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Fリーグ・湘南に元日本代表のFP小野が新加入!! 独占インタビュー後編

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 フットサル日本代表のピヴォとして、04年、08年と2度のW杯に出場。イタリアのセリエAやスペインリーグでも活躍してきたFP小野大輔が、湘南ベルマーレに加入することが発表された。小野選手に独占インタビューで、移籍の真相を聞いた。後編では、小野自身が何を湘南にもたらしたいか。そして日本代表への想い、今年タイで開催されるフットサルW杯への想いも語った。

FP 小野 大輔
(Daisuke ONO)
背番号:18
生年月日:1980年1月25日
身長/体重:177cm/67kg
出身地:東京都

―優勝を争う上でライバルになる名古屋は意識する?
「昔から、そんなに意識していません。(名古屋は)強いけど、ブラジル代表の方が強かったし、そういう相手がどこだと考えてしまう、意識してしまうのが一番イヤなんです。うまいな、って認めるところはいっぱいありますよ。でも、それで相手を意識するあまり、自分たちが名古屋戦になるとトラップとかパスとかで、緊張して普段はしないようなミスを重ねてしまう。それが一番、イヤなんです。自分を出し切れずに試合が終わった後に、何が残る? 何を感じる?って。オレはそういう経験を何回もしてきたから、相手がどこであろうと吹っ切って、普段通りのプレーをやろうと思うし、言うんです。結局、試合で相手を意識するために余裕を持ってプレーできない、満を持せないのは、普段の練習からそういう意識でできていないからでしょ? って思うんです」

―それは小野選手がブラジル代表と試合できたから余裕があるのでは?
「でも、各クラブ、そういう経験をしている選手が同じチームにいるわけです。それに名古屋とも同じリーグにいる。もっと言えば、足は2本だし、同じボール、同じ体育館、同じ40分でプレーするわけです。仮にブラジル人が相手にいても、ビビる必要はない。むしろ、今までやってきたことを、その相手にぶつけずに、いつぶつけるの?って。弱い相手に『これだけできるんだぜ』ってやることは、自分のやりたいことではない。Fリーグの舞台に立って満足ではないし、クラブに所属して満足でもないし、試合にスタメンで出たから満足ではない。どの試合も出て、自分のプレーをして勝ち続ける。その積み重ねで優勝できたときに、初めて満足できるんだと思います」

―相手は関係ない?
「相手が強いと思うのは、自分に自信がないとき。その自信をつくれるのは、自分自身でしかないんです。他の人に「良いプレーしてるね」と言われて自信を持つこともありますが、それはプラスアルファ。100%を出しているときに120%にできるかのところだと思います。でも、100%に持っていけるかは自分次第。普段から70%、80%でプレーしていたら、名古屋戦で何もできないし、ミスもするでしょう。そういう考えは湘南でも、強要はしませんが、伝えていきたいと思います」

―プレーの面で伝えたいことは?
「たとえばハーフウェーラインに2枚が残って、そこでバックパスを待つことがサポートではなくて、その2枚が前に行って、前の2枚が後ろにおりてくることがサポートなんだっていうこと。後ろに残って、セーフティーなパスコースを確保することがサポートではなく、次の次元のサポートが必要だと思う。それがないと次に発展しない。仮に失敗しても、何で失敗したかを考えてプレーしたい」

―具体的には?
「チームがダイヤモンドの形になっていたときに、市クンが後ろにいて、左サイドでボラが1対1で仕掛けたとします。ボラがボールを取られたとき、本当にボールをもらえるところにいた? 市クンが走ったなら誰か一人が下がればいいんじゃないの。ピヴォはファーサイドにいればいいんじゃないの? じゃあ、ボラの判断はこうだよね。戻った人の判断はこうだよね。上がった時の市クンの判断はこうだよねっていうような話し合いをして、積み上げていきたい。それを名古屋でも、府中でも、浦安でも、相手がどこでもそれをぶつけたい。もちろん、試合は結果が求められるから、セーフティーに蹴ることもあるけれど、蹴っていいと思うことをいいなと思う選手たちであってはほしくないですね。組み立てて崩したいし、相手の組み立てを止めたい。それがあるから見ている人も楽しいんだと思うし、ただ勝つために蹴り続けるのでは、おもしろいのかなと思うしね。
 もちろん、地元のチームだったり、好きな選手がいたりすれば、それだけでもいいのかもしれないし、応援には来てくれると思います。だけど、本当にこのチームのフットサル好きって言われたら、みんななんて言うんだろうなと。そうするとフットサルという競技の発展性もないし、将来性もないと思う」

―小野選手は4年前のW杯で大ケガを負い、なかなかプレーを取り戻せませんでした。現在の状態は?
「ケガをした右足についてはもう大丈夫です。フルスイングもできるし。でも、その分、負担のかかっていた左足にも影響が出ている感じはありますね。感覚としては、ようやく100%に近い所まで戻ってきていますよ」

―今年はW杯もあります。
「代表には戻りたいよね。でも、代表を意識して移籍というわけではありません。監督との相性もありますしね。呼ばれたのは復帰した直後、ヒザがどうしようもないとき」

―しばらく代表から離れていますが?
「知らない選手は何人かいるけど、みんなポテンシャルは高いし、合わせてもらうことも、合わせることも、問題なくできると思います。試合を見ているとなんとなくどんなことをやっているのかもわかります」

―もう一度W杯にもという思いも?
「ありますね。結局、あれ(スタメン出場した初戦のブラジル戦の開始から約90秒で負傷)で終わってしまったからね。若いうちにしかない良いものもあると思うけど、経験もすごく生かせると思う。でも、まずは湘南で結果を出すことがすべてですからね」

―湘南でやりたいことは?
「わかりやすく言うと、『これならできる』と見ている人に思われないプレーですね。Jリーガーとかでも、見ている人に、そう思わせてはいけない。たとえばGKからボールを前に入れて、そこでキープする。それだけをずっとやっているチームがあったら『あ、これならオレもできるな』って、Jリーグの選手が思うかもしれない。そう思わせてはいけない。分かりやすくいうとね。これはできない、これは速いわ、この動きは想像していなかった、あそこが見えているんだ、って常に思わせることが、Fリーガーの使命だと思うんです。それがまだできていないから、お客さんを集めることができていないんだと思います。だから、湘南のフットサルを見に来たら、そこでしか見れないものを見せたいですね」

(取材・文 河合 拓)

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