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「やり続ける」意味を証明してきた副キャプテン。柏U-18FW瀧澤一心はチームに熱いエネルギーを注入し続ける

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柏レイソルU-18の頼れる副キャプテン、FW瀧澤一心

[9.4 高円宮杯プレミアリーグEAST第13節 柏U-18 0-2 横浜FCユース 日立柏人工芝]

 試合に出ていても、出ていなくても、軸に置くべきことは変わらない。とにかく「やり続ける」こと。それが仲間のためであり、自分のためだと信じて、その時にできることを120パーセントでやり続けるだけだ。

「もうこのチームでの残り少ない期間を、みんなで笑って過ごしていたいので、少しでも勝ち点を重ねて、2年生にも試合に出てもらう機会を増やして、次に繋げられるようなことをした上で、3年生というアカデミーの一番最後の学年を終われたらなと思います」。

 誰からも慕われる柏の漢。柏レイソルU-18(千葉)の頼れる副キャプテン。FW瀧澤一心(3年=柏レイソルU-15出身)には、このチームを熱いエネルギーで包み込むだけの圧倒的なパワーがある。

 約2か月ぶりとなるプレミアリーグの再開戦。横浜FCユース(神奈川)と対峙した柏U-18は、0-2というスコアで黒星を突き付けられる。「チームとして一辺倒な攻め方になってしまったなと。僕たちはそういうチームではなくて、みんなでちょっとずつ前進して、何回も何回も攻撃をして点を獲りに行くようなチームなので、そういう面では今日は何もやらせてもらえなかったなという印象です」。右ウイングでスタメン出場した瀧澤も、結果も含めて難しい試合になったことを認めている。

 とはいえ、サイドバックのDF足立凱(3年)をうまく使いつつ、攻撃面では右サイドから生み出すチャンスも少なくなかった。「自分の強みは味方と繋がって、味方を生かせるところなので、良いクロスを持っている足立選手がああやって前に出てくれるのは、チームとしても良いことですし、そういう面で右サイドをちょっと活性化させられた部分で、自分の良さが出たのかなと思います」。アグレッシブな11番のプレーが、チームに活力を与えていたことに疑いの余地はない。

 そんな瀧澤も、シーズンが進む中でなかなかプレミアでの出場機会を得られず、苦しい時期を過ごしていたが、その状況でも改めて意識すべきことを整理する。「藤田(優人)コーチから『結果を残さないと、サブの選手は入れ替われないよ』と言われたんです。自分は味方を生かすことを意識してやっていたんですけど、チームの紅白戦でも『自分が点を獲る』という結果の部分に焦点を当てて、やり続けました」。

 7月。中断前にホームで戦ったプレミアリーグの桐生一高(群馬)戦で、瀧澤はスタメンに指名されると、ゴールまで決めてしまう。この“残した結果”をきっかけに、クラブユース選手権では定位置を確保し、チームとともに夏の全国4強を経験。ピッチの中での存在感も高めてきた。

 以前から気になっていた。ベンチに入っていても、決して長い出場時間を得られているわけではない11番が、アップエリアからひたすら大きな、それでいて選手たちが勇気付けられるような言葉を、何度も何度も送り続けていく姿が。

「自分が副キャプテンという職に就いていることもあるんですけど、試合に出ていないながらも、何かできることはないかなと思った時に、試合が終わった後、出ていた選手から『一心の声、助かるよ』とか、そういうふうに言ってもらえたので、自分が試合に出ていなくてもチームのためにできることを探した結果が、喋るということ、味方に伝え続けるというところだったのかなと思います」。

「結局そういうことをやっていると、自分に返ってくると思っていますし、試合に出ている時、出ていない時に関係なく、やり続けることは後々自分に戻ってくるという想いでやっているんです。自分が出ている時にも、周囲の人がいろいろと伝えてくれることは助かるなと思うので、試合が終わってベンチに戻った後も、意識的に声を掛けるようにしています」。



『なるほど』と思う部分と、それでも『凄いな』と感じる部分が共存する。ただ、実際に彼がチームメイトへと声を掛け続け、気持ちを伝え続けたことが、スタメン奪取という形で自分に返ってきている。とにかく『やり続ける』ことの大切さを、自身の成果で証明してしまっているのだから恐れ入る。

 キャプテンのDF西村龍留(3年)は、誰よりも心強く感じている“副キャプテン”についてこう語っている。「常に親身になってくれますし、自分の言いたいことや思っていることを一番に相談できるので、自分にとっては凄く大きな存在ですし、チームにとっても活力をもたらしてくれる人ですね。自分はちょっと熱いタイプなんですけど、一心は少し冷静なので、そこも良いバランスかなと。チームが熱くなった時には、一心が落ち着かせてくれますし、そういう意味ではお互いにいいものを発揮し合って、チームのバランスが保たれているのかなと思いますね」。

 キャプテンからも大絶賛を受ける瀧澤だが、試合に出る楽しさを尋ねると、少しだけ本音が滲んだ。「自分としては試合に出ている時も、出ていない時も、同じようにやることは意識しているんですけど、どうしても試合に出られない時は『何で自分は使われないんだよ』という想いはあったと思います。でも、使ってもらえるようになって、試合の楽しさとか、サッカーの楽しさを再認識しているので、これからも試合に出続けられるように、もっとアピールしていきたいです」。

 自分にできることを真摯に積み重ねることで、チームの心を1つにまとめてきた頑張り屋。試合に出ていても、出ていなくても、日立台のピッチには、いつだって『やり続ける』瀧澤の声が響いている。



(取材・文 土屋雅史)

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