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[Fリーグ]初勝利を呼んだ元J磐田、現・浜松GK山本「次は完封してみたい」

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[7.21 Fリーグ第8節 浜松2-1町田 テバオーシャンアリーナ]

 勝利の味を知り尽くすはずの男も、1勝を大いに喜んだ。かつてジュビロ磐田でプレーし、完全優勝した2002年には正GKを務めていた山本浩正である。昨シーズン、Fリーグに昇格したアグレミーナ浜松に加入した山本は、高さ2メートル、幅3メートルの小さなゴールを守っている。

 ジュビロ時代、そのチーム名通りに歓喜を何度も味わった山本だが、Fリーグでは苦しみを味わう機会が遥かに多い。昨季27試合でわずか2勝、シーズンの総失点数は137も数えた。今シーズンも、7節を終えて7戦全敗と最下位に沈んでいる。迎えた8節の町田戦も、開始8秒で直接FKを決められて失点するという苦しい立ち上がりになった。

「あれは、自分を含めてミスですね。そういう感じで失点してしまいましたが、その後、みんな集中を切らすことなく、前半のうちに追い付けたことが良かったです」

 開始直後に失点を喫した浜松だったが、その後も集中を切らすことはなかった。前半だけで18本ものシュートを浴びたが、追加点を許さずに、前半残り1.5秒で第2PKを獲得すると、FP蓮池紳吾が決めて1-1の同点に追い付き、後半を迎えた。町田の猛攻を抑えられたのは、山本の活躍があってこそだ。前半、2度あった第2PKを山本は2度ともセーブし、味方の反撃を待った。

「まぁ、第2PKはね。運みたいなものですから。運が良かった」と、本人は謙遜する。しかし、いつも練習時から山本を相手に第2PKを蹴っている蓮池は「ゴール前の山本さんの威圧感は、半端じゃありませんからね。腕なんかもすごい太いし、入る気がしない。そういう意味では、僕が第2PKを決められたのも山本さんのおかげですよ。普段、山本さんに向かって蹴っているわけですから」と、絶賛した。

「それがファウルになるの? っていう感じでファウルを取られることが多くて。逆にそれでうまく集中できたのかもしれない。それじゃダメなんだけどね」。第2PKは運と言う山本に、1失点に抑えられた要因を聞くと、そう苦笑した。

 逆境の中で反骨心を見せたチームは、後半も耐えた。後半7分にFP松本行令が追加点を挙げて、町田がパワープレーに出てきてからは、しっかりと低い位置でブロックを組み、ゴールを守り抜いた。山本の後ろにボールが抜けた場面も2度あったが、ゴール前に戻ったFP曽根田盛将、FP笠井健太がしっかりとカバーした。この試合のマン・オブ・ザ・マッチに選ばれた守護神は、「本当にみんなに感謝です」と言い、「勝つとフットサルも楽しいですよ。まだ3回目ですから」と、破顔した。

 次なる目標を聞くと、山本はGKらしい欲を口にした。「完封してみたいですね、今度は」。過去のリーグ戦34試合、浜松には完封ゲームが一つもないのだ。「全部失点していますから!! 0-0もないですし。失点していない試合は一つもないので、なるべく早く、そういう試合ができるように頑張ります」。Jの舞台で頂点に立った男は、Fの舞台で再び一歩一歩、歩みを進めている。

(取材・文 河合拓)
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