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劇的V弾!仙台DF鎌田「サポーターの気持ちも込められたシュート」

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[4.23 J1第7節 川崎F1-2仙台 等々力]

 「目に見えない力」が決勝ゴールをもたらした。1-1の後半42分、右FKのチャンスを得たベガルタ仙台はMF梁勇基のクロスボールをDF鎌田次郎が頭で合わせる。GK杉山力裕の反応できないコースへ飛んでゴールマウスを叩いたボールは、内側へと跳ね返り、ゴールネットへ。興奮した表情で駆け寄ったチームメートに「叩かれました」と苦笑いの鎌田だったが、「うれしかった」とかみ締めるように喜びを語った。

 東日本大震災の被災地・仙台へ捧げる決勝弾。だが最初からシュートを打つつもりではなかった。「角さん(角田)のマークをブロックするつもりで。角さんにシュートを打たせるつもりだった」。だが梁のFKはその上を越える。フリーではなかった鎌田だが、完璧なタイミングで跳躍すると、頭ひとつ抜けた位置から放たれたヘディングシュートはゴールへ吸い込まれた。「ポストに当たって内側へ入ったのはチームみんなの力。サポーターの気持ちもこめられたシュートだった」。自分の力だけではない。チーム、目の前の仙台サポーター、そしてこの日会場に駆けつけることのできなかった人たちの思いにも後押しされた一撃は、期待通りの決勝点となった。

 東日本大震災で被災した仙台の初戦には、1万5030人の観衆と多数の報道陣が集まった。ただ「注目されるのはわかっていた。準備はできていた」と鎌田。同時に「周りの人からどんな形でも勝ってくれと言われていた」というCBは、前半から相手のスピードあふれる攻撃に食い下がった。強烈なスライディングタックルで相手の突破を阻み、身体を張った。

 先制されても2点目を許さなかった。1-1の後半33分にFWジュニーニョをピッチへ送りだしてきた相手の攻撃に「ジュニーニョがベンチにいることを忘れていて焦りました」と苦笑い。DF5人に囲まれても強引に突破してくる10番に苦戦したが、持ち味のスピードを消して決定的な仕事をさせなかった。

 再開初戦は地元に希望の光を灯す勝利。それは絶対にあきらめない気持ちで勝ち取ったものだった。次戦は震災によって損傷したユアテックスタジアム仙台での浦和戦。ヒーローは「チームがまとまって戦えば川崎にも勝てる。これからも同じ気持ちを持ってやっていきたい。ホーム、アウェーに関わらずきょうの気持ちを持ち合わせていく」とホームでの勝ち点3獲得を誓っていた。

[写真]決勝点を決めた鎌田をチームメイトが祝福

(取材・文 吉田太郎)

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