beacon

U-19日本代表に唯一の飛び級招集!!「この何カ月かで一気に成長できた」大分17歳MF保田堅心が語った“キャリアの転機”

このエントリーをはてなブックマークに追加

大分トリニータMF保田堅心

 17歳にしてJ2リーグで出場機会を重ねる大分トリニータMF保田堅心が今月、“飛び級”でのU-19日本代表入りを果たした。生まれ故郷の福岡で技術を養い、中学日本一世代の鳥栖で鍛えられ、大分で飛躍を遂げた若きボランチ。「小さい頃からずっと海外を目標にしてきた」という大志を抱き、世界につながる舞台に挑もうとしている。

 2003年以降に生まれた選手が対象のU-19日本代表は、来年初夏にインドネシアで行われるU-20ワールドカップを目指すチーム。今月10〜19日、ラオスで行われるU-20W杯の1次予選にあたるAFC U19アジア杯予選(U-20W杯の1次予選)に挑む。そんな中、保田は05年早生まれで唯一の“飛び級”選出。次回大会の出場資格も持つが、早々に世界へとアピールするチャンスを掴んだ。

 保田は高校3年生になった今季、大分のトップチームでJ2リーグ戦8試合(うち7試合が先発)に出場。J1昇格争いを繰り広げるチームの中で一定の地位を築いている。「本当にすごい雰囲気の中、1試合1試合、重い試合を戦っている。ロッカールームの雰囲気もすごいものがあるし、この年齢でスタメンで経験できているのはすごい経験値になっている。でも出ているからには年齢は関係ないし、勝たないといけない。その重圧で戦えているのはすごく嬉しい」。しびれる日々に充実感を感じながら過ごしているようだ。

 もっとも過去を振り返れば、現状の立場は想像できていなかったという。鳥栖U-15ではU-18への昇格が「保留」され、「(鳥栖の)外部から代表クラスの選手が来るのが分かっていたし、いまの自分ならここでやるより(移籍したほうが)いいと思った」と他クラブでの挑戦を決断。当時率いていた片野坂知宏監督のサッカーに心を掴まれ、「自分に一番合うのはどこかと探した時、ここでしたい、ここが合うなと思った」と大分にやってきた。

 1年目はプリンスリーグで活動するAチームでの出場機会を得られず、県リーグで戦うBチームでの活動が中心。だが、そこでの出会いが転機となったという。「その代の3年生が強かったので、なかなかファーストで出られなかったけど、セカンドでテツさんに戦うところのベースを叩き込まれてそこで1年やれたのが良かった」。保田が感謝したのは、大分U-18でMF岩田智輝(横浜FM)らを育てた山崎哲也コーチ(現福岡U-18監督)の存在だった。

「テツさんに鍛えられて、2年目からスタメンを取れるようになった」。

 そんな保田は2年時もトップチーム帯同時は「全然感触もつかめず、何もできずにという感じだった」というが、8月の天皇杯4回戦・群馬戦でデビュー。最上級生となった今季はルヴァン杯でのベンチ入りを続け、「少しずつ慣れも出てきて、やれるなと思った。3年に上がってからのこの何か月かで一気に成長できた」と徐々に自信を重ねていった。

 そうして迎えた4月23日、ルヴァン杯の鹿島戦で終了間際にJリーグデビューを果たすと、5月18日の同C大阪戦では初先発。J1クラブ相手に3-3の接戦を演じたチームの攻守の中心として、後半アディショナルタイムまでプレーした。

 その後、J2リーグ戦や天皇杯でも出番を掴み、先発したリーグ戦では5勝1分1敗の好成績をマーク。「ルヴァン杯では消化試合だったけどチャンスをもらえて、J1相手にやれたのがアピールになったと思う。いまは自分よりうまいボランチは大分にもいる中で、監督が求めている守備の部分、走力が自分には出せているのかなと思う」。そんなパフォーマンスが協会スタッフの目に留まり、8月にU-19日本代表候補として初の世代別代表に上り詰めた。

 チームを離れる前には大分の下平隆宏監督から「チームとしては痛いが、成長して戻ってこい」と伝えられてたという保田。そんな17歳について8月の候補合宿、今回のU20アジア杯予選で連続招集を決めた冨樫剛一監督は「チームの中心の場所でリズムを作ったり、ゲームをコントロールするところで、彼の正確な技術と判断であったり、トップチームでレギュラーを取って出場している時間、日々戦っている基準がこのU-19代表に必要だなと考えた」と高評価を口にする。

 一方、現状のチームの仕上がりを「ミルフィーユの4層くらい」とユニークに表現をしていた指揮官だが、招集歴の浅さゆえに「まだまだミルフィーユの一層も彼は持っていない。生地を焼いている、かき混ぜている段階」と指摘。「よりミーティングであったり、普段のコミュニケーションから『自分はこういうことができるからこうしてほしい、お前はどうしたいの?』というところで、もっと自分をアピールしてほしい」とさらなる期待も語っていた。

 厳しい言葉のように思えるが、そうした現状認識は保田自身も同じだった。「自分の良さをまだ全部わかってもらえてないと思うし、自分も仲間のことを分かりきっていないので、出すタイミングにズレはある」。ボランチというポジションの特性上、周囲との連係連動は不可欠。「やること自体はミーティングで頭を整理してやれている。あとは細かいところ」と手応えものぞかせつつ、順応への取り組みを続けているようだ。

 また自身のスキルについても「若くても安定感がないとこれから通用していかない。また安定感を出す中でも後ろばかりにならず、前を向いてどんどん飛び出していくところも出していけるようにしたい」と向上心は尽きない。同じポジションのMFセルヒオ・ブスケツ(バルセロナ)、MFロドリ(マンチェスター・C)、MFデクラン・ライス(ウエスト・ハム)のプレー動画を参考にしているといい、さまざまな観点から世界基準のプレーヤーに近づいていく構えだ。

「小さい頃から海外はずっと目標にしてやってきたのでそこを見ながらも、まずはチームで満足してしまったら成長が止まってしまうと思うし、いまもスタメンが確定しているわけではない。まだそんなレベルではない。チームで試合に出続けられるようにアピールして、チームで結果を出して、1〜2年で海外に行けたら」

 言葉の端々から大きな野心を感じさせるが、このビジョンを現実のものとするためには国際大会は格好の機会。「たくさんの人が観に来るし、W杯は注目される大会。また自分は早生まれでアドバンテージがある。名簿を見て年齢を見たときにそれだけで注目されるアドバンテージがあるので、まずはメンバーに入れるように。そしてその中で目立って注目されれば」。将来性豊かな17歳は着実な未来図を描き、アジアの舞台に挑む。

(取材・文 竹内達也)



●【特設】AFC U20アジアカップウズベキスタン2023予選特集

TOP