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7年連続9度目の挑戦は0-9大敗。八戸学院野辺地西に立ちはだかる“山田の壁”…打倒絶対王者への道は“東北の壁”から「日常のレベルをプリンスリーグへ」

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プリンスリーグ参入戦に意気込みを語ったDF高木和主将(3年、右から2人目)

[11.5 選手権青森県予選決勝 青森山田高 9-0 八戸学院野辺地西高 カクスタ]

 7年連続9回目の同カード対決となった青森県予選の決勝戦。絶対王者の青森山田高に近年、接戦を繰り広げてきた八戸学院野辺地西高だったが、今季は0-9の大差で敗れた。試合後、三上晃監督は「プレミアリーグに出ている全国トップレベルの山田さんと比較すると、あらゆる部分で至らなさを感じた。全てにおいてレベルをもう一つ上げていかないといけない」と唇を噛んだ。

 八学野辺地西が初めて県決勝に出場したのは2013年度大会。当時16年連続で全国出場を果たしていた青森山田に0-8で敗れ、絶対王者との初対決を終えた。その後も14年度は0-6、17年度は0-11と大量失点が続いたが、18年度から潮目が変化。全国制覇を果たした世代に1-2の接戦を展開すると、初めて3年連続で決勝に進んだ19年度は0-0のままPK戦に持ち込んだ。20年度の0-3敗戦を経て、21年度は結果的に1-5で敗れたものの、初めて先制点を奪取。昨季も先制点を奪われながらも一時追いつき、延長戦終盤に決勝ゴールを奪われるまで、1-1の激闘に持ち込んでいた。

 そうして迎えた今季、青森山田が新体制に移行したこともあり、覇権の行方には例年よりも注目が集まった。しかし、結果的にはむしろ絶対王者の強さが際立つ形に終わった。

 青森山田の選手たちは口を揃えて「一昨季や昨季の反省点を意識していた」と話し、この一戦に向けて重要な先制点を奪うこと、先制してもなお追加点を狙い続けることに強くフォーカス。対する八学野辺地西も近年、経験を積み重ねてはいたが、それを上回るような迫力で9得点のゴールラッシュを浴びせられた。

 八学野辺地西の三上監督は「昨年の決勝戦は戦っているが、改めて今日ピッチに立った選手たちは普段と違うスピード、パワーを体験して、うまくいかない状態が続いている中で失点してしまった」と力の差を認めた。また主将のDF高木和(3年)は「3年かけて山田を倒すという目標で取り組んできたけど、まだまだ足りなかった」と振り返り、「空中戦で負けないこと、対等に競り合うこと、相手の特徴であるフィジカルや走力で劣らないことが必要だと思う」と敗因を見つめた。

 スコアの上で肉薄することはあっても、なかなか打ち破ることのできない“山田の壁”。八学野辺地西は今後、もう一つの壁を破ることで乗り越えていく構えだ。

 八学野辺地西は今季、青森県リーグ1部を青森山田高3rdに続く2位で終えており、高円宮杯プリンスリーグ東北への参入戦プレーオフへの出場権を獲得。一つ上のカテゴリに挑む権利を有している。県内初制覇を果たした19年を含め、17年から5年連続(20年はコロナ禍で昇降格なし)で挑んできたが、一度も破れていない“東北の壁”へのチャレンジが12月に控えている。

 勝負どころの強さを身につけるため、大事なのは日常のレベルを上げること。三上監督は「我々としてはずっとチャレンジはしているもののあと一つ及ばず、また県リーグで戦うという年数が続いている中で、日常のレベルを東北のプリンスリーグに持っていきたい。その中で成長し、選手権につなげていくことが目標。早く上のレベルに上げて、日常をさらに高いレベルで過ごしながら、選手権で全国レベルのチームに対抗できる力を身につけていきたい」とプリンスリーグ昇格の重要性を見つめている。

 そうした成長ルートは県内で絶対的な地位を築き、全国トップの実績を上げるまでに至った青森山田も通った道だ。参入戦で引退試合を迎える3年生に対し、指揮官は「後輩たちに来年戦うリーグをもう一つ上げて卒業していってほしい」と要求。高木主将は「決勝で0-9という不甲斐ない結果のまま終われない。やっぱり3年生として、キャプテンとして、1〜2年生にプリンスリーグという舞台に立たせてあげたい。いまはその気持ちだけです」と力を込めた。

(取材・文 竹内達也)
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竹内達也
Text by 竹内達也

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