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昨季J1最多失点からの変貌…G大阪の堅守支えるGK一森純が感じた「全員が変わろうとしている空気」

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GK一森純

[4.20 J1第9節 浦和 0-1 G大阪 埼玉]

 浦和レッズの敵地でシュート数は7対15、ボール保持率では40:60と劣勢が続いたガンバ大阪だったが、後半33分にカウンターのチャンスをFW坂本一彩が決め切り、貴重な勝ち点3を掴み取った。

 試合後、ダニエル・ポヤトス監督は「たしかにポゼッションは低く、自分にとって好まない展開になったが、相手を考えるとそれも起こりうることだった」と浦和への称賛を交えながら試合を振り返りつつ、「今日はしっかり耐えるところを耐えられたのがすごく良かった」と勝因を語った。

 試合序盤はボールを握られ続け、主に右サイドからの前進を何度も許したG大阪。この日は4-3-3の浦和に対し、4-4-2をベースとした布陣でプレスを試みたが、2トップとダブルボランチの間を巧みに取ってくるMFグスタフソンに時間を与えてしまったことが一つの要因だった。

 それでも時間が経つにつれて、トップ下の坂本が戻ってグスタフソンをケアしたり、ダブルボランチのMFダワンとMF鈴木徳真が次のパスコースを削ったりすることで、良い形で前進を許す場面は少なくなった。GK一森純によると「ゴールキックになった瞬間やCKになった瞬間に一彩とか前線の選手と喋ったり、CBとも情報を共有していた」といい、細かい修正ができていたようだ。

「ガンバとしては前からボールを取って、できるだけ高い位置で奪ってゴールに直結させたいなか、浦和のアンカーの選手(グスタフソン)がうまく動いて外してきて、そこから良いボールを供給されていた。試合途中で後ろ(の選手)はコンパクトにして、前(の選手)をちょっと下げ気味にして、あそこのスペースを埋めて受け渡しで対応できるようにしようと話した。そこからはボールを持たれていたけど、決定機につながるようなシーンはあまりなかった」(一森)

 そうした結果、前半は0-0で締めることに成功。一森は「正直な話、もっと早く修正したかったのはある」と振り返りつつも、「ハーフタイムに監督の指示まで待っていたら試合が終わってしまう。考えられる選手、喋れる選手が中に数多くいるので、できるだけ早く修正したかった。うまくしびれを切らさず、ゼロで耐えられたのは良かった」と手応えを口にした。

 また後半の立ち上がりからはサイドに広く幅を取ってきた相手に対し、中盤の守備が間に合わずに押し込まれる場面が増加。後半10分にはDF渡邊凌磨のクロスをMF伊藤敦樹にヘディングで合わせられ、結果的には右ポストに助けられたものの、あわや失点というピンチを作られた。

 だが、このようなピンチがその後続くことはなく、ここでもピッチ上の修正が一定の成果を収めた。

 一森は「あれが入らなくて本当に良かった」とピンチの場面には課題を指摘しつつも、「4バックなのでDFラインが横幅を守る上でスライドしないといけないけど、浦和のスタジアムの雰囲気とかで圧力を感じて、なかなかSBが出ていくシーンがなかった。もっと勇気を持ってボールホルダーにかけないと、中に枚数がいてもああいう形でポストに当てられたシーンみたいに(浦和には)精度と質がある。ボールホルダーにプレッシャーに行ってほしいと伝えた」と狙いを明かした。

 昨季は34試合制でリーグワーストタイの61失点を喫し、16位に沈んだG大阪だったが、今季はここまで9試合でリーグベスト4タイの7失点。順位も暫定5位につけており、失点の少なさがチームの浮上を支えている。

 その変化をもたらしているのは、今季期限付き移籍から復帰した一森や、名古屋から加入したDF中谷進之介ら新加入選手の存在だ。もっとも、ただ単に質の高い選手が入ってきたというだけでなく、彼らが既存の選手と良好なコミュニケーションが取れていることも大きそうだ。

 新加入選手や昨季出番の少なかった若手選手が多く名を連ねるメンバー構成ながら、開幕から堅守が続いている要因について一森は次のように語る。

「シーズンが始まった当初から『昨年のサッカーではダメ』という認識が既存の選手にあった中、それにプラスして僕らが入ってきて、全員が変わろうとしている空気の中で、キャンプから厳しい要求もしてきた」

 それでも一森は厳しい目線も忘れず、言葉を続けた。「全然まだまだ。ただ負け出すとなかなか入っていかないので、勝ちながら修正していきたい」。昨季2位の横浜FMから帰ってきた守護神は2連勝という結果にも「満足してしまうと衰退が始まる」と述べ、「練習の中でももっと突き詰めないといけないところはある。今はただ結果が出ている状況なので、後半戦に向けてもっと安定した戦いができるようにしていけたら」とさらなるレベルアップを誓った。

(取材・文 竹内達也)

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Text by 竹内達也

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