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CB歴1年で送り込まれたカナリア軍団からの刺客。DF大田知輝は帝京の価値を高めるために選抜入りを真剣に狙う

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カナリア軍団からの刺客。日本高校選抜候補CB大田知輝(帝京高3年)

[1.22 練習試合 日本高校選抜候補 1-0 日本体育大 時之栖G]

 選手権に出られなかったからこそ、チームを代表してこの舞台に立っているという意識は人一倍強い。自分がクオリティを見せることは、そのまま仲間たちの評価に繋がるのだと肝に銘じ、必死に新たなチームメイトたちへ食らい付いていく。

「やっぱり選手権のピッチに自分たちが立ちたかったという悔しい気持ちもあったんですけど、その舞台に立てなかった分、もっと自分がやらなきゃいけないなと思っていますし、選手権に出ていた選手以上に反骨心を持って、ここで『帝京の選手ももっとできるんだぞ』というところを見せられるぐらいまでやりたいなと思っています」。

 インターハイではファイナリストとなったカナリア軍団からの刺客。DF大田知輝(帝京高3年)は自分の価値と、3年間を共にした仲間の価値を高めるため、今まで以上に闘志を燃やしながら、グラウンドに立ち続けている。

「夏から高校選抜の話は聞いていて、『海外に行けるかもしれない』ということも日比(威)監督に言われていたので、メチャメチャ楽しみにしてきました。ずっとイメージもしてきた感じだったので、選手権は予選で負けましたけど、練習も普通にやっていましたし、身体は動かしていました」。この合宿への準備は、既に整っていたという。

 帝京高からはただ1人の参加。「自分のフィジカル的な弱さやアジリティを強化して取り組もうと考えてきましたし、1対1とかカバーリングのようなセンターバックに必要なところを、より頑張ろうと思ってやってきました」。自分の中でもしっかりと今回の課題を携え、ほとんどが知らない選手たちで構成される輪の中へ飛び込んだ。

 合宿3日目は日本体育大との練習試合が実施され、大田は2本目のセンターバックで起用される。実はそのポジションにトライし始めたのは、ほんの1年前のこと。それまではずっとボランチを主戦場にしてきたが、ビルドアップの能力と180センチを超える高さを買われ、コンバートされたのだ。

 それゆえに、自分の課題も正確に捉えている一方で、ストロングも過不足なく把握しているのもこの男の強み。「ヘディングとかカバーの部分はかなり自分としても手応えはあって、プラスアルファでビルドアップのところでもアピールできているかなと思います」と言い切ったように、この日の30分間でも、CBでコンビを組んだDF井上斗嵩(岡山学芸館高3年)との連携に腐心しつつ、慣れない左SBに入った徳永涼(前橋育英高3年)もさりげなくサポート。決して派手さはないが、繋ぐところは繋ぐビルドアップも含めて、堅実なプレーを貫いたことは間違いなく高ポイントだろう。

「見たくないという気持ちもありながら、テレビで見ていました」という選手権では、インターハイの準々決勝で4-2と下した岡山学芸館高が、日本一まで駆け上がる。大田も複雑な感情を抱いたというが、彼らと共闘できる今回の合宿では、改めて帝京の強さを違う形で証明したいと意気込んでいる。

「学芸館もチームとして、夏から冬に掛けて本当に成長していましたけど、彼らに勝った自分たちの強さを、個人としてここで自分が証明できればなと思っていますし、彼らに『やっぱりコイツ、上手いな』と思わせるぐらいまでやりたいなと考えています」。この日の2本目にはセンターラインに井上、MF木村匡吾(3年)、FW今井拓人(3年)と岡山学芸館トリオが揃い踏み。彼らとこういう形で再会することが叶うのも、選抜活動の面白いところだろう。

 前述したように、帝京はインターハイで全国準優勝に輝いたものの、選手権では予選準決勝で國學院久我山高に惜敗。プレミアリーグプレーオフでも米子北高に1点差で敗れ、どちらも思うような結果を手にすることができなかった。

「結果的にプレミアに昇格できなかったのも、選手権に出られなかったのも、最後のゴール前で身体を張るところや、走るところが自分としても足りなかったのかなと思っていますし、もっとチームを動かす力や、個人としてもう一歩上に行く力を磨きたいなと思いました」。

 痛感した『個人としてのもう一歩』を踏み出すには、格好の機会。この刺激的な経験を糧に、ここから目指す選手像も自身の中では明確だ。「大学を卒業してから、すぐJ1の舞台で活躍して、そのまま海外に行きたいと思っています。そのためには大学のレベルより、さらにその上のレベルを自分で日頃から目指しながら、身体の部分も人間性の部分ももっと成長して、日本を代表するような選手になりたいです」。

 仲間に託された想いは、自分の内側でしっかり背負っている。飄々と、それでいて、逞しく。大田が1年前から歩み始めた“センターバック道”は、これからがもっと楽しく、面白くなっていくに違いない。

(取材・文 土屋雅史)
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