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「警戒されるのは歓迎だった」FW道脇豊(熊本)が日韓戦で見せた確かな異能

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後半45+6分、U-17日本代表FW道脇豊(熊本)がチーム3点目のゴール

[7.2 AFC U17アジアカップ決勝 U-17日本 3-0 U-17韓国]

 2日、AFC U17アジアカップ決勝。日韓戦となったこのファイナルは異様な雰囲気に包まれていた。

「スタジアムの雰囲気が本当に凄くて、『決勝だとこんな人が来るのか』と思ったし、韓国の声援も本当に凄かった。ブーイングとかもされたんですけど、逆に燃えていましたし、楽しんじゃいました」

 FW道脇豊(熊本)は熱気に包まれた決勝のムードについて、そう言って笑みを浮かべて振り返る。韓国側の道脇に対する警戒は厳重そのもの。基本的にはこれまでと同じような戦術を採用していた韓国だが、道脇に対してだけは特別な警戒を敷いていた。

「クロスが上がるときもボールを観ることなく自分のマークに付いてきたし、ボールのないところでもアタックしてきていた。だから審判からよく見えなかったようなときでも『いま服を引っ張られていたよ』といったことは伝えるようにした。だから、そのあとはしっかり観てもらえたと思う」

 力強い突破を見せて前半13分にイエローカードを誘っていた道脇は、その後も意欲的なシュートを見せるなど相手の警戒心を高めるプレーを続け、前半44分に過剰な警戒モードに入ったDFコ・ジョンヒョンの不用意なファウルを誘い、2度目の警告による退場へと追い込んでみせた。

「最初から『だいぶ警戒されてるなあ』という感じはしていたんですけど、その警戒を逆用するということもできたと思う」

 オフ・ザ・ボールの動きに長ける道脇に密着マークを試みた相手の姿勢を逆手に。そして、ファウルを引き出して退場に追い込んだ形だが、そもそも道脇の能力が韓国DFに恐怖心を抱かせていたからこそだった。

「3点は取れたと思う」と振り返ったように、韓国側を恐れさせるシュートまでは持ち込み続けた試合だったが、なかなかゴールネットは揺らせなかった。「シュートの冷静さが足りない。そこは本当に自分の課題です」と語ったように、試合全体としては悔いもあったようだが、後半アディショナルタイムの一発は見事に仕留めてみせた。

「だいぶ疲れて足にも来ていたんですけど、佐藤龍之介(FC東京U-18)から本当に良いパスが来たし、あの場面は冷静にDFも見えていた。ファーに打っても入らないからニアに強いシュートを打つしかないと判断できたのも良かったと思います。コースは消されていたし、本当はもっとニアハイに打ち込みたかったのでコースは甘くなりましたが、強く打ったことでゴールになった」

 強烈な右足シュートが相手GKを打ち破り、ゴールへと転がり込む。大会4点目となる得点は、日本のゴールラッシュのラストを飾ることとなった。

 試合後は得点王を逃した悔しさも口にしつつ、「名和田我空(神村学園高)が決めたFKは自分が奪ったものなので、0.5点ずつって感じじゃないですか?」と冗談も飛ばし、世界大会でのさらなる爆発も誓った。

 そのためのカギは「リーグ戦で点を取りたい」ということ。これまでは「いま思うと、Jリーグでは『早く点を決めたい決めたい』と思い過ぎていたと思う。シュートの技術には自信があるのだから、もっと冷静に試合へ入って、落ち着いてシュートへいくようにしたい」と、大会を通じて得た一つのテーマも熊本へ持ち帰る。その学びが結果に転換される日も、そう遠くはなさそうだ。

(取材・文 川端暁彦)
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