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[Fリーグ]2ゴールの名古屋 FPリカルジーニョ「W杯ではカズをヒールリフトで抜きたい」

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[10.8 F第16節 町田 3-4 名古屋 町田]

 世界最高の選手と呼ばれる男。その本当の姿を、僕たちはまだ知らないのかもしれない。Fリーグの16節で名古屋オーシャンズは、ペスカドーラ町田と対戦した。この試合でフットサルW杯を戦うポルトガル代表のメンバーに選出されたFPリカルジーニョは、名古屋の1点目と決勝点となる4点目をたたき出している。

 FP北原亘は「相手の守備を崩せなくて、これまでの負けパターンのようなゲームでした。でも、今年の名古屋は悪い流れのときも、自分たちの流れにできる力がある」と振り返った。その『力』こそが、欧州クラブへの期限付き移籍から復帰したリカルジーニョだろう。

 0-2で迎えた後半13分、リカルジーニョは中央突破からシュートを決めた。低い弾道のシュートは、やや不自然にGKの脇の下を抜けて行ったが、意図的にドライブをかけたシュートを打っていたのだ。「技術的には、サッカーのC・ロナウドみたいな蹴り方で打っています。落ちるようなボールなので、GKにとっては処理が非常に難しいボールでした。GKがボールを待っている間に、落ちるので」と、サラリと言う。さらに同19分には、敵陣深くで相手のクリアーを体に当ててブロックすると、そのままボレーシュートを叩きこんだ。

 圧倒的な個の力を見せつけたが、本調子ではなかったことを明かす。「今週は腰のケガで練習ができませんでした。だから、前半から全力でプレーしていたというよりも、後半の勝負どころに備えて、抑えながらプレーしていました」。

 名古屋で美技の数々を魅せてくれるのは、ありがたい。だが、今は恐怖にも感じられる。なぜなら11月から始まるフットサルW杯で、日本代表は彼を擁するポルトガル代表と対戦するからだ。しかも、ポルトガル代表になると、彼のプレースピードのギアは、さらに数段階、上がるという。「名古屋では、まだ考えながらプレーしなければいけない状態です。でも、ポルトガル代表の選手たちは、もっと速くボールを回すことに慣れていますし、長く一緒にやっているので、お互いの選手たちの特徴も分かっています。よりスピードのあるプレーができると思います」と、サラリと言う。

 もちろん、Fリーグでプレーしているため、日本代表の情報についても詳しい。「世界的にはまだ知られていないかもしれませんが、本当に良い選手が出てきています。私はポルトガルと日本がグループステージを突破できればいいと思っているのですが、ブラジルもいるのでね…。本当に難しいグループに入りました」と言う。

 日本代表には、サッカー選手が一人入りそうだが? と話を向けると「カズ、日本のキングですよね?」と返してきた。そして「非常に経験があり、私もリスペクトしています」と前置きをした上で、活躍するのは簡単ではないと続けた。

「これは、私の考えですが、フットサルをプレーするのは非常に難しいと思います。私自身、サッカーとフットサルの両方を経験していますが、まったく異なるスポーツです。名古屋にいる日本代表選手たちは、みんな(カズの代表参加を)感謝していましたし、グループをまとめる上でもすごく大事な選手になるでしょう。ですから、私もカズが代表に入って、W杯で点を決めてほしいと思います。ただ、ポルトガル戦では勘弁してほしいですね」と、笑顔を見せた。

 リカルジーニョは、フィールドを俯瞰して見ることのできる名手だ。守備面に課題を残すカズがピッチにいれば、当然、そこを突いてくるだろう。カズと1対1になったら、どうするか? そう聞くとリカルジーニョは「ドリブルが上手いと聞いているので、警戒していますよ。でも、逆に私がボールを持った時は、ヒールリフトでカズを抜きに行きたいと思います」と言い、冗談ですよというように笑っていたが、その目は笑っていなかった。

(取材・文 河合拓)

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