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ブラサカ日本代表は明日、銅メダルをかけてスペインと再戦。エース川村「最後は勝って終わりたい」

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 2020年の東京五輪パラリンピックにむけた「プレ・パラリンピック」と位置付けられる「IBSA ブラインドサッカーワールドグランプリ 2019」は23日、準決勝2試合と下位トーナメントが行われ、初の決勝進出を目指した日本代表はイングランド代表に0-2で完敗した。この試合まで大会3試合で4得点をあげていたイングランド代表のエース、ダニエル・イングリッシュへのマークが甘くなり、2ゴールを許した。

 イングランド戦を迎える前まで2試合連続3ゴールをあげてきた主将の川村怜は得意の間合いでシュートを打たせてもらえず、天を仰いだ。

「これまでやってきた(勝利につながった)ポジショニングがちょっと間延びしたところがあって、あまりいいリズムが作れなかった。その中で失点してしまい、非常にもったいなかった。イングランドの守備はかなり強く、気迫をもってアグレッシブにボールに寄せてきた」

 イングランドのイングリッシュは195cmあり、この日ボールをよく持ったブランドン・コールマンも185cm近い体格。コロンビア代表やスペイン代表で警戒していた選手に比べて彼ら2人は体の大きさに頼る分、テクニックは若干劣り、抑えやすいと分析していた。しかし、この日はその肝心のキーマンに力負けした。3人がボールを奪いに行っても倒れないどころか、バランスさえ崩れない。徐々にディフェンス網が乱れ、高田敏志監督が目指してきた「攻めながら守り、守りながら攻める」ためのポジショニングをとらせてもらえなくなった。

 見方を変えれば、イングランドの執念に屈したとも言える。昨年のこの大会に準優勝したサッカーの母国だが、日本代表には開幕戦で敗れた。21日にグループリーグ終了後、イングリッシュは「日本代表は戦術的にしもしっかりしていて、体力的にもフィットしている。動きもトリッキーだ」と明かし、日本代表に対する戦術的な研究が進んでいるような発言をしていた。

 実際、イングリッシュのようなエースでさえ、グループリーグのトルコ戦とアルゼンチン戦で一時的にベンチに下がり、休息できる時間があった。イングランドは9月に東京五輪の出場権をかけた欧州選手権を控えている。主力選手に休みの時間も与え、若い選手に国際経験を積ませながら、準決勝以降に照準を合わせる選手起用がされていた。

最後はこの男が決められるか。川村への期待は大きい

 対照的に、日本代表は黒田智成加藤健人佐々木康裕とかわっただけ。エース川村や佐々木ロベルト泉はフル出場。田中章仁もこの日負傷退場した場面もあったが、ほぼフル出場に近い形で出続けている。高田監督は「日本代表はチャンピオンではなく、チャレンジャー。1個ずつ戦って、とにかく目の前の試合を大事にすることが僕らの仕事だと思ってやってきた」と言うが、本音はかえたくても、かえられる選手が不足しているのが現状。イングリッシュのボールを奪いにいったとき、あと1歩が出なかったことは、体力面の消耗具合とも無関係ではないはずだ。高田監督が続ける。

「これまで対戦した選手の中で一番、体で勝負に来る選手に(自分たちの気持ちと体を)ぶつけられないと、あれだけフリーにしてしまったらうとやられてしまう。そこがちょっと甘かった。(イングランドは)ポジショニングなどを修正しながら相手を慌てさせるようなドリブルも仕掛けてきた。今までのスタイルになかったと思う」とイングランドの進化を認めざるを得なかった。

 優勝こそ逃したが、明日24日、3位決定戦でスペイン代表との再戦が控える。最新の世界ランクは4位で、2002年以降、世界選手権で5位以下になったことがない強豪は21位に敗れた悔しさをぶつけてくるはず。その難敵に勝てば、日本代表の成長が本物であることを証明できる。川村が言う。
「今日みたいな厳しい状況、相手に対して、ゴールで貢献できなかったことは個人的に非常に悔しい。明日必ず勝てるような準備をしたい。必ず勝って終わりたい」

 逆境を力にかえてきた男が、自らのゴールで日本代表を次のステージに引き上げるつもりだ。

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(取材・文 林健太郎)

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