーがしたいという指導者もいると思うが、我々は日本なので、日本代表としての戦い方をしたい」。理想を追い求めるのではなく、現実を見据えたうえで、日本代表が世界で勝つための最善策を取るつもりだ。

(取材・文 西山紘平)

TOP