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大宮を首位から引きずりおろした川崎F、大久保「気持ちいい」

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[7.17 J1第17節 大宮2-3川崎F NACK]

 執念で決勝点をもぎ取った。2-2で迎えた試合終盤、猛攻に出た川崎フロンターレ。後半ロスタイム4分、左サイドに流れたボールをFW大久保嘉人が懸命に追い、タッチライン際で追いついた。ゴール前に山なりのクロスを送り、DF中澤聡太がヘディングで折り返したボールをGKがパンチング。エリア内にこぼれたボールを拾ったのも大久保だった。

「ダイレクトで打とうかと思ったけど、あれだけDFがいたら入らないと思った。落ち着いたら中に3人ぐらいフリーで見えたので」。トラップから冷静にマイナスに折り返し、FWレナトが左足でシュート。これがゴール前にカバーに入っていたMF青木拓矢の右手に当たった。

 ハンドで青木は一発退場となり、PKを獲得。キッカーを務めたのはレナトだった。前節・浦和戦(4-0)ではMF中村憲剛が獲得したPKを大久保が蹴った。史上11人目となるJ1通算100ゴールがかかっていたこともあり、自らキッカーを直訴した。しかし、この日はすんなりとレナトに譲った。「今日はレナトでしょ。あそこで俺が蹴ったら、レナトとの関係が悪くなる」。大久保はそう言って白い歯をこぼした。

 レナトがしっかりとPKを決め、3-2。直後にタイムアップのホイッスルが鳴る劇的勝利となったが、土壇場の決勝点に最も安堵したのは大久保だったかもしれない。PKを獲得する1分前のシーン。右FKからセカンドボールを中澤がつなぎ、ゴール前でフリーになったDF伊藤宏樹がシュートを打った。ところが、ボールは目の前の大久保に当たり、ゴールならず。「終わったと思った。ツイているときは自分に当たって入るのに」。まさかの“シュートブロック”。引き分けを覚悟した瞬間だった。

「(伊藤)宏樹さんじゃないでしょ、ヒーローになるのは」。試合後は冗談交じりに笑ったが、口が滑らかになるのも勝ったからだろう。1-2で迎えた後半18分には中村のスルーパスに反応し、左足で同点弾。「狙いどおり、イメージどおりだった」という鮮やかな一撃が2戦連発の今季12得点目となり、逆転劇につなげた。「最高の勝ち方。気持ちいいです」。大宮を首位から引きずりおろし、浦和戦に続いて上位勢を連破した。順位は7位のまま変わらなかったが、首位に立った広島との勝ち点差は「8」。後半戦へ弾みを付ける2連勝となったのは間違いない。

(取材・文 西山紘平)

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