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テーピングには「猶本光」「安藤梢」の名前…高橋はな、負傷離脱中の同僚に捧げる先制弾と五輪切符

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先制点を決めたDF高橋はな

[2.28 五輪アジア最終予選(女子)第2戦 日本 2-1 北朝鮮 国立]

 守っては3バックの一角で北朝鮮の攻撃を跳ね返し、攻めてはセットプレーから貴重な先制点を決めた。日本女子代表(なでしこジャパン)DF高橋はな(三菱重工浦和レッズレディース)が攻守に躍動し、パリ五輪出場権獲得に大きく貢献。「相手のエネルギーもすごかったけど、それを上回る気持ちの強さをプレーに出せた。一人ひとりが強い気持ちを持ってプレーしたのが今日の結果になった」と高らかに言った。

 先制点は前半26分に生まれた。DF北川ひかるが左足で蹴ったFKをDF熊谷紗希が競ってFW上野真実が頭で折り返し、FW田中美南がヘディングシュート。クロスバーに当たってこぼれてきたボールを高橋が左足で押し込んだ。FW出身選手らしいゴール前の嗅覚。「いいところにこぼれてきただけ。体で何が何でも押し込むと思って、どこに当たってもいいと思って押し込んだ」と相好を崩した。

 負けるわけにはいかない試合だった。1月20日に行われた皇后杯準決勝のサンフレッチェ広島レジーナ戦で浦和レッズレディースの同僚であるMF猶本光とFW安藤梢が立て続けに左膝前十字靭帯を損傷。ともに手術を受け、全治8~10か月と診断された。昨年の女子W杯でベスト8入りに貢献した猶本だが、今回のアジア最終予選だけでなく、パリ五輪本大会も絶望的という重傷だった。

「同じチームの2人が苦しいケガをしてしまった。2人が安心して戻って来られる状況にしておかなければならない。2人が頑張れるように私も一緒にサポートしていきたい」。そんな思いも込め、北朝鮮との試合前に「猶本光」「安藤梢」の名前をテーピングに書いてピッチに立った。

「復帰に対するエネルギーを出すことすら正直、少し難しいと思う。リハビリが始まったばかりなので、少しでも不安やストレスの部分で周りが助けてあげることが本人たちの復帰に対するモチベーションにもつながると思うので、私にできることはすべてやっていきたい」

 その思いがこの日の先制点につながった。チームは後半にMF藤野あおばの得点で2-0とリードを広げたものの、終盤に押し込まれた様子を踏まえると、前半の高橋のゴールは本当に価値が大きかった。

 これでパリ五輪出場権を獲得。「歴史をつないでくれた先輩たちがいたおかげで私たちの今があるので、少しでもその未来に貢献できたならうれしい。でも私はまだまだ。このままだとパリに行けないという危機感を持っているのでチームに戻ってしっかりやり直したい」とさらなる成長を誓った。

(取材・文 矢内由美子)
矢内由美子
Text by 矢内由美子

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