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アジア杯26人に滑り込んだDF渡辺剛、クラブは合流に難色も「でも自分は代表でやりたいと」

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日本代表DF渡辺剛(ゲント)

 追加招集で日本代表復帰を果たした昨年11月の北中米W杯アジア2次予選を経て、DF渡辺剛(ゲント)が26人のアジアカップメンバーに滑り込んだ。「自分自身、失うものは何もないので全部出したい」。カタール・ドーハで報道陣の取材に応じた7日、貴重なアピールチャンスに向けて熱く決意を語った。

 渡辺は2019年12月、東京五輪世代を中心に国内組で構成されたEAFF E-1選手権でA代表デビュー。その後は4年弱にわたって招集機会がなかったが、21年末にFC東京からベルギー・コルトレイクに渡ると、ベルギーリーグで結果を出し続けた結果、今季は名門ゲントからのオファーを勝ち取り、欧州組としてA代表にも返り咲いた。

 11月の北中米W杯アジア2次予選・ミャンマー戦(○5-0)では4年ぶりにA代表のピッチを経験。元日に行われたTOYO TIRES CUPのタイ戦は招集されなかったが、これはチーム事情による招集外だったという。ウインターブレイクのあるベルギー勢は渡辺以外の3選手がタイ戦に帯同していた中、それでもチームから引き留められたのは戦力として欠かせない選手になっていたからこそだ。

「自分自身も元日の試合も行きたかったし、チーム事情もあって行けなかったけど……」(渡辺)。アジア杯は登録メンバーが当初の23人から26人に変更され、チャンスが拡大。これまで出場機会の多くなかった渡辺にも招集レターが届いた。クラブは合流に難色を示したそうだが、大陸大会は招集に応じるのが義務。渡辺もアジア杯でのプレーを熱望し、日本代表合流が許められるに至った。

「クラブからは行ってほしくないと言われていて、でも自分は代表でやりたいと思っていた。そこでクラブが認めてくれた、許してくれた部分もあったし、自分が行く分、クラブにいない分、代表で結果を出して、クラブに帰った時もいいパフォーマンスができるよう代表で自分がやってきたことを出せればいいなと思う」。送り出してくれたクラブの思いも背負って戦っていく構えだ。

 11月は追加招集での代表入りだったが、いまや代表からもクラブからも求められる存在になった。「やっとスタートラインに立てたなという感じ。自分の年代の代表選手も多いし、年下の選手も多いし、最前線でいろんな経験をして代表に残っていると思う。自分はまだチャレンジャーとしての立ち位置だと思うので、ここで結果を出してこれからずっと選んでもらえるような活躍ができれば」。充実感をにじませつつも、目の前の大役に気を引き締める。

 代表の舞台で見せたいのは自身の持ち味であり、ベルギーでのさらなる成長だ。「ヘディングとか対人は日本でも負けないことを意識してやってきたけど、ベルギーに来てからチームをまとめながら組織として守ったり、最後の部分で自分が守れるような選手になれてきたと思う。そういうところも自信があるので出していけたら」と意気込む。

 また欧州での要求を受け、攻撃面の強化にも取り組んできた自負がある。

 現在の日本代表CBを担うDF冨安健洋、DF板倉滉はビルドアップでも違いを見せられるコンビ。「守備には自信があるし、劣っているとは思っていない。そこでも戦わないといけないと思うけど、プラスアルファして攻撃を求められると思っていて、選ばれていない時の理由はそれもあったと思う。ゲントに行って攻撃も求められるチームになったので、自分の中でも自信を持ってやれているし、それがうまく出せたらと思う」。世界トップレベルで活躍する同世代に後れを取るつもりはない。

 11月シリーズでは、クロス&シュートのメニューで右サイドバックのポジションも経験していた。人数バランスを踏まえた配置という意味合いもあったが、裏を返せばチャンスでもある。

「求められたところからどこでもやるし、DFラインをやっているのでSBがどうすればいいかはわかっている。経験していく上でも無駄なことではないし、求められたところでやるのがサッカー選手」。アジア杯のような短期決戦では、高さ対策でオプション起用される可能性も。「ヘディングも対人も自信を持ってやれているし、ベルギーでも負けていないので、逆にそういうチャンスをもらえたら面白い」と意欲を見せる。

 そうしたチャンスを広げるため、まずはチームとしての目標を追い求めていくつもりだ。アジア杯は「アジア人にとってビッグタイトルだし、日本代表としても大きい大会なので、そこに向けて準備してきた部分がある」と渡辺。「日本の国民としては優勝が絶対条件だと思うし、そこに貢献できるような選手が今の日本代表に必要だと思う。そうなれればいいかなと思います」とタイトル奪還を誓った。

(取材・文 竹内達也)

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竹内達也
Text by 竹内達也

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