beacon

バルセロナ、奇跡に揺れたカンプ・ノウ…予行演習とペップの予言

このエントリーをはてなブックマークに追加

バルセロナが歴史的な逆転勝利を演じた

パリSGが4点を取れるなら、我々が6ゴール決められないことはない」

 試合前の記者会見でバルセロナを率いるルイス・エンリケ監督が放った言葉である。

 もっとも、この時点でこの言葉を鵜呑みにした者は楽観的なバルセロニスタを除いてほとんどいなかったはずだ。舞台はチャンピオンズリーグ、相手はフランス王者のパリSGだった。第1戦でバルサの攻撃陣は完全に封じされ、逆に4度もネットを揺さぶられた。

 アウェーゴールのない4点のビハインド。いくら舞台がカンプ・ノウ、いくら役者が幾多の偉業を成し遂げてきたバルセロナの選手たちとはいえ、“ミッション・インポッシブル”という他ないシチュエーションだった。

 しかし、歴史は作られた。それも単なる奇跡ではない。フットボール史に燦然と輝く大偉業である。ハリーポッターの作者として知られるJ・K・ローリングは、かつてラグビー・ワールドカップで日本代表チームが南アフリカを破った際に「小説では書けない」とつづった。果たして彼女は、この試合をどう表現するのだろうか。

■予行演習とペップの予言

 バルセロナは先週、“予行演習”を行っていた。1日にスポルティング・ヒホンを6-1で下し、週末には5-0でセルタを粉砕した。カンプ・ノウを埋め尽くしたサポーターたちはチームと自分たちを鼓舞するように歌った。「Yes we can!」と……。

 そして、奇跡は成し遂げられた。

 ルイス・スアレスが口火を切ると、レビン・クルザワのオウンゴールとリオネル・メッシが続いた。62分にエディンソン・カバーニにアウェーゴールを許し、一瞬カンプ・ノウは静まり返ったが、ネイマールが意気消沈気味のスタジアムに再び熱狂をもたらした。終了間際に2ゴールを決めると、最後は絶妙のラストパスでセルジ・ロベルトの決勝弾をお膳立てした。

 この瞬間、歴史は作られ、カンプ・ノウは史上最大級に揺れた。人々は涙し、暴れ狂い、熱狂の渦に身を任せた。

 かつてバルセロナを率いたジョゼップ・グアルディオラは、ファーストレグの結果を受けて「気をつけたほうが良い。バルサとルイス(エンリケ)を批判し過ぎることをね。彼らはあなたたちが間違っていたということを証明するかもしれない」と語っていた。その時、ペップの発言を真剣に聞いていた者はさほど多くなかったはずだが、“予言”は現実になったのだ。

■何かが起きるカンプ・ノウ

 もうこの試合を表せる言葉はないのではないだろうか。奇跡、信じられない試合、あり得ない、夢みたい……。どんな言葉をもってしてもこの偉業を表現することは難しいだろう。『Goal』の現地記者たちもそう分かりつつ、表現できる限りの言葉を尽くしてこの試合を、こう伝えている。

They did just that in incredible circumstances. This was wonderful, magical, unbelievable - the greatest comeback in the history of the Champions League and perhaps in the history of football itself.
(信じられないような状況で、彼らはやってのけた。素晴らしく、魔法のようで、信じがたい出来事だった。チャンピオンズリーグの歴史上……おそらくフットボールの歴史上で最も偉大な逆転劇だった)

 まったく、なんという夜だっただろうか。1999年、マンチェスター・ユナイテッドアレックス・ファーガソン監督はバイエルンを大逆転で下したCL決勝後、こう口にしていた。

「フットボール、なんてこった!」

 奇しくも2つの奇跡が起きた場所は、どちらもカンプ・ノウだった。


●欧州CL16-17特集
●リーガ・エスパニョーラ2016-17特集 
世界のサッカー情報はgoal.com

TOP