[プレミアリーグWEST]“数センチ”のこだわりが導く成長への確かな道筋。東福岡は敵地でC大阪U-18に競り勝って怒涛の3連勝!
[9.17 高円宮杯プレミアリーグWEST第15節 C大阪U-18 1-2 東福岡高 南津守さくら公園スポーツ広場(人工芝)]
怒涛の3連勝は決してフロックではない。身体を張って、走って、みんなで攻めて、みんなで守る。粘り強く戦うことの重要性を見つめ直したことが、そのまま結果に直結してきたのだ。
「8月の終わりのリーグ再開から粘り強くやれてきていますし、選手たちもそこに関しては自信を持っているというか、『これをやらないと勝てない』ということをみんな理解しているので、継続してやれてきているかなと思います」(東福岡・森重潤也監督)。
いよいよ見えてきた首位の背中。17日、高円宮杯 JFA U-18 サッカープレミアリーグWEST第15節、セレッソ大阪U-18(大阪)と東福岡高(福岡)が激突した一戦は、前半20分にプレミアデビュー戦のMF保科鉄(2年)が先制点を挙げ、後半16分にもMF浦十藏(3年)がPKを沈めて、東福岡が2点を先行。C大阪U-18もMF棟近禎規(2年)のミドルで1点を返したものの、試合は2-1でタイムアップ。3連勝を飾った東福岡が、暫定3位へと浮上している。
試合開始から構図はハッキリしていた。ボールを動かすホームチームと、しっかり守備から入ったアウェイチーム。「セットプレーのところでやられないことと、相手はフォワードが強烈なので、そこのフィルターを掛けるところだったり、センターバックとのコミュニケーションをこの1週間は徹底してやりました」と話したのは、東福岡のキャプテンを務めるGK須田純弥(3年)。DF井上碧斗(2年)とDF園文来(3年)のセンターバックコンビを軸に、全体をコンパクトに保ちつつ、中央を締めて敷いた堅陣。14分にはC大阪U-18もエースのFW木下慎之輔(3年)がヘディングを枠内へ打ち込むも、須田がファインセーブで応酬。先制は許さない。
すると、先に歓喜の瞬間を迎えたのは東福岡。20分。中盤で前向きにボールを奪った流れから、右サイドへ流れたMF下川翔世(3年)が丁寧に折り返すと、アンカーの位置から走り込んできた保科のシュートが、鮮やかにゴールネットを揺らす。「初めてのプレミアの試合でしたし、『本当に入ったのかな?』みたいな気持ちが3秒ぐらい続いた後に、泣きそうになりました。バリ嬉しかったです!」と笑った42番は、プレミアリーグ初出場の一戦でいきなり大仕事。意外な伏兵が輝きを放つ。
以降も少ない手数をチャンスに結び付けるのは東福岡。29分には須田のフィードに、走ったMF榊原寛太(2年)は飛び出したGKより一瞬早く頭で触るも、ゴールへ向かったボールはC大阪U-18のDF藤田崇弘(3年)が懸命に戻ってクリア。40分にもMF竹下悠(2年)の右クロスに、ニアで合わせた下川のシュートは、C大阪U-18のCB木村誠之輔(3年)に間一髪でブロックされたものの、前半はそのまま1-0でハーフタイムを迎えることになる。
「後ろでブロックを敷いてくる相手に対して、勇気を持って入っていくことができなかったなと。そこの回数が少なくて、なかなかチャレンジすることができなかったなという印象です」と伊藤尊寛コーチが前半を評したC大阪U-18は、後半開始から中盤にMF中山聡人(1年)を投入すると、全体の縦パスの意識も高まり、差し込む回数も増加。
6分には相手のビルドアップを高い位置で奪い、MF木實快斗(1年)のシュートは須田がセーブ。7分にも木下が右へ振り分け、上がってきたDF川合陽(3年)のシュートは相手DFに跳ね返り、こぼれを拾ったMF長野太亮(3年)のミドルも須田が弾いたものの、少しずつ攻撃のピントが合い始めていく。
だが、東福岡も“右の彗星”が躍動する。10分。素早い切り替えから浦が右サイドを単騎で運び切り、中央へグラウンダークロス。下川のスルーを経て、MF吉岡拓海(2年)が狙ったシュートはわずかに枠を逸れたが、高速カウンターの脅威を突き付けると、16分には相手のハンドで獲得したPKを浦が冷静に沈め、点差は2点に広がった。
小さくないビハインドを背負ったC大阪U-18は、2失点目の直後に2枚替え。MF皿良立輝(2年)と棟近を投入して、踏み込んだアクセルはすぐさま結果に。20分。中央で細かく繋いだ流れから、皿良のパスを受けた棟近は左足一閃。ボールは右スミのゴールネットへ鮮やかに突き刺さる。2-1。たちまち東福岡のリードは1点に変わる。
終盤はホームチームが攻め立てる。中山と棟近からの配球で、皿良が、木下が、MF藤井龍也(1年)が、MF首藤希(1年)が、次々とゴールへ迫るも、アウェイチームも足を痛めた須田からバトンを受け取ったGK戸成晃大(3年)にDF江本千泰(3年)と、“クローザー”たちも必死に任務を遂行。1つずつ相手の攻撃を潰していく。
