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先発続く大卒ルーキーが“特別な場所”で3ポジション躍動…磐田DF植村洋斗「やってやるぞと気合が入っていた」

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ジュビロ磐田DF植村洋斗

[5.3 J1第11節 横浜FM 1-1 磐田 日産ス]

 地元横浜出身の22歳が、憧れの日産スタジアムで成長した姿を披露した。

 大卒ルーキーにしてジュビロ磐田で先発出場が続くDF植村洋斗は、横浜F・マリノスのアカデミー出身。2試合ぶりの先発復帰を果たしたこの日は小中学校時代に背負ったエンブレムと対峙すると、右サイドバック、右サイドハーフ、ボランチの3つのポジションをこなし、獅子奮迅の働きで勝ち点1獲得に貢献した。

 横浜FMジュニアユースを卒団後、日大藤沢高、早稲田大を経て今季からプロ入りを果たした植村。相手は1学年上のMF榊原彗悟、2学年下のMF山根陸がメンバー入りしていなかったため、元チームメートとピッチ上での再会が実現することはなかったが、思い出の地に立つ感慨はひとしおだった。

「中学までマリノスのアカデミーでプレーしていたので、マリノスは自分の中で特別なクラブ。やってやるぞと気合が入っていた」。スタンドにはかつての指導者や地元の友人も訪れており、モチベーションも人一倍。チームが優勢を保っていた前半10分と17分には積極的な攻撃参加から果敢にミドルシュートを狙い、攻撃に迫力を加えていた。

 また横浜FMとの対戦でDF陣に欠かせないのは強力な攻撃陣との対峙。FWエウベルとのマッチアップにも気圧されることはなかった。「相手の前3枚が強力なのは分かっていたので、まずはしっかり目の前の相手に負けないことと、粘り強く戦うことをベースに試合に臨んだ」。ボランチのフォローも受けながらほとんど仕事をさせずに後半14分、強力なウインガーをベンチに追いやった。

 さらにこの日は持ち前の器用さでも異彩を放った。後半16分からはDF西久保駿介が右SBに投入されたのに伴い、植村は右サイドハーフにポジションを変更。続く同35分にはMFブルーノ・ジョゼが右サイドハーフに入ったことで、ボランチに移った。育成年代で本職としてきたボランチだが、J1リーグ戦での起用はこれが初めて。それでも50番を受け継いだ遠藤保仁氏さながらの配球力を垣間見せ、同点につながる終盤の猛攻を後押しした。

 DF松原后が離脱中だった前々節までは左SBでの先発も経験しており、ルーキーながら驚異のポリバレント性を発揮している植村。「いろんなポジションをやるとは思わなかったけど、それだけ信頼されているということだと思う。どのポジションでもクオリティーを出していかないといけない」。そんな言葉どおり、横内昭展監督からの高い信頼を感じる起用だった。

 客観的に見れば充実のルーキーイヤー。だが、植村自身は現在の立場に満足しているわけではないという。前節・町田戦では軽い怪我の影響もあり、開幕節から続いていた連続先発出場がストップ。スタンドから試合を見守る中、チームは同じ昇格組ながら首位を走る相手を2-0で破り、そのパフォーマンスに大きな刺激を受けていた。

「チームとして町田戦に勝って自信になった部分があったので、強度や切り替えをこの試合も出していこう、ベースの部分を意識していこうとこの試合に入っていた。町田戦をスタンドから見ていても選手の戦う姿勢、勝ちに対する姿勢を感じたし、そこで悔しい気持ちもあった。この試合にかける思いも強いものがあった」。その思いが横浜FM戦のパフォーマンスに結びついていた。

 ここまでのJ1リーグ戦10試合を経て、プロの舞台で通用する手応えも、試合ごとに出てくる課題も冷静に見つめている。

「開幕前にはまさか1年目からこんなに試合に絡めるとは思っていなかったけど、これだけ多くの試合に出ることで課題や成長できるところがたくさん見つかっている。ここまで自分の中でも手応えを掴めている。ただ、チームにとってもっと必要不可欠な存在にならないといけないし、自分がチームを勝たせるくらいの気持ちを持ってやらないといけない」

 この日の自身には「クロスに課題が多く残った」と植村。地元での思い出深い一戦を経て「これからもしっかり自分の課題と向き合っていきたい。どれだけ練習から意識してやっていけるかでそれが試合に出ると思う。日々の練習からどれだけ意識高くやっていけるかで成長していけると思うので、一つ一つの練習を大切にやっていきたい」と決意を新たにしていた。

(取材・文 竹内達也)

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竹内達也
Text by 竹内達也

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