beacon

五輪出場の重圧と戦ったU-23日本代表「色んな経験が僕らを強くした」、再結束したパリ行き決定前夜のミーティング

このエントリーをはてなブックマークに追加

U-23日本代表

[4.29 AFC U23アジア杯準決勝 日本 2-0 イラク ドーハ]

 準決勝前日、今大会2度目の選手ミーティングが行われた。U-23日本代表キャプテンのMF藤田譲瑠チマ(シントトロイデン)は「そんなに重い感じではなく軽い感じ」と内情を明かす。「喋った人が次の人を指す感じ。そういった機会を設けられてよかった」と振り返った。

 準決勝でイラクを破り、8大会連続のオリンピック出場を決めた。ここまで5試合を終え、選手たちは着実に成長。藤田は「本当にいいチームになった」と手応えを語る。

「試合に出ている選手も、試合に出れなかった選手もベンチから大きい声を出してくれていた。ロッカールームでもいろんな声が飛び交っていた」

「特に自分中心というわけではない。そういうことができる選手が多く出てきた。そういう選手になってきたということが第一。そういう声かけができる選手がこのチームには多くいる」(藤田)

 グループリーグ第3節・韓国戦で今大会初黒星を喫した後、チームには嫌な雰囲気が漂った。それを払しょくしたのが、韓国戦翌日の夜に行われた選手だけのミーティング。キャプテン藤田、副キャプテンMF山本理仁(シントトロイデン)、自身の行動を悔いたGK小久保玲央ブライアン(ベンフィカ)、初戦で退場したDF西尾隆矢(C大阪)、不調に悩んだMF佐藤恵允(ブレーメン)といった面々が話を切り出し、チームは結束した。

 準々決勝は負けたらパリ五輪の道が途絶える戦いだった。選手たちは極度に緊張していたという。しかし選手ミーティングが功を奏し、準々決勝カタール戦は延長戦の末に勝利を手にした。

 藤田は「本当に負けたら何も残らないというのがカタール戦だった。それに関しては、自分自身本当に怖かった」と思い返す。山本も「カタール戦は全員がすごくプレッシャーを感じていた。本当に今まで感じたことのないものをみんなが感じていた」と本音を明かした。

 その経験をもとに、パリ五輪出場が懸かった準決勝イラク戦の前夜にも2度目のミーティングを開催した。理由のひとつは、準々決勝でカタールに勝ったところから改めて気を引き締めるため。もうひとつは、2年前のU23アジアカップで敗れたのが準決勝だったため。二の舞を踏まないためにも、チームは再結束を望んだ。

「今回提案したのは内野貴史」と藤田が語る。山本は「(高井)幸大であったり、セキ(関根大輝)も喋った。選手が思っていることを聞けたのは、チームとしてよかった」と意義を強調。「最後、藤尾(翔太)がもうカタール戦の緊張感は絶対味わいたくないからと話をしていた。みんなで『間違いない』って。実際にこうやって勝てたのでよかった」(山本)。ミーティングはあくまで軽い雰囲気。だが本音を話したことで、全員の意識が統一されて気が引き締まった。

 2022年3月の初招集から約2年、チームは第一の目的であるパリ五輪出場を果たした。発足メンバーである山本は今大会で「(チームが)一試合一試合ごとに成長していると僕も感じる」と笑顔を見せた。

「初戦から苦しい戦いをして韓国に負けた。そのときは本当に僕らも苦しかった。大丈夫大丈夫とは言いつつ、不安になる僕らもいた。そういったことを経て、今このチームがある。そういう経験も無駄ではなかったんだなという風に思える。色んな経験が僕らを強くしたんだなって」

 2年前、U-21日本代表としてU23アジア杯を戦い、準決勝ではウズベキスタンに敗れた。5月3日の決勝で相まみえるのは、そのときのメンバーも残るウズベキスタンだ。当時を知る藤田は「もうひとつ締めて、チームとして優勝を持ち帰れたらいい」と気持ちを切り替える。同じく山本も「気持ちよく決勝で戦って、勝って終わりたい」と力を込めた。パリ五輪の切符を握りしめ、有終の美を飾るつもりだ。

(取材・文 石川祐介)

●AFC U23アジアカップ2024特集
●パリオリンピック(パリ五輪)特集
石川祐介
Text by 石川祐介

TOP