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パリ五輪世代“最激戦区”GKポジションを狙う…アジア大会で守護神務めた栃木GK藤田和輝は「試合に出ることにこだわり続けたい」

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GK藤田和輝

[11.5 J2第41節 東京V 1-0 栃木 味スタ]

 パリオリンピック世代が誇るGK陣の一人として、さらなる活躍を誓った。栃木SCのGK藤田和輝はU-22日本代表でのアジア競技大会から帰還後、再びゴールを守り続ける。チームは4日の他クラブの結果でJ2残留が決定。それでも5日の東京ヴェルディ戦では、数的優位に立ちながら敗戦した。「これが栃木の力。本当に改善しようとしているのか、一人ひとりが向き合わないと、栃木SCというクラブがもっと上に行けない。そこは変わっていかないといけない」と悔しさをにじませた。

 前日にJ3降格圏内のクラブが確定したため、自動的に栃木のJ2残留が決定した。その流れで臨んだ翌5日の東京V戦だった。「残留が決まっている中で難しい試合ではありましたが、みんなで勝ちに行くつもりで前半をいい形で終えられた」(藤田)。前半終了間際には東京Vに退場者が出て数的優位に立った。しかし、後半で栃木の時間帯はあったものの、チャンスを決め切れず。後半37分に東京VにFKで決勝ゴールを決められた。

 東京VのレフティーMF中原輝による華麗なFKを浴びた。PA右寄りのライン手前という、左利きキッカーからはゴール左右どちらも狙える位置。GKにとっては判断が難しいところで、藤田もゴール隅を狙ったボールに飛びついたが、その手は届かなかった。「あの距離なので僕が止めなきゃいけないという、僕の力不足の失点。そこは自分が変わらなければいけない」と肩を落とした。

 数的優位に立った中での敗戦には反省を述べる。「チーム全体として勝利に対する執念深さ、勝ちに対する貪欲さというのを出していかないと、いまの東京ヴェルディさんみたいにもっと上の順位に行けない。一人ひとりが勝ちたいという、試合を通して成長したいという風に思っていかないと良くなっていかない。負けたり引き分けたりするたびに思っているところ」。残留が決まったとはいえ、チームの現状に危機感を募らせた。

 今シーズンは飛躍の年となった。アルビレックス新潟の育成組織出身で、2019年にトップチームに昇格。20シーズンは出場機会を掴んだものの、翌シーズンは激しいレギュラー争いで2試合の出場に留まる。22シーズンから栃木にレンタルされると、その年は控えに回っていたが、今シーズンは開幕から正守護神に定着。第41節を終えて31試合に出場した。

 藤田は今シーズンについて「シーズン通して試合に出ることができて、充実したシーズンになった。これをスタンダードに、これくらいの試合数で出ることを来年も意識する」と語る。安定して試合に出場することができたプロ5年目のシーズンも最終節を残すのみ。「若い若いというのもそろそろなくなる。いかに多く試合をして、それを修正して、自分自身が成長していくかというところにもっとフォーカスして、クラブを変えていけるような、もっと上に行かせられるような力を僕自身もっとつけなきゃいけない」と今後を見据えていた。

 2001年生まれ以降のパリ五輪世代の一人だ。この世代はGKの層が分厚く、A代表で経験を積み始めた鈴木彩艶(シントトロイデン)と、早くから海外で研鑽を積む小久保玲央ブライアン(ベンフィカ)、J1リーグで戦う佐々木雅士(柏)や野澤大志ブランドン(FC東京)が名を連ねる。常連組はこの4名が招集されがちだが、藤田は今春に大岩剛監督体制で初めて合宿に招集されると、9月10月のアジア大会に正規メンバーとして初招集。6試合中5試合で正守護神としてゴールを守った。

 アジア大会から時間が経ち、改めて日の丸を背負えた要因を分析する。「A代表に行く彩艶選手、海外でプレーするブライアン選手、J1でプレーするブランドン選手。みんな試合に出ている選手が多い。そこに食っていかないとダメ」。そのうえで、自身が再び代表に呼ばれるために2つのポイントを挙げる。ひとつは「試合に出ることが一番大事だし、出続けてよりいいパフォーマンスを出せば、(代表招集の)チャンスも出てくる。まずピッチに立ってアピールをすることを続けないと、そこに入っていけない。試合に出ることにこだわり続けたい」。もうひとつは、栃木の順位を向上させることだ。

「自分だけが評価されて選ばれるものではない。いま栃木がこの順位(18位)にいるが、自分が出てもっと上の順位に行かせられればアピールにもなる」

 代表活動では、今シーズンようやくスタートラインに立った。五輪をめぐる戦いまで残された時間は少ないが、「自クラブのためにひとつでも力になれるようなパフォーマンスを出せば、おのずと(代表に)つながってくる。もっともっと勝てるようにやっていけたらと思っています」。し烈なパリ五輪世代の正守護神争いに向け、ラストスパートをかけるつもりだ。

(取材・文 石川祐介)
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石川祐介
Text by 石川祐介

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