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金沢DF長峰祐斗が立ち向かった“2年目の難しさ”「彼と比べたら自分はまだまだ」川崎Fで戦う同期の存在も刺激に

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ツエーゲン金沢DF長峰祐斗

 特別指定選手としてJ2リーグ戦15試合に出場した大学4年時、堂々の主力としてシーズンを戦い抜いたプロ1年目、レギュラー争いに身を置く形となったプロ2年目——。ツエーゲン金沢DF長峰祐斗はすべての経験を糧にし、プロサッカー選手としてのキャリアを歩んでいこうとしている。

 金沢は10月22日のJ2第39節で山形に0-1で敗れ、降格圏の21位以下でのフィニッシュが確定。来季のJ3リーグ降格が決定的となった。長峰は序盤のレギュラー定着からフル稼働した昨季から一転、今季はDFレオ・バイーアとのポジション争いで26試合の出場にとどまっていた中、責任を重く受け止めていた。

「なんとかポジティブに捉えるなら、そういう経験はなかなかできないと思うけど、自分が在籍したクラブがJ3に落ちるというのは心が痛い。自分を取ってくれたクラブに恩を感じているし、サポーターにも申し訳ない気持ちが大きい」。現時点で来季の去就が決まっているわけではない。それでも「1年で復帰できるようにやっていきたい」という言葉が自然と飛び出すほどには、大きな悔しさを感じていた。

 そうして迎えた前節の町田戦。チームは「振り切って試合に臨めた」と前向きな側面もあったものの、シーズンを通じての悪癖からは抜け出せず、開始早々の3分に失点を喫した。

「入りは簡単にと声をかけていて、完全に崩されたわけじゃなかったけど、群馬戦や山口戦と同じように運の悪い形で失点してしまった」。その後は「自分たちのペースでボールを運べたし、ゴールに迫ることができた」と手応えを得ていただけに、悔やみ切れない試合の入りだった。

 また長峰自身は3試合ぶりの出場となったが、攻撃に関わりながらも決定的な仕事ができず、首位を相手に悔しいパフォーマンスに終わった。「いまはボールロストのところが目立ってしまうと思っている。でもそれを怖がると自分の良さが活きないし、自分の良さをアグレッシブに積極的に出していけたらと思っている」。ある意味では、そうした今季の葛藤を象徴するような内容となった。

 長峰は拓殖大4年時の21年9月、特別指定選手としてJリーグデビュー。15試合の経験を積むと、プロ1年目となった昨季第6節から左SBの主力に定着し、36試合に出場した。「試合にずっと出し続けてもらって、その中で変化していった。練習試合ではなく公式戦でないと体験できないので、大学生の時に比べても成長できているという実感がある」。大きな手応えの残る1年となった。

 ところが今季は“2年目の壁”にぶつかった。昨季からの成長を追い求めるゆえか、立場の変化に伴う環境の変化か、初めて経験するポジション争いか、要因はさまざまに挙げられるが、アシスト数は昨季の5から0に激減。シーズン序盤の春先、そして秋口にポジションを失う時期も経験した。

 2年目で突きつけられた初めての苦境。「シーズン初めからそうなることを分かっていて、その中でいかに腐らずできるかを今年通じてやり切ろうと思っていた。その中でレギュラーを奪われて、でもこうやって使ってもらえて、やり続けてきてよかったなとは思うけど、結果につながらなかったことが残念」。乗り越えようとしてきた過程には収穫もあったが、目の前の結果に葛藤が残るシーズンとなった。

 J1リーグではかつての同期も2年目の壁にぶつかっていた。川崎FのDF佐々木旭は埼玉平成高の同期。全国大会に出場するような有名校ではない高校から1年に2人の左SBがプロ入りするのは異例だが、「自分は1〜2年生からCBで出ていて、彼はずっと中盤で、DFはやっていなかったけど、大学でお互いに左SBになって関東2部で対峙した」という背景で今に至っている。

 長峰にとって「高校の時からずっと上手かった」という佐々木は先を行く存在。「彼とは大学時代から連絡を取っていて、どこからオファーあるというのを聞いていて刺激をもらっていたし、もともと川崎に行きたいと言っていたので、行きたいクラブに行けてすごいなと思った。負けじと自分も追いつき追い越せで高みを目指してやっていきたいと思っていたし、いまもそう思っています」。シーズン中は互いにプロ選手として連絡を取ることは多くないそうだが、「お互いに2年目の難しさを感じているのかなと思う」とシンパシーを持ちながら奮起の活力にしていたようだ。

 そして長峰は「彼と比べたら自分はまだまだなので、同じ舞台で戦えるようになりたい」と力を込める。

 悔いの残るシーズンではあったが、プロとして生きるすべは「2年目で明確になってきた」と長峰。「守備の面でインターセプトは2年目になって手応えを感じているし、90分間通して走り続けることもできるし、ロングスローもある。あとはもっとクロスの質を上げていきたい」と自身の現状を冷静に見つめつつ、さらなる成長を遂げようとしている。

 上を見すぎて焦るつもりはない。「まずは足元を見つつ、上も見つつ、着実に。自分はそんなにエリートな選手じゃないので、着実に一歩ずつ成長していきたい」。カテゴリが変わるとなれば、大半の選手が去就未定となるものだが、いまは残りの2試合だけを見据えて「サポーターの皆さんも一緒に戦ってくれているし、あと2試合はホームなので絶対に勝たないといけない」と意気込んでいる。

 そして来季は自身の置かれた場所で再び努力を重ねていく構えだ。「金沢でプレーできるのであれば1年で絶対にJ2に戻したい。もし金沢でなければ、絶対に試合に絡まないとサッカー選手としての価値が落ちてしまうので、残り2試合も含めてサッカー選手としての価値を上げられるように、着実に成長できるように頑張っていきたいです」。

(取材・文 竹内達也)
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Text by 竹内達也

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