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「彼に渡せば、点は決めてくれると思う」「全部、後ろで止めてくれると思ってる」。尚志のU-19日本代表コンビ、MF神田拓人&MF安齋悠人が全国制覇に挑戦

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尚志高のU-19日本代表コンビ、MF神田拓人(左)とMF安齋悠人(京都内定)

 第102回全国高校サッカー選手権が28日に開幕する。尚志高(福島)は23年のプレミアリーグEASTで過去最高成績の2位。今回の選手権で福島県勢初優勝を目指し、前回大会優勝校・岡山学芸館高(岡山)との初戦(12月31日、2回戦)から日本一への挑戦をスタートする。ともにチームの中心選手で、U-19日本代表でもあるMF神田拓人(3年=FC川崎CHAMPジュニアユース出身)とMF安齋悠人(3年=福島ユナイテッドFC U-15出身、京都内定)に選手権への意気込みや前回大会、尚志での3年間、ピッチ外、互いの凄さなどについて聞いた。

―直前合宿がスタートしていますが、選手権が近づいてきて、今、どんな心境でしょうか。
神田「まず本当に、この選手権で優勝するために尚志高校に入ってきて、やっと自分たちが3年生の代で選手権を迎えることができて、結構ウキウキしています」
安齋「僕は去年、この事前合宿、ちょっと怪我でみんなと練習することができなかったので、ラスト、最終学年になって、みんなと選手権前にこうやって練習できるっていうのが、まず最高に幸せです」

―良い合宿の入りができているみたいですけども、今のコンディションについて、教えてもらえますか?
神田「自分としても、チームとしても、結構みんな、万全なコンディションで、まあいい形で選手権を迎える準備はできていると思っています」
安齋「僕も今は個人的にもコンディションは良いですし、チームのコンディションも上がってきて、あとは確認作業っていう段階に入ってきているので、確実に仕上がってきてるなっていう感じがしています」

―今、尚志らしいトレーニングを見せてもらって、凄くムードも良かったかなと思いましたけど、どうかな。
神田「結構、普段の練習から、楽しい練習が多くて、こういった合宿でも、いつもと変わらず、いい雰囲気でやれてるかなっていう風に思います」
安齋「そうですね。狭いところでも天芝に慣れて武器のパスサッカーを披露できるようにやっていて、みんなで練習できていいですね」

―3年間の集大成かなと思うけど、緊張っていうよりも、ワクワクの方が大きいのかな。
神田「去年、経験してるので、去年は結構緊張したんですけど、今年は結構緊張っていうよりかは、楽しみっていう気持ちの方が高いです」
安齋「僕も同じで、去年、経験させてもらってるので、楽しみでしかないです」

―3年間の集大成かなと思うけれど、選手権って、それぞれにとってどんな大会かな。
神田「人生の中でも、1番デカい大会で、本当に良い瞬間であるとは思っていて、本当にこの高校年代のこの選手権は、活躍とか、成長する舞台だと思ってるので、ほんと、その先に繋がる良い大会かなっていう風に思ってます」
安齋「僕はここに入ってきたのは、全国制覇するっていう目標で入ってきて、1年生の時は悔しい思いをして、2年生の時に出たにも関わらず、不甲斐ないプレーで終わってしまって。 3年目の選手権っていうのはもう本当に思いが違うので、1年、2年の悔しい思いを選手権の舞台で晴らせるように頑張りたいなって思います」

―去年の選手権ってどんな大会だった?
安齋「3年生で応援してくれる立場に回ってくれる人がたくさんいて、そんな中で自分がスタメンで試合に出て、なかなか自分の思うようなプレーができずに2回戦敗退っていう形になってしまった。3年生とか応援してくれた方々に、ほんとに申し訳ない気持ちがいっぱいあったので、今年はその分を背負って戦いたいです」
神田「去年は自分の特長である守備っていうのは、あんまり出せなくて、ほんと悔しい結果で終わってしまいました。チームとしても、2回戦敗退っていう思うような順位じゃなくて、支えてくれた方々には本当申し訳ない気持ちがあったので、今年は何としても全国制覇できるように頑張っていきたいと思います」

―選手権後の高校選抜などの活動で名を挙げた2人かなと思うけど、そこからの1年間、どうでしたか。
神田「あの(U-17)高校選抜候補の合宿から始まって、代表も選ばれて、良い経験ができた。その活動があったからこそ、今の自分があると思ってるので、非常に良い経験ができたかなっていう風に思っています」
安齋「やっぱり、僕もそういう選抜とか選ばれたことがなくて、選ばれると自信がしっかりついて、自分のプラスになる経験っていうのがたくさんできたので、それがこうやって3年目で生かせてるなっていう風に思います」