雨の降り出したアディショナルタイムも6分が過ぎると、主審がタイムアップのホイッスルを鳴らす。「勝てば順位が変わりますし、負けても順位が変わる位置にいるので、決して気を緩められない状態ですけど、この3連勝は本当に大きいと思います」と森重監督も一定の評価を口にした東福岡が1点差で逃げ切り、勝ち点3を奪取。5戦無敗と3連勝という成果を、敵地で同時に手にする結果となった。
4月。東福岡はC大阪U-18に、ホームで0-7と屈辱的な大敗を喫していた。「セレッソには前回の対戦で7点獲られて負けていて、そこで1回チームが変わるきっかけを作ってくれたチームなので、自分たちの変わったところをしっかり証明するために、後期のセレッソに対しては絶対勝つことを目標にしてきました」と明かすのは須田。5か月経った現在地を測るには格好の相手に、最後は苦しみながらも勝ち切ったことには、チームが辿ってきた成長という意味でも、勝ち点3以上の価値があったのだ。
ただ、冷静な指揮官は試合後もいわゆる“兜の緒”を、きっちりと締めている。「目標としている勝ち点3が取れたことは非常に良かったですけど、ウチは得失点差もマイナスが多いので、それを少しでも減らすためには、失点の場面で寄せられなかったのはちょっと残念かなとは思いますし、ここで一喜一憂することなく、また次のゲームに向けて準備をしないといけないなと思います」。
キャプテンマークを巻く須田の言葉が印象深い。「今までの目標は『降格圏に入らない』ということだったんですけど、今日もしっかり勝ったことで、『上位に食い込んでいく』ことが目標になってきました」。足元は見つめながらも、図られつつある目標の“上方修正”。その先にある最大のターゲットとも言うべき選手権を見据えつつ、着実にチームは上昇気流に乗ってきた。
「本当に悔いのないようにやりたいですし、選手たちにもやってほしいと考えていますし、球際の数センチであったり、ゴール前の数センチであったり、本当にあともう少しというところを突き詰めながら、彼らにはもっとやってほしいなと思います。残りのプレミアも選手権もしっかり勝利を獲りたいですね」(森重監督)。
“数センチ”のこだわりが導く、成長への確かな道筋。着々と始まっている赤い彗星の逆襲から、目が離せない。
(取材・文 土屋雅史)
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「8月の終わりのリーグ再開から粘り強くやれてきていますし、選手たちもそこに関しては自信を持っているというか、『これをやらないと勝てない』ということをみんな理解しているので、継続してやれてきているかなと思います」(東福岡・森重潤也監督)。
いよいよ見えてきた首位の背中。17日、高円宮杯 JFA U-18 サッカープレミアリーグWEST第15節、セレッソ大阪U-18(大阪)と東福岡高(福岡)が激突した一戦は、前半20分にプレミアデビュー戦のMF保科鉄(2年)が先制点を挙げ、後半16分にもMF浦十藏(3年)がPKを沈めて、東福岡が2点を先行。C大阪U-18もMF棟近禎規(2年)のミドルで1点を返したものの、試合は2-1でタイムアップ。3連勝を飾った東福岡が、暫定3位へと浮上している。
試合開始から構図はハッキリしていた。ボールを動かすホームチームと、しっかり守備から入ったアウェイチーム。「セットプレーのところでやられないことと、相手はフォワードが強烈なので、そこのフィルターを掛けるところだったり、センターバックとのコミュニケーションをこの1週間は徹底してやりました」と話したのは、東福岡のキャプテンを務めるGK須田純弥(3年)。DF井上碧斗(2年)とDF園文来(3年)のセンターバックコンビを軸に、全体をコンパクトに保ちつつ、中央を締めて敷いた堅陣。14分にはC大阪U-18もエースのFW木下慎之輔(3年)がヘディングを枠内へ打ち込むも、須田がファインセーブで応酬。先制は許さない。
すると、先に歓喜の瞬間を迎えたのは東福岡。20分。中盤で前向きにボールを奪った流れから、右サイドへ流れたMF下川翔世(3年)が丁寧に折り返すと、アンカーの位置から走り込んできた保科のシュートが、鮮やかにゴールネットを揺らす。「初めてのプレミアの試合でしたし、『本当に入ったのかな?』みたいな気持ちが3秒ぐらい続いた後に、泣きそうになりました。バリ嬉しかったです!」と笑った42番は、プレミアリーグ初出場の一戦でいきなり大仕事。意外な伏兵が輝きを放つ。
以降も少ない手数をチャンスに結び付けるのは東福岡。29分には須田のフィードに、走ったMF榊原寛太(2年)は飛び出したGKより一瞬早く頭で触るも、ゴールへ向かったボールはC大阪U-18のDF藤田崇弘(3年)が懸命に戻ってクリア。40分にもMF竹下悠(2年)の右クロスに、ニアで合わせた下川のシュートは、C大阪U-18のCB木村誠之輔(3年)に間一髪でブロックされたものの、前半はそのまま1-0でハーフタイムを迎えることになる。
「後ろでブロックを敷いてくる相手に対して、勇気を持って入っていくことができなかったなと。そこの回数が少なくて、なかなかチャレンジすることができなかったなという印象です」と伊藤尊寛コーチが前半を評したC大阪U-18は、後半開始から中盤にMF中山聡人(1年)を投入すると、全体の縦パスの意識も高まり、差し込む回数も増加。
6分には相手のビルドアップを高い位置で奪い、MF木實快斗(1年)のシュートは須田がセーブ。7分にも木下が右へ振り分け、上がってきたDF川合陽(3年)のシュートは相手DFに跳ね返り、こぼれを拾ったMF長野太亮(3年)のミドルも須田が弾いたものの、少しずつ攻撃のピントが合い始めていく。
だが、東福岡も“右の彗星”が躍動する。10分。素早い切り替えから浦が右サイドを単騎で運び切り、中央へグラウンダークロス。下川のスルーを経て、MF吉岡拓海(2年)が狙ったシュートはわずかに枠を逸れたが、高速カウンターの脅威を突き付けると、16分には相手のハンドで獲得したPKを浦が冷静に沈め、点差は2点に広がった。
小さくないビハインドを背負ったC大阪U-18は、2失点目の直後に2枚替え。MF皿良立輝(2年)と棟近を投入して、踏み込んだアクセルはすぐさま結果に。20分。中央で細かく繋いだ流れから、皿良のパスを受けた棟近は左足一閃。ボールは右スミのゴールネットへ鮮やかに突き刺さる。2-1。たちまち東福岡のリードは1点に変わる。
終盤はホームチームが攻め立てる。中山と棟近からの配球で、皿良が、木下が、MF藤井龍也(1年)が、MF首藤希(1年)が、次々とゴールへ迫るも、アウェイチームも足を痛めた須田からバトンを受け取ったGK戸成晃大(3年)にDF江本千泰(3年)と、“クローザー”たちも必死に任務を遂行。1つずつ相手の攻撃を潰していく。
雨の降り出したアディショナルタイムも6分が過ぎると、主審がタイムアップのホイッスルを鳴らす。「勝てば順位が変わりますし、負けても順位が変わる位置にいるので、決して気を緩められない状態ですけど、この3連勝は本当に大きいと思います」と森重監督も一定の評価を口にした東福岡が1点差で逃げ切り、勝ち点3を奪取。5戦無敗と3連勝という成果を、敵地で同時に手にする結果となった。
4月。東福岡はC大阪U-18に、ホームで0-7と屈辱的な大敗を喫していた。「セレッソには前回の対戦で7点獲られて負けていて、そこで1回チームが変わるきっかけを作ってくれたチームなので、自分たちの変わったところをしっかり証明するために、後期のセレッソに対しては絶対勝つことを目標にしてきました」と明かすのは須田。5か月経った現在地を測るには格好の相手に、最後は苦しみながらも勝ち切ったことには、チームが辿ってきた成長という意味でも、勝ち点3以上の価値があったのだ。
ただ、冷静な指揮官は試合後もいわゆる“兜の緒”を、きっちりと締めている。「目標としている勝ち点3が取れたことは非常に良かったですけど、ウチは得失点差もマイナスが多いので、それを少しでも減らすためには、失点の場面で寄せられなかったのはちょっと残念かなとは思いますし、ここで一喜一憂することなく、また次のゲームに向けて準備をしないといけないなと思います」。
キャプテンマークを巻く須田の言葉が印象深い。「今までの目標は『降格圏に入らない』ということだったんですけど、今日もしっかり勝ったことで、『上位に食い込んでいく』ことが目標になってきました」。足元は見つめながらも、図られつつある目標の“上方修正”。その先にある最大のターゲットとも言うべき選手権を見据えつつ、着実にチームは上昇気流に乗ってきた。
「本当に悔いのないようにやりたいですし、選手たちにもやってほしいと考えていますし、球際の数センチであったり、ゴール前の数センチであったり、本当にあともう少しというところを突き詰めながら、彼らにはもっとやってほしいなと思います。残りのプレミアも選手権もしっかり勝利を獲りたいですね」(森重監督)。
“数センチ”のこだわりが導く、成長への確かな道筋。着々と始まっている赤い彗星の逆襲から、目が離せない。
(取材・文 土屋雅史)
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