beacon

[総体]名将も認める人間性、長崎総科大附が堂々の勝利で夏の全国へ:長崎

このエントリーをはてなブックマークに追加

[6.10 総体長崎県予選決勝 長崎総合科学大附高 3-0 島原商高 長崎県立総合運動公園陸上競技場]

 平成28年度全国高校総体「2016 情熱疾走 中国総体」サッカー競技(広島)長崎県予選決勝が10日に行われ、左SB前野翔伍(3年)の先制ゴールなどによって長崎総合科学大附高が3-0で島原商高に快勝。4年ぶり2回目となる全国総体出場を決めた。

 かつて島原商や国見高に全国タイトルをもたらしてきた名将・小嶺忠敏監督が「明るくて、いいと思うな。ジョークもきくし、大人な人間もいる」と人間的な部分でも認めるチームが、7-0で大勝した前年王者・長崎南山高との準決勝に続き、決勝も古豪・島原商に堂々の勝利で全国切符を獲得した。それまでの総監督から昨夏に監督に就任した小嶺監督は「人間的なものを求める。それは相当変わったと思う。人間変えないとチームは変わらない」と日常から選手たちに変化を求めた。「腫れ物を触るような指導者じゃダメ。今の子供たちが変というのはウソ。それは指導者の言い訳ですよ。悪いのは悪い、良いことは良い。嫌な顔をするんじゃないかと顔色を見るんじゃなくて、しっかり指摘してあげること」。前野が「寮生活からどんどん変えていきました。ダメなところはダメ、いいところはいいと区別できるようになった」と説明したように、“小嶺流”の「アメとムチ」で人間的な部分とプレーの部分でも成長する選手たち。今年は新人戦九州大会で3位に入り、プリンスリーグ九州開幕戦でアビスパ福岡U-18に5-0で快勝するなど、実力面でも注目のチームを率いるMF薬真寺孝弥主将(3年)は、全国大会での目標について「もちろん、優勝です」と力強く宣言した。

 ファーストシュートこそ、右CKから相手DF中村裕真(2年)に許してしまったものの、10年ぶりに決勝へ進出した島原商に序盤から襲いかかった。4分、相手の一瞬の隙を突いたU-17日本代表の注目ストライカー、FW安藤瑞季(2年)が一気に右サイドを突進。PAに入って切り返したところでDFに足を払われ、PKを獲得する。安藤の右足シュートはゴール左へ外れてしまったが、それでも2分後の6分に長崎総科大附は先制する。左サイドからドリブルで斜めに切れ込んだ安藤がタメをつくって中央へ折り返す。これを攻撃参加していた左SB前野がPA外側から右足で撃ちぬくと、ボールはゴール左隅へ吸い込まれた。

 長崎総科大附はさらにリードを広げる。10分、右SB吉田隆之助(3年)のロングスローをニアの安藤が頭で後方へそらすと、島原商DFがクリアしきれずにボールは逆サイドへ。ここにフリーで飛び込んだMF山本大樹(3年)がコントロールから難なく左足でゴールへ流し込んだ。一気に畳み掛けようとする長崎総科大附は14分にも右MF右田翔か(3年)らのパスを受けた薬真寺がDFを外して右足シュート。この日の長崎総科大附はいつも以上に横への展開を多用し、MF鈴木颯太(3年)やDFラインがボールをサイドへ散らして攻撃していく。そして右田やMF宇高魁人(3年)の仕掛けで相手の守りに圧力をかけた。

 島原商は連続失点した後にGK今積隆介(3年)が接触プレーで目の上をカットするアクシデント。劣勢の中、崩れてもおかしくない展開だったが、選手たちはここで踏ん張る。サイドから攻撃のスイッチを入れる相手に対し、DF本田圭哉(3年)やDF松本龍哉(2年)がカバーリング良く封じ、前日のボランチからこの日最終ラインに入った中村も根気強く跳ね返す。また、クロスに対して今積が的確な対応。セットプレーから相手ゴールを目指した攻撃面は脅威を与えるに至らなかったが、守備面では長崎総科大附にゴール前までボールを運ばれてもそこで奪い返して全校応援のスタンドを沸かす。長崎総科大附の小嶺監督も「頑張るんですよ。ちゃんと頑張る」と評した島原商は3点目を許さず、可能性を残したまま前半を終えた。

 それでも長崎総科大附は後半4分、交代出場の右SB枡谷拓実(2年)の右アーリークロスをニアの安藤が技ありヘッドで決めて3-0。島原商は後半、布陣を5バックから4バックへ変更して反撃したが、相手の厳しいプレスの中で限定された攻撃は森田将生(3年)と田中純平(2年)の両CBやGK湊大昂(2年)に対応され、なかなか相手ゴールに近づくことが出来ない。試合の主導権も相手に握られたまま時間が経過した。島原商は後半21分、交代出場のFW福田有莉(3年)が前線で競り勝ち、飛び出してきたMF湯川奏主将(3年)が決定的な右足シュート。だがゴール右へ外れ、31分にもMF前田裕斗(2年)が右サイドから斜めに入れたパスが中央の中村に通ったが、このシーンもシュートが枠を外れてしまう。一方、相手をシュート3本に封じた長崎総科大附は終盤になっても右田が右サイドでキレのあるドリブルを繰り返すなど最後まで強さ、運動量を見せつけて4年ぶりに夏の長崎を制した。

 長崎総科大附は優勝を喜ぶよりも、決勝で見えた課題を反省し、これからへ切り替えている選手が多かった。薬真寺が「もう少し点が欲しかった。まだまだ課題が残った試合だった。チームプレーを忘れて個人プレーに走った選手がいた。小嶺先生からも言われて。キャプテンとしてまとめなければいけない。もっと自分から言えるようにならないといけない」と説明するなど、選手たちに満足感は見られない。2月の九州高校新人大会準決勝で東福岡高に1-6で敗戦。薬真寺は「東福岡に6点取られてから変わったと思う。以前は点取られたら落ち込んで。メンタル弱いところがあった。でも耐えることができるようになった」。大敗を糧に成長してきた手応えがあるが、全国王者の東福岡のような、高いレベルの相手に勝つためにはより突き詰めて行くことが必要。前野は「練習から厳しくやっていきたい」。全国舞台でも十分に勝負できるチームだけに、あと1か月強の間に精度の面などよりレベルアップして全国大会に臨む。

(取材・文 吉田太郎)
▼関連リンク
【特設ページ】高校総体2016

TOP