―安齋君はむしろサポートメンバーで(U-18)高校選抜の選手たちより目立っちゃったところもあった。
安齋「ほんとにそうですね。(仲村浩二)監督のお陰でもあるんですけど、そういう1個上の代でも名を上げてる人たちと一緒にやらせてもらって、一緒に寝たり食べたりすることによって、普段の日常から吸収できるものがたくさんあって、ほんとみんな仲良くしてくれたので、もう自分も思いっきりのプレーができたので、ほんとに良い経験になりました」

―神田君はプレースタイル的になかなか評価されづらいプレーヤーだと思うんだけど、その中でもああやって評価されて、かけ上がっていけたのは、どういうところが良かった?
神田「やっぱり自分は守備のところで、なかなかボランチで守備ができる選手はいないっていう風には言われていて、そんな中で自分は誰もないような特長のところで、守備のところを磨き上げてやって行こうっていう風には決めていたので、そこは評価されて嬉しいです」

―互いに凄さを感じる部分を教えて下さい。
安齋「ちょっと自分、神田がいない試合とかは、ドリブルするのにも少し怖さってのが入ってしまって。ミスったら後ろに迷惑かけちゃうとか思うんすけど、やっぱ神田がいると『やってくれるだろう』っていう気軽な感じでドリブルできて、自分、そういうところでやっぱ思いきりが発揮できるんですけど。チーム内だったら神田は俺のこと止めれないんで、そこに関してはあれだなって思うんですけど、チーム外でプレーした時は、本当に神田が全部ストップしてくれるので、ほんと、助かってます」

―そういう評価を受けてますけれど。
神田「まあ、嬉しいですけど、安齋のこと止めれないっていうのは、まあ嘘なので(微笑)。でも、安齋も本当いるだけで攻撃がより活性化されて、ほんと、1人で打開できますし、シュートも上手いですし、クロスも上げますし、ほんと、何でもできるので、ほんとにいるといないでは攻撃のチャンスの多さだったり、ゴールの数っていうのは、結構、変わってくるのかなっていうのは思います」

―それぞれ、「コイツ、この1年でここ変わったな」って思うところあったら、教えて欲しいんだけど。
神田「(安齋は)結構守備のところは変わってるなっていうのを思っていて、結構プレスバックとかもして、より攻撃じゃなくて守備のところでも本当活躍してくれるっていう場面は多くなったかなっていう思います」
安齋「(神田は)守備ができたんですけど、2年生の頃は奪った後、やっぱ攻撃ってのがなかなかできないっていう風には自分では思ってたんですけど、3年目になって代表とかも入って、足元がやっぱついて、奪った後に展開してくれることが多い。神田からパスもらった時に得点決めることが自分で最近動画とか見て思っていて、そういう守備から攻撃っていうところが神田は変わったかなと思います」

―6月、2人でU-19代表のフランス遠征メンバーに入ったのは驚きでしたか?
神田「そうですね。まさか入るとは思ってませんでしたし、元々、安齋がU-19(日本代表)のフランスに行くっていうのは知ってたんですけど、その後に自分も(仲村浩二)監督から連絡頂いて、その時はほんとに驚きました」

―一緒に行って、どうだった。
安齋「もうほんとに尚志にいたら感じられないような経験ばっかりできて、相手のセンターバックにメッシとマッチアップしているっていう選手とかもたくさん見れて、ほんとに、良い経験でしかなかったです」
神田「フランスの遠征は格上の代表チームが多くて、U-21だったり、ほんとにこれまで経験したことがない高い強度で、スピードも違いますし、フィジカルも全く日本とは違うものがあって、良い経験ができたと思ってます」

―将来への意識も変わったんじゃないかなと思うんだけど、その点はどうかな?
神田「今まで代表にも選ばれたことがなくて、ほんとにこうやって高校選抜だったり、代表選ばれてからより近い存在になったのかなっていう風に思っていて、近い目標だったらロス五輪だったり、最終的にはA代表に入るっていう目標は、明確に立てれるようになったと思います」
安齋「僕も代表とかはほんとに無縁っていうか、全然入れる存在ではなかったんですけど、こうやってフランス(遠征)に選んでもらったりとか、自分に自信がついていく中で、ロス五輪を1番近い目標にしていて、そこでしっかり選ばれて活躍することができれば、A代表も。もう年齢は関係ないので、そこにどんどん絡んでいきたいっていうのが僕の最終的な目標です」

―高校入学当時、この3年後はイメージできていましたか。
神田「自分は全くできてなくて、1年生の頃なんかはスタメンで出れてなくて、ベンチにも入れない時があったので、今のように、ほんと代表に入ったりっていうのは全く想像できてなかったです」
安齋「僕もそうですね。尚志高校入っての目標は、『まずスタメンで出る』ってことが目標だったので、ほんとに2年生の時も全然代表とかは入れないだろうなって思っていた中での代表に選んでもらったのがフランスだったので、ほんとに自分でもびっくりしています」

―変化のきっかけを感じた時はありますか。
神田「自分は高校1年生の頃の福島県選抜で、ちょうどこのグラウンド(Jヴィレッジ)でU-17日本高校選抜と対戦した時が自分のターニングポイントだと思っていて、あの試合は特別な思いで入ったっていうのはなかったんですけど、たまたまあの試合が攻守両面で良いプレーができて、そこから高校選抜相手にもできるなっていう風には自信がついたので、その高校1年生のその試合が変わったポイントかなっていう風に思ってます」
安齋「自分があんまりドリブルできるって思ってなかったんですけど、全国ルーキーの決勝で(コーチの)小室(雅弘)さんとか監督が左で起用してくれて、そこで自分にちょっと自信がついたっていう感じで。高2になって、監督が左サイドハーフでたくさん起用してくれたのがきっかけで自信がつきました」

―お互い、ピッチ外で仲は良いんですか?
神田「寮とかでも結構話しますし、結構僕の部屋来て、ウイイレとかやってるので、そういうところで、結構盛り上がったりはしています」

―部屋は何人部屋?
2人「3人部屋です」

―良く行くの?神田君の部屋に。
安齋「そうですね。神田の部屋はもうめちゃくちゃ綺麗にされてて、掃除機とかも全部神田がやってるんで、ヨギボーみたいな、リラックスルームみたいなのがあるんで、そこにいつも行ってます」

―神田君はどう過ごしてるの。部屋では。
神田「部屋では結構そうやってみんな来た時は一緒に喋ってますし、ゲームとか、学校であった出来事とか、雑談とか結構します」

―安齋君はピッチ外では。
安齋「そうですね、ピッチ外はみんなとゲームするのが好きなんで、サッカーゲームやって、もうみんなとバチバチしてます」

―尚志でゲーム1番強いのは誰?
安齋「僕です」

―ほんとに?
神田「いや、もう彼強いっす」
安齋「ゲーマーなんで。みんなは神田の部屋に集まって、僕と対戦しに来るんですけど、全員返り討ちにしています(笑)」

―何でそんな強い。
安齋「中学の時、ずっとゲームやってたんで、それが高校に入っても、みんなやってるっていうのを知ってから、みんなとやっても全然レベル違ったんで、ゲームは負けないですね」

―他に趣味はある?
神田「部屋でみんなと話すぐらいですかね。練習が終わった後も、自分の部屋来てくれる人が結構多いので、そういう人たちと雑談するっていうのが、自分は楽しい瞬間かなって」

―掃除は好きなの?
神田「掃除も大好きです。まあ、毎日かけてるんで、掃除機は。ちょっとでもゴミがあったらなんか取りたくなるんですよね」

―安齋君の意外な一面は?
神田「結構、なんか綺麗好きかなって思ってて、なんか大雑把で、まあ適当かなっていう風には見えるんですけど、意外と部屋の机とかは綺麗にしてるので、意外かなって思っていますね」

―この間の内定記者会見、「安齋、こんな喋れるんだ」ってみんなが驚いたっていう。
神田「そうなんですよ。何かあんまりそういう勉強とか得意じゃないイメージあるんですけど、喋りとか結構上手くて、インタビューとか見てても、ほんと受け答えはうまいかなって」

―全く緊張してなかった。
安齋「そうですね、緊張はしなかったですね。何かたくさんの方にインタビューを高2ぐらいの時からさせてもらったんで、そういう受け答えは慣れてるんですけど、やっぱ勉強がちょっと苦手なんで。テスト期間とかもやっぱ神田の部屋にずっといて、神田がずっと教えてくれるんで、神田が教えてくれたとこだけやっています」

―神田君のこういう一面あるっていうのは。
安齋「こいつはマジで、ピッチではめちゃくちゃクールにやってるんすけど、ピッチ外はめちゃくちゃかまちょ(「※かまってちょうだいの略」)なんですよ。全員僕たちの代って仲良いんですけど、その中でもトップスリーに入るぐらい、みんなに何かちょっかい出して、みんなから構って欲しい」
神田「そんなことないですけど(苦笑)」

―喋れる範囲でギリギリのネタがあったら。
2人「ギリギリか~。何だろうな。結構アウトなんだよな、うん、全部アウトっすね、これ(笑)」

―選手権の思いをさっきも少し語ってもらいましたけれども、この冬、どういうことを成し遂げたい?
神田「尚志として、まだ何も。全国制覇もできてないですし、この代もまだ何も成し遂げてないので、まずこの3年間、全国制覇を目標に頑張ってきたので、自分たちの代で全国制覇できるように頑張っていきたいと思います」

