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[船橋招待U-18大会]サッカーは楽しむもの。東京VユースMF山本丈偉は「ENJOY」の精神でさらに上のレベルへ

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東京ヴェルディユースの新1年生MF山本丈偉

[3.26 船橋招待U-18大会 東京Vユース 2-1 静岡学園高]

 サッカーは楽しいものであり、楽しむもの。それはどんなピッチでも、どんな試合でも、自分の気持ちの持ち方次第でずっと感じることのできる、この競技最大の魅力であることは、小さい頃から十分に理解しながらボールを追い掛けてきた。

「この大会も最初から試合に出させてもらって、相手はだいぶ年上ですけど、そんなに気にしないで、とりあえず自分のプレーに自信を持ってやろうと思いました。周囲の期待は別にプレッシャーには感じないですね。とりあえず自分のプレーに集中するだけですし、自分のチームの同学年には負けたくないという想いはあるので、このチームで先発で出られるように頑張りたいです」。

『1年生だから』という枕詞は、この男に必要ない。東京ヴェルディユース(東京)期待のニューカマー。MF山本丈偉(新1年=東京ヴェルディジュニアユース出身)は昇格したばかりのチームでも、既に圧倒的な存在感を放ち始めている。

 船橋招待U-18大会2日目。前日もスタメン起用されていた山本は、今シーズンからプレミアリーグを戦う静岡学園高(静岡)との一戦でも、スタートからピッチに解き放たれる。

「やっぱり昨日戦った相手より、間合いの詰め方とか寄せるところも速くて、1枚剥がしてももう1枚来るみたいな、そういうところは違うなと思って、良い経験でした」(山本)。とりわけ前半は相手の速いプレスと、ドリブルとパスワークを織り交ぜたアタックに四苦八苦。先制点を奪われるが、すぐさま追い付くと、以降はチームも落ち着きを取り戻していく。

 すると、ボールを受ける回数が増加した山本も、少しずつゲームの中で攻守に効果的な立ち振る舞いを披露。「守備のところで、結構ボールに行って奪うところはこれまでの相手と変わらずできたので、そういうところは通用するなと思いました」と守備面での手応えをも口にする。

 結局、試合は後半に勝ち越しゴールを奪い、2-1で逆転勝利。「だんだんプレースピードに慣れてきて、自分のプレーを余裕を持ってできるようになってきたので、そこは成長しているのかなとは思いますけど、まだまだ静学みたいにプレッシャーが速い中で、もっと余裕を持ってゲームを作れるようになりたいですね」と話す1年生は、年代トップレベルの相手を前にしても、きっちりとゲームにアジャストできる能力を見せ付けることに成功した。

 年代別代表はいわゆる常連。今月のU-16日本代表候補合宿にも参加するなど、その期待値も非常に高い中で、ユースでも早くも自らの立ち位置を確立しようとしている。中盤なら複数ポジションをこなせる印象もあるが、本人は自分自身のプレースタイルをこう分析する。

「ボランチならアンカーのところもできますし、フロントのちょっと前目をやったりもできるので、動きはそれぞれ違いますけど、自分の中でだんだん慣れてきました。自分はゲームを組み立てるところとか、ゲームを落ち着かせたり、時間を見て流れを読んだり、そういうところが特徴だと思います。前目でやらせてもらっている時はゴールに直結するパスとか、ゴール前のアイデアとか、そういうところは意識しています」。

 兄は東京Vのトップチームでレギュラーを務めており、パリ五輪に向かうU-21日本代表でも主力選手としての活躍が期待されているMF山本理仁だ。「理仁もずっと上の年代でやってきているので、それに負けないように自分も頑張りたいと思います。普段もアドバイスをもらうことはないですね。サッカーの話もたまにしますけど、そんなに意味のある話はしないです(笑)」。同じデザインのユニフォームに袖を通し、カテゴリーは違えども切磋琢磨しながら、さらに上のレベルへ駆け上がることを兄弟で志していることは言うまでもない。

「身長はもう最近止まり始めています」と笑う186センチの長身も一際目を惹く山本に今シーズンの目標を尋ねると、しっかりとした口調で明確な答えが返ってくる。「まずはプリンスリーグで中心選手として試合に出て、チームの勝利に貢献することと、プレミア昇格に自分の力で貢献することが目標です」。より高いステージで、より高いレベルのサッカーを。それはもちろんチーム自体も希求している大きな目標だ。

『丈偉=じょうい』と付けられた名前の由来も、実に振るっている。「由来は“ENJOY”の“じょうい”ですね。楽しむという意味です。なかなかいない名前なので、みんなも呼びやすいと思います(笑)」。

 名は体を表す。サッカーは楽しいものであり、楽しむもの。山本のプレーには、そのメッセージがいつも込められている。

(取材・文 土屋雅史)

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