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揺るがぬ基準はアルゼンチンの新星にスペインの俊英。川崎F U-18DF土屋櫂大が纏い始めている守備者としての圧倒的存在感

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川崎フロンターレU-18の絶対的キャプテン、DF土屋櫂大(3年=川崎フロンターレU-15出身)

[4.7 プレミアリーグEAST第1節 川崎F U-18 4-1 大宮U18 Ankerフロンタウン生田]

 フロンターレのアカデミーで過ごす最後の1年。もちろんチームとして獲れるタイトルは、全部獲る。その上で目指すのは「この選手には敵わない」と相手に思わせるぐらいの圧倒的な存在感。チームの中ではもちろん、この世代の中でも頭一つ抜けた守備者になってやる。

「チームとしては去年成し遂げられなかったプレミアリーグEAST優勝、そして一昨年成し遂げられなかったファイナル優勝、そしてクラブユース優勝というところは目標にしていて、個人としてはプレミアリーグでも違いを見せられる選手になりたいと思っています」

 川崎フロンターレU-18(神奈川)のキャプテンを託されている、しなやかで屈強なセンターバック。DF土屋櫂大(3年=川崎フロンターレU-15出身)は世界の舞台で味わった確かな基準を携え、さらなる成長を求めて、より厳しい道を突き進む。


 まずはビハインドから始まった。大宮アルディージャU18(埼玉)と対峙した、今シーズンのプレミアリーグEAST開幕戦。ホームゲームを戦う川崎F U-18は、相手のクロスがそのままゴールへ飛び込むややアンラッキーな形で、前半14分に先制を許してしまう。

 すぐさま全員で集まった水色のユニフォームの選手たち。キャプテンマークを巻く土屋は、チームメイトたちのポジティブな姿勢に頼もしさを感じていたという。「マイナスの声は一切なくて、自分たちに『まだまだ全然やれる』という自信はあったので、まず気持ちで相手に負けないこともそうですし、球際もそうですし、そういったