beacon

国体を戦えなかった世代がSBSカップで“王国”の実力示す!静岡ユースがPK戦でU-18日本代表撃破!

このエントリーをはてなブックマークに追加

静岡ユースがPK戦でU-18日本代表に勝利。喜びを爆発させた

[8.26 SBS杯第2節 静岡ユース 1-1(PK4-3)U-18日本代表 草薙陸]

 U-18ウルグアイ代表、U-18ウズベキスタン代表、U-18日本代表、そして静岡ユース(静岡県高校選抜)が優勝を争う「2022 SBSカップ国際ユースサッカー」(静岡)は大会2日目の26日、U-18日本代表対静岡ユースの注目対決が行われ、静岡ユースが「代表」からの白星を勝ち取った。静岡ユースは後半アディショナルタイムにFW斉藤柚樹(清水ユース)のPKで追いつき、PK戦でGK石坂地央(藤枝東高)が2本を止める活躍。1-1(PK4-3)で勝ち、今大会の通算成績を1勝1敗とした。

 SBSカップを戦う静岡ユースは例年、U-16選抜時に国体(19年、静岡は国体で21回目の日本一)を戦ったチームがベース。だが、今年の高校3年生はコロナ禍で国体を戦うことができなかった世代だ(20年鹿児島国体は開催されず、23年に延期)。

 今年3月のヤングサッカーフェスティバルでようやく県選抜として戦うことができ、SBSカップは22年「静岡」にとって大きな舞台。鈴木啓史監督は「どうやってチームを作っていくのか、どうしたら試合に向けて強くなって行けるかとかを本当にミーティングしたり色々なことを使ってやりました」と説明する。

 前日はU-18ウズベキスタン代表相手に2度リードを奪いながら、終了間際の失点で追いつかれ、PK戦で敗戦。だが、そこでSBSカップで国の代表チームと戦うことの厳しさ、守備強度、「1対1で負けないという気持ちの部分が大事」(鈴木監督)などを学んだ。そして、この日は指揮官が「最初に選手たちに言った、上手くて、速くて、泥臭く、粘り強くというところが体現されていて、逞しく思います」という戦い。見事に「代表撃破」を果たした。

 U-18日本代表はU-18ウルグアイ代表に勝利した前日から先発7人をチェンジ。4-3-3システムのGKが栗林颯(鳥栖U-18)、右SB都築駿太(流通経済大柏高)、CB小澤晴樹(大宮U18)、CB高井幸大(川崎F U-18)、左SB石川晴大(清水ユース)、アンカーがゲーム主将の坂井駿也(鳥栖U-18)、インサイドハーフが徳永涼(前橋育英高)と根本鼓太郎(桐蔭横浜大)、3トップは右から阪田澪哉(東山高)、五木田季晋(川崎F U-18)、名願斗哉(履正社高)が並んだ。

 一方の静岡ユースは4-4-2システムでGK石坂、右SB渡辺啓佳(清水ユース)、CBがゲーム主将の行徳瑛(静岡学園高)と松田和輝(磐田U-18)、左SB石川瑠紀(清水桜が丘高)、中盤は亀谷暁哉(磐田U-18)と岩崎圭吾(沼津U-18)のダブルボランチで右SH高橋隆大(静岡学園高)、左SH安藤阿雄依(清水ユース)、2トップは斉藤柚と山藤大夢(富士市立高)がコンビを組んだ。

 序盤は技術、スピード感で勝るU-18代表がプッシュ。都築の攻め上がりから五木田がループシュートを狙い、またコンビネーションから徳永が右足シュートを放つ。また、阪田の縦突破などで相手ゴールに迫る。

 だが、静岡ユースは右SB渡辺が相手の注目ドリブラー・名願を食い止め、行徳、松田の両CBが声を掛け合い、また身体を張るなど粘り強い戦い。逆に岩崎が右足ミドルを打ち込み、渡辺のクロスを安藤が頭で合わせるなど攻め返して見せる。39分には、高橋が対峙した相手DFの股間を抜くドリブル。そして、山藤のスルーパスから斉藤柚が右足シュートを放った。

 U-18代表は後半開始から徳永とMF松村晃助(横浜FMユース)を入れ替え、静岡ユースは山藤に代えてFW後藤啓介(磐田U-18)を投入する。冨樫剛一監督が「ボールを大事にし過ぎたかな。シュート数が少なかったのでそういう話もしました」というU-18代表は交代出場の松村が存在感。4分、斜めのドリブルでゴール前へ侵入し、左足を振り抜く。その後も突破、ラストパスで決定機を演出したほか、果敢な動きで相手ゴールを脅かした。

 だが、U-18代表は14分に名願の突破から石川が右足シュートを放ち、21分には松村の突破、ラストパスに根本が飛び込むも決め切ることができない。U-18代表はMF下田栄祐(鹿島ユース)やFW高橋輝(大宮U18)、静岡ユースもMF斎藤晴(JFAアカデミー福島U-18)、MF森寧樹(富士市立高)を投入する中、U-18代表がスコアを動かす。

 後半29分、松村の右クロスのこぼれを名願が詰め、待望の先制点。さらに高橋や五木田が追加点を狙うU-18代表に対し、静岡ユースはMF寺裏剣(静岡学園高)、MF鈴木謙心(沼津U-18)、CB山本蒼太(藤枝明誠高)を送り出し、諦めずに同点を目指す。

 U-18代表は37分、DFヴァン・イヤーデン・ショーン(横浜FCユース)とMF高塩隼生(横浜FCユース)を投入。練習で一度確認していたという3バックへ移行し、逃げ切りを目指す。だが、アディショナルタイム、相手に負傷者が出た関係で返されたボールを連続でバックパス。そこからビルドアップしたところでミスが起きてしまう。

 U-18代表の冨樫監督は「南米の選手だったらどう時間を使ったのか。あそこまで(後方に)返す必要があったのか、1タッチする必要があったのか。戦術眼は我々、育成年代の課題になってくるのかなと思います」と指摘した。ここで静岡ユースは、インターセプトした斎藤晴が後藤とワンツー。そして、上げたクロスが相手DFのハンドを誘い、PKを獲得した。重圧のかかるPKを斉藤柚が右足で決めて同点。PK戦へ持ち込んだ。

 迎えたPK戦は先攻・静岡ユース2人目をU-18代表GK栗林が左へ跳んでストップ。だが、静岡ユースGK石坂が相手の4人目を止め返す。迎えた5人目、静岡ユースはMF寺裏が決めると、直後にGK石坂が完璧に止めて決着。6,051人の観衆の前で地元・静岡の高校生たちが喜びを大爆発させた。

 前日の課題を改善し、気持ちの強さも見せた静岡ユースの選手たちを鈴木監督は称賛。石坂は活動を重ねる中で「仲良しこよしではなく、お互いを高め合える仲間になった」と胸を張る。そして、「(自分は県外出身で)高校から静岡に来て、静岡のサッカーの愛というかサッカーに対する気持ちの強さは凄く良いなと思っていたので、こういう静岡の戦いで活躍することができて凄く嬉しいです」とコメント。U-18代表の選手たち同様、将来のプロ、代表入りを目指す王国の才能たちが、この勝利を自信に、U-18ウルグアイ代表とのSBSカップ最終戦も白星を勝ち取る。

(取材・文 吉田太郎)

TOP