―神田君は特にどういうところを披露したい?
神田「もう、守備のところで、ボール奪って、カバーリングだったり、そういうところは披露していきたいと思うんですけど、その奪った後の攻撃だったり、自分が自ら点奪ったりっていう。まだ公式戦で点取ったことがないので、最後、選手権の舞台で、点を取って終われるようにしたいと思います」

―「神田、初ゴール!」みたいな。
神田「プレミアで1点取るの目標だったんですけど、結局、22節全部決めてないので、最後ぐらい決めたいですね、選手権は」

―安齋君は?
安齋「僕はもう高1からずっと、みんなで練習前に『全国取るぞ』っていう声かけをしていて、それが高校3年生までまだ何も成し遂げることはできなかったんですけど、やっぱラストチャンスっていう部分でもみんな気合入ってますし、その部分ではほんとにこの代で歴史を塗り替えたいんで、もうここで全国制覇したいって思っています」

―どんなところを見せたい?
安齋「僕はもうチームのために、ほんとに自分のドリブルでシュートだったり、点を決めたり、クロスでアシストしたりっていう攻撃面でまずチームを優勢に立たせられるようなプレーとかしたいです」

―得点王も。
安齋「いや、まあなれたらいいですけど」
神田「何点とんの?」
安齋「7点ぐらい行きたいすね」

―7点いったら。得点王はある。
安齋「結構自信あるんですけど、今年は。去年はプリンスリーグ全部出て0点だったんですけど、もう監督とかチームメイトから色んなことを聞いて、今年はちょっとは取れたんで。プレミアリーグで点取れたり、インハイでも取れたんで、選手権ではもっと爆発できるように頑張ります」

―チーム内にもライバルがいっぱいいる。
安齋「そうですね、いっぱい網代(陽勇)だったり、笹生(悠太)も(若林)来希も、みんな(藤川)壮史も点取れる選手が多いんで、そこは負けずと頑張りたいです」

―この後の将来もありますけど、神田君は大学へ。
神田「そうですね。大学進学して、そこから4年間、しっかりサッカーも頑張って、プロを目指していきたいなっていう風に思っています」

―どういう4年間を過ごしたい?
神田「まず、自分の短所の攻撃のところをしっかり磨いて、抜けのない選手になって、ほんとプロでも大学卒業して1年目で活躍できるように、頑張っていきたいと思います」

―高卒でも多分狙えたけど、あえて、大学へ。
神田「そうですね。自分的にはまだまだプロでやれる自信がなくて、大学で経験してから、そのレベルの高いところで4年間経験積んでから、プロでやりたいっていう風に思って、それで大学進学を選びました」

―安齋君がどれぐらいやるかも1個指針になるんじゃないかなと思うけど。
神田「そうですね。活躍はほんと期待して、近くで試合あったら見に行こうかなって思ってます」

―安齋君はプロへ。
安齋「僕はもうずっと高卒からプロになるっていうのを目標でやってきたので、まずそこは嬉しいんですけど、やっぱ本当にスタートラインに立ったとしか思ってないので、卒業してからも必ずそのキャンプとかでも自分の武器を発揮して、京都サンガの試合に1試合でも早く出て、チームの勝利に貢献できるように頑張りたいです」

―サンガはキャンプ相当ハードらしいけれど。
安齋「そうっすね。なんか聞いたところによると、結構ボールは使うらしいんですけど、結構スプリント系が多いらしいんで」
神田「オマエの嫌いなやつな」
安齋「しっかり自分、先頭立てるぐらい頑張りたいです」

―どういう活躍をイメージしていますか。
安齋「1年目とか2年目は出れないっていうのが、みんな思ってると思うんですけど、それはほんとに行ってみないとわかんないんですけど、僕は自信しかないので、自信持ってやっていかないと多分無理だと思うんで、1年目から結果残せる選手になりたいです」

―最後に、お互いへのエールを。この選手権やその先の将来について。
神田「選手権は、彼のドリブル。ほんとに彼に渡せば、点は決めてくれると思うので、そこは期待しつつ、プロでもドリブルは通用すると思ってるので、ほんとに、頑張ってもらいたいです」
安齋「選手権は、神田君が全部ストップしてくれて、僕がドリブルミスっても、全部、後ろで止めてくれると思ってるんで、気軽っていうか、彼を信じてドリブルして点取りたいですし。大学行っても神田はもうほんとに1年目から全然守備でも通用すると思うんで、まあ4年後自分を止めれる選手になってくれればなって思ってます」
神田「頑張ります。4年後止めれるように」



(取材・文 吉田太郎)

●第102回全国高校サッカー選手権特集
吉田太郎
Text by 吉田太郎

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