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明秀日立が全国2冠への挑戦権を獲得。謙虚に成長、勝ち、質を求めてまずは茨城制覇

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明秀日立高が茨城県予選を制した

[11.12 選手権茨城県予選決勝 明秀日立高 4-0 霞ヶ浦高 カシマ]

 成長と白星を重ね、夏冬連続日本一に挑戦する。第102回全国高校サッカー選手権茨城県予選決勝が12日、茨城県立カシマサッカースタジアムで開催され、インターハイ優勝校の明秀日立高と決勝初進出の霞ヶ浦高が激突。明秀日立が後半の4得点によって4-0で勝ち、4年ぶり5回目の全国大会出場を決めた。

 静岡学園高や青森山田高、桐光学園高といった強豪を連破し、同校にとって初、茨城県勢にとって44年ぶりの日本一に輝いた夏から3か月強。「もう一回チャンピオンになれるためにひたむきにやりたいということが一つと、図々しい話ですけれども2冠をするチームは過去5チームしかないので、まぐれでも良いから取りたい」(萬場努監督)。彼らだけが持つ夏冬連覇への挑戦権を明秀日立が獲得した。

 明秀日立は前半からダイレクトプレーやミドルシュートに積極的にチャレンジする。また、今年のチームの特長でもある右WB長谷川幸蔵(3年)、左WB益子峻輔(3年)の両翼の突破力を活用してゴール前のシーンを創出。FW石橋鞘(3年)が積極的にボールに係わり、強烈な右足ミドルを枠へ飛ばした。

 だが、この日は中盤の柱・MF吉田裕哉(3年)が累積警告のために出場停止。中盤中央に入ったMF大原大和(3年)とMF阿部巧実(2年)が効果的な配球も見せていたものの、前半に関しては、攻守両面で彼の不在の影響が少なからずあった。ゴール前のシーンを作るも、ラストの局面で粘り強い霞ヶ浦DFの足に当てられるなど、決め切ることができない。

 それでも、球際の強度の高さや攻守のスピードで決勝初進出の霞ヶ浦を苦しめる。三鷹高(現三鷹中等教育学校、東京)、駒場高(東京)を選手権へ導いている霞ヶ浦・山下正人総監督は、「明秀はフィジカルと言われているけれど、フィジカルじゃない。勇気があって、戦っているから。山田に勝っても、静学に勝っても、気持ち的に強い子が多いよね。自信をもってやっている」と分析していた。

 明秀日立は最前線のFW熊崎瑛太(3年)が身体を張り、石橋、MF柴田健成(2年)の2列目が飛び出す動きも。だが、霞ヶ浦も引かずに前からボールを奪いに行き、ゴール前のシーンも作り返して見せる。また、FW谷本一翔(3年)のロングスローも活用。前半32分には右のMF安部友兜(3年)のドリブル突破を起点とした攻撃から、左の10番MF大谷陸斗(3年)がクロスを上げる。

 そして、FW吉沢友慶(2年)が決定的なヘッド。この日最大のチャンスだったが、ボールは枠左へ外れた。40+1分に再び大谷の左クロスにファーのMF久保木周主将(3年)が決定的な形で飛び込んだが、明秀日立GK重松陽(2年)が前に飛び出して阻む。山下総監督は選手たちにさらなる強度を求めていたが、前半を0-0で終了。関東大会予選2回戦で明秀日立を2-0で下し、インターハイ予選決勝でも0-1と食い下がっているチームが夏の全国王者相手に再び対抗して見せた。

 だが、明秀日立が「勝因は総合力だと思っています」(萬場監督)という力をスコアに結びつける。後半立ち上がり、明秀日立はDF斉藤生樹(3年)が攻め上がりの回数を増加。そして、8分、斉藤が獲得した左CKを大原が右足で蹴り込む。これをニアの斉藤が頭で合わせて先制した。

 直後、阿部をMF竹花龍生(2年)へスイッチしたタイミングで4バックへ移行。14分、システム変更に伴い、右サイドへポジションを移した益子が左足クロスを上げる。これを石橋がDF頭上からの豪快ヘッドで叩き込み、2-0。この後、霞ヶ浦は左SB坂田俊輔(2年)とMF藤原涼太(2年)を同時投入し、左サイドからの攻撃を活性化した。

 だが、明秀日立はインターハイ直後の怪我から今大会準々決勝で復帰したゲーム主将CB山本凌(3年)が高さを発揮。CB飯田朝陽(3年)とともにゴール前で相手の前に立ちはだかる。すると24分、相手CKから高速カウンター。前線に残っていた長谷川が右のスペースへ持ち出してから一気にスピードを上げ、対応したDFを振り切る形で敵陣PAまでボールを運ぶ。最後はグラウンダークロスをファーの竹花が右足で決め、3-0とした。

 明秀日立は33分にも交代出場の10番FW根岸隼(3年)が奪い返しから決めて4点目。一方で試合終盤、コーナー付近でボールキープを実施するなど最後まで無失点にこだわり、4-0で勝利した。難しいと考えていた県予選を突破。山本は「心の作り方は難しかったと思うんですけれども、全国大会勝ってからも常にチャレンジャーとして立ち向かっていくということがこの県大会では出たのかなと思っています。(慢心することなく、)常に上を目指してトレーニングできたので、ここまで成長できたのかなと思います」と胸を張った。

 明秀日立の萬場監督は「今までは(全国大会に)出ることが最大の目標になっていた感じですけれども、さらにそこからずっと伸びていくことに我々がずっと目線を持っていないといけない。当然勝つことを目標にすることは当たり前なんだけど、勝てば何でも良いよね、ではなく質を上げていくということは凄く意識しています」と語る。高校サッカーが到達点となってしまうのではなく、次のステージで活躍する選手を育成すること。選手、スタッフはインターハイで「自分たちよりも強いチームがいた」ということを実感したという。目標の一つである選手権で結果を残すためにも、より向上心を持って質や強さのレベルアップに取り組んできた。

 茨城県1部リーグで勝つことを目指す一方、プリンスリーグ関東1部の帝京高や矢板中央高との練習試合を実施。全国上位のチーム相手にパフォーマンスを発揮できるような取り組みも行ってきた。「自分たちが目指しているのがストロング&テクニカル。両極でどちらでも勝れるようなチームにしていきたいです」(石橋)。まだ不足している部分があることは確か。それらを改善し、「そこに挑戦できるのは自分たちだけなので目指していこうという話をしている。もう一度日本一になれるように練習からもう一段階上げていけるようにしたい」(山本)という2冠に挑戦する。

 萬場監督は「(この一年、)みんなで目線を合わせる大切さを学んできたつもりでいるので、1試合にみんなでコミットして、それに集中することに楽しみたいなというのを(全国決勝まで)6回くらい繰り返したいという思いがあります」。インターハイでは静岡学園に勝つ、青森山田に勝つ、ということを本気で目指し、それを実現。選手権でも一戦一戦ベストの準備をし、日々成長しながら頂点まで勝ち進む。

(取材・文 吉田太郎)

●第102回全国高校サッカー選手権特集
吉田太郎
Text by 吉田太郎

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