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なでしこジャパン 帰国会見 佐々木監督コメント

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 ロンドン五輪で日本サッカー史上初となる銀メダルを獲得した日本女子代表(なでしこジャパン)は11日、日本に帰国し、千葉県内で帰国会見を行った。

以下、佐々木監督のコメント

佐々木則夫監督
―空港に多くのサポーターが駆けつけたが?
「多くのみなさんに出迎えていただいて…。現地にいると、そんなに盛り上がっているというか、これだけの人たちが注目してくれるか分からない。成田の玄関を出ると、なんとなく雰囲気がポンと伝わってくる。本当にありがたいですし、選手たちのやってきた業績も本当に素晴らしいものだったと思います」
―あらためて、この大会を振り返ると?
「昨年のW杯も日本で放映してもらい、みなさんに認知していただけました。あの大会も、あんなに素晴らしい大会になるとは思っていなかったのですが、女子サッカーには五輪から五輪というのが一つの節目というイメージがあります。僕も監督に就任した中で、まずは北京のベスト4を目指しました。当時はメダルというのはプラスアルファだったのですが、その時に4位になった悔しさが僕自身にもあって、もう一回ロンドンを目指してやろうということで、選手たちと二人三脚でやってきました。今回、金メダルには届きませんでしたが、この選手たちと北京を終わってから一緒に、成長しながらやってこれたということを含めて達成感もあります。選手、スタッフを含めて、一つのサイクルの中で良くやってくれた。そこでふと力が抜けている状態で、次は、ということはまだ考えられません。一つ仕事を成し遂げた安ど感はありますね」
―プロセスを踏んで、やりきれなかったことは?
「W杯で優勝できたので、強豪国と常にできる環境が整いました。この大会だけでなく親善試合も含めて、強豪国とやって成長する割合、今回の18人だけでなく、複数の選手が経験できたのは成長につながったと思います。ただ、個の力を上げるという意味では、もっとクラブ、本人たちともっと吟味して、個の質を上げる必要があると感じます。代表クラスの選手になってからも、やれれば良かったかなと思います。そのほかの時間やスケジュールは問題なかった。大会まで、とにかくキャンプを長くやればいいというわけではないので。先月の9月からできたことで問題はありませんでした」
―なでしこの監督に就任した06年から各国ともに進歩したように感じるが?
「親善試合にしても、デンマーク、ノルウェーというチームは、僕が就任する前はどちらかというと、蹴って走って当たってというフィジカルで勝つスタイルでやっていました。そういうチームがベスト4に君臨していました。そこは、北京五輪のわれわれのゲームがセンセーショナルだったと思います。『なでしこの今の戦い方は、我々が学ばないといけない』とアメリカの監督もコメントしてくれましたが、あそこから変わりつつあると思います。ボールを動かす、スキルを重んじるとか。まだ各国、ノッキングを起こしていますが、デンマークやノルウェーを含めて、ああいうフィジカルの高い選手たちが、本当に組織的にスキルを重んじて組織的にやってきたら、どうするか。なでしこジャパンはスキルを重んじて、なでしこらしさを構築する。(周りが)上がれば(なでしこも)上がってくる。そういう中で、女子サッカーもスペクタクルで組織的に、男子化していくことが間違いないと思います」
―若い力をどう鍛える?
「北京以降から若い選手にそういうことを狙いとして、育成している。今のなでしこの選手たちよりも、状況判断、スキルの質を上げるのはユース年代。それはこれから始まるU-20W杯でも表現される。それが次のなでしこのバロメーターになってくる。選手たちがどれだけできるのか、それだけ僕も注目しています」
―未来の目指す戦いのひな型は今回のアメリカ戦で示せた?
「そうですね。ただ、本当にまだ点数を先に入れた、入れないで、相手の戦い方が変わってきます。それの対応という意味では、まだまだ自分たちのベースですべてを回避できるところまでには至っていない。これから技術、判断をもっとレベルアップしていけば、ああいった前に前に積極的に来られたときも、そこをヒラリヒラリと対応できるようになる。そうすれば、もっとベースのアベレージがアップできる。そこは申し訳ないですが、まだ今のなでしこの選手が変化させるには時間がかかる。ある意味、自分たちのベースになれば非常に良いサッカーができることは間違いない」
―アメリカはポゼッションに舵をきり、リアクションに変えて金を取った?
「割合的には、そういう変化せざるをえない。もっともっとボールを動かしたトレーニングをしつつも、やはりこの大会になったときは自分たちの高さ、スピードを生かすためには、もっと手間をかけないで、人数を掛けないでやった方がアベレージが出る。よく高校サッカー選手権でポゼッションを練習しているけど、一発勝負のトーナメントで、急にそういう戦い方に変える所がありますよね。そういったところとは、ちょっと似ていると思います。でも、我々は申し訳ないけど、そういうことができない。そういうタイプの選手がちょっといないので」
―今後、監督自身は?
「こういった僕の感じたことを、まずは協会を含めて、女子サッカーに提言することが大事な次の仕事だと思います。あと、その先のことはまだ考えていません」
―提言というのは、何かしらの立場について?
「いえ。今の立場で十分に伝えることはあるので。その後、上田委員長をどかせて『オレが委員長をやる!』というのは違いますからね。僕を監督にしてくれたのは上田さんですからね」
―9月以降、監督職を続投する意思は?
「数パーセントあるんじゃないですか。それはまだわからないので。僕も、まだそこを切り替えられるところまでに至っていないし、協会も次のステップと考えているかもしれません。大会中に協会と内々でそんな話は、絶対にしていません」
―決断を下すポイントは?
「いろんなことがあるので一つでは言えませんが、将来のなでしこを考えることが一番のベースです」
―今やりたいことはありますか?
「妻とおいしい刺身をつまみながら、一杯やりたいですね。(ロンドンに)応援には来てもらったのですが、そういう場は持てなかったので。ロンドンの刺身は食べない方がいいと言われたので(笑)」

(取材 河合拓)

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