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神戸vs京都で起きた9分間の“VARダブル介入”にJFA審判委「受け入れてもらうのは難しい」情報共有に課題

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JFA審判委が説明

 日本サッカー協会(JFA)審判委員会は9日、東京都内のJFAハウスでメディア向けのレフェリーブリーフィングを開いた。佐藤隆治JFA審判マネジャーが登壇し、J1第10節のヴィッセル神戸京都サンガF.C.戦でVARの連続介入があり、約9分間にわたって試合が中断したシーンにも言及。最終的な判定には問題がないとしつつも、「9分間という中断を受け入れてもらうのはなかなか難しい」と見解を示した。

 4月27日に行われた神戸対京都戦では前半アディショナルタイム1分、神戸のロングスローをMF宮代大聖が頭でそらした後、京都の選手に当たったボールをFW大迫勇也がゴールに押し込み、一度は得点が認められた。ところが飯田淳平主審はVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)から大迫がオフサイドポジションにいたという情報を受け、VARオンリーレビューでゴールを取り消した。

 しかし、ここで京都の間接FKで再開となるはずが、再びVARが介入した。再開に向けた確認の中で、宮代がそらしたボールが大迫に渡る直前、京都MF松田天馬の腕に当たっていたことが判明したためだ。主審がオンフィールド・レビューを行った結果、松田のハンドの反則が認められ、神戸のPKで試合再開となった。なお、このPKは大迫のキックがGKク・ソンユンに止められ、得点にはつながっていなかった。

 ブリーフィングでは審判員のコミュニケーション音声が公開され、飯田主審はゴールの時点で京都のハンドの可能性があることを認識していた。オフサイドの判定に変える際も「APP(アタッキング・ポゼッション・フェーズ/ゴールまでの流れ)は全部大丈夫ね?」とVARに確認。しかしVARは一度「はい」と応答し、ハンドの反則を見逃した状態でプレーが再開しそうになった。

 ところがここでAVAR(アシスタントVAR)が「白(京都)のハンドは大丈夫?」と飯田主審の意図を汲み取り、APP内の再チェックを促すと、作業を担うリプレーオペレーター(RO)も「念のため確認で(映像を)出しておきます」と伝えてチェックを再開し、ハンドの反則が判明。一度はオフサイドと判定されていたため、ピッチ上の選手は再開の遅れに困惑した様子も浮かべる中、飯田主審がオンフィールドレビューを行い、判定をPKに変える形となった。

 JFA審判委員会は判定が2度にわたって覆った原因としてコミュニケーションの問題があったと指摘。佐藤マネジャーは「オフサイドで取り消す前にそこはちゃんと確認をするべきだった」と反省点を口にした。

 今回の事象は飯田主審がすでにハンドの可能性を認識していたため、通常の手続きで使用される「APPは大丈夫か」といった抽象的な言葉で伝えるのではなく、「ハンドの疑いがある」と明確に伝えることが望ましかったという。また佐藤氏はVAR、AVARがレビュー後に再チェックを行うことになった手続きにも課題を挙げ、「時間はかかったとしても、疑義があるならちゃんと見た上でファイナルデシジョン(最終判定)をする」よう求めた。

 今季のVAR運用では、開幕前から「時間がかかればかかるほど、判定に対する信頼性は『どうなんだ』ということにつながる」という課題感に基づき、判定精度だけでなくチェックにかかる時間の短縮も求められていた。そうした中で発生したこの事象では、ゴールからPKと判定されるまでにおよそ9分間を要していた。

 佐藤氏はJリーグ担当審判員にこのシーンを共有し、適切なコミュニケーションの取り方を示したことを明かしつつ、「皆さんに受け入れてもらえる判定を追求していかないといけない」と改善を誓った。なお、ネット上などでは宮代の頭にボールが触れたかどうかにも疑問の声が上がっていたが、審判委員会は審判団の触れていたという判定を支持した。

(取材・文 加藤直岐)

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