beacon

「夢を与えたかった」。滋賀県3部から8年でプレミアプレーオフ決勝進出の近江は惜敗、選手権で躍進を目指す

このエントリーをはてなブックマークに追加

近江高はプレーオフ開催地・広島県出身のMF西飛勇吾らが奮闘。敗退の悔しさを選手権でぶつける

[12.10 高円宮杯プレミアリーグプレーオフCブロック決勝戦 鹿児島城西高 1-0 近江高 Eスタ]
 
 0-1で惜敗。滋賀県3部から8年でプレミアリーグ昇格という“物語”を実現することはできなかった。

 近江高(滋賀)はプリンスリーグ関西1部最終節で東海大大阪仰星高に3-1で逆転勝ち。広島県出身のDF金山耀太主将(3年)と主力MF西飛勇吾(3年)を「(プレーオフ開催地の)広島へ帰すぞ!」という前田高孝監督の檄に選手たちが見事応えて2位へ浮上し、初のプレミアリーグプレーオフ進出を勝ち取った。

 そして、プレーオフ初戦で北海道1位の北海高に延長戦の末、逆転勝ち。それも、広島県出身の金山の決勝点によって競り勝った。8年前は滋賀県3部リーグにいた近江。元清水MFである前田監督の指導の下、本格強化をスタートしてからわずかな期間でプレミアリーグ初昇格へ王手をかけた。

 前田監督は「8年で、ホンマにここまで行けるんやっていうのをね、色々な高校に示したかったし、また何か新しく立ち上げたチームとか出てきたら面白いし、決まった高校じゃなくて、新しい高校が入っていかんと」。「~Be Pirates~(海賊になれ!)」を合言葉に新たなステージへ挑んだ近江だが、あと一歩のところで敗退となった。

 この日は九州王者・鹿児島城西高との戦い。相手の圧力のある攻守を時に我慢強く、時にいなしながら渡り合った。押し込まれてもDF西村想大(3年)や金山を中心としたDF陣が決定打を打たせない。一進一退の展開から後半は近江ペースに。3分、攻守で存在感を放っていた金山の左クロスをFW小山真尋(3年)が合わせたヘッドはクロスバーをかすめた。

 だが、18分、鹿児島城西の藤枝内定MF芹生海翔(3年)の個人技の前に失点。それでも切り替え、敵陣での時間を大きく伸ばした。広島県出身の西がボールに係わり続けて相手を押し込む。そして、鵜戸瑛士(3年)と浅井晴孔(3年)の両WBの仕掛けやエースMF山門立侑(3年)のラストパスでPAまでボールを運んでいたが、相手の堅守に阻まれて1点を奪うことができなかった。

 シュート数では12-7と上回ったが、0-1で敗れて来年も激戦区・プリンスリーグ関西1部から再挑戦。前田監督は「悔しいですね。夢を与えたかったんですけどね……」と残念がった。その指揮官は試合後、選手たちに「本当(プリンスリーグの)18試合もよくやった。ただ、これが今年のチームの限界なのか? 俺は信じてるし、ここまで来てるのにもう1個なんや」と説いたという。

 近江はこれまで夏冬通算で5度、全国大会に出場している。だが、白星は選手権初出場時(20年度)の1勝だけ。あと少しのところで壁に阻まれている印象だ。今回も紙一重の差で最後の一歩を踏み出すことができなかった。

 ただし、近江にプレミアリーグプレーオフの景色を見せた世代が、夢を与えるチャンスはまだ残されている。12月28日開幕の選手権に出場。初戦(2回戦)からインターハイ3位・日大藤沢高(神奈川)との難しい組み合わせとなったが、近江はプリンスリーグ関西やプレミアリーグプレーオフで全国上位相手に戦える力を十分に示している。この日の敗戦の悔しさもぶつけ、まずは初戦で難敵を上回ること。この戦いを必ず制して全国舞台で大きく羽ばたく。

(取材・文 吉田太郎)

●高円宮杯プレミアリーグ2023特集
●第102回全国高校サッカー選手権特集
吉田太郎
Text by 吉田太郎

TOP