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[選手権予選]青森山田GK廣末陸の「自信」、バーレーンから帰国直後の決勝も変化に動じず

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FC東京内定の青森山田高GK廣末陸はAFC U-19選手権から帰国直後の選手権予選で優勝に貢献

[11.6 全国高校選手権青森県予選決勝 青森山田高 4-0 八戸学院光星高 青森県総合運動公園陸上競技場]

 全国高校サッカー選手権青森県予選決勝当日の11月6日、青森市内では初雪が観測されていた。気温は試合開始の正午に至っても、6℃までしか上がらない。地元の人にとっても厳しい冷え込みだったそうだが、1週間弱前まで中東のバーレーン王国にいて、灼熱の太陽に照らされていた身であれば、その寒さたるや……。彼の地では日中の気温が35℃前後になることも珍しくなかったので、この日の青森との気温差は30℃近いことになるのだ。

「寒いっす。本当に寒いですよ」

 FC東京内定の青森山田高GK廣末陸は、そう言って苦笑いを浮かべる。U-19日本代表の一員として参加したAFC U-19選手権のために10月頭から中東に渡って現地に順応してしまっているのだから無理もない。「青森へ着いた日には(余りの寒さに)ビックリしました」と笑う。帰国後のトレーニング初日は、うっかり練習着のみの姿でグラウンドに行ってしまい、「みんながっつりベンチコート」という仲間の姿を見て、あらためて寒暖の落差を痛感したと言う。

 急激な気候の変化もあれば、時差調整もある。コンディションを崩しても不思議はない状況である。さらに言えば、廣末はバーレーンで準決勝の1試合にしか出場しておらず、実戦の勘という意味でも一抹の不安はあったはずだ。だが、「廣末はいつも自信を持ってプレーしてくれる」と黒田剛監督が目を細めたように、そんな不安は微塵も見せなかった。最後尾の守護神が試合で不安な様子を見せれば、必ず仲間に伝わるものだ。

 迎えた決勝の八戸学院光星高戦。前線の二人を軸にカウンターを狙う相手に対して、廣末の出番は決して少なくなかった。前半20分にはCKからのカウンターを受ける中でFW仲谷樹に抜け出されるが、これは廣末がきっちり防ぐ。28分にも裏を取られる中で飛び出してクリア、続く29分にもやはり裏に抜けてきた仲谷のシュートを正面でしっかりとセーブしてみせた。

 そんな流れについて「何本か危ないシーンは作られていたけれど、DFがしっかり寄せていたので」と事も無げに言い切る様は、黒田監督の言う「自信」の現われなのだろう。帰国から間もない予選に向けて心身のコンディショニングをやり切ったことを含めて、伊達に高校サッカー界No.1と言われるGKでないことを証明してみせた。

 控え選手として過ごしたU-19代表での日々については「相当悔しかった」と振り返る。ただ、大会中はあくまでサポート役に徹しており、取材があっても正GK小島亨介(早稲田大)への配慮を強くにじませたコメントに終始していたのがかえって印象的だった。これもまた心の強さゆえだろう。同時に、その視線はもう世界大会に向いている。

 少しでも自分の存在をアピールし、「世界に近づけたら」という野心も隠さない。高校サッカー選手権はそのためにも大事な場になるが、まず意識するのは首位を走る高円宮杯プレミアリーグEASTを制することだ。「去年(は優勝を狙える位置にいながら)最後の最後にやられたので、もう絶対に負けたくない」と意気込む。最終節は自身の古巣であり、進路先でもあるFC東京が相手というのも心を昂ぶらせる要素。「絶対に負けたくない」と語るライバルGK波多野豪との対峙を含めて、世界を目指す廣末のハートは早くも燃えたぎっていた。

(取材・文 川端暁彦)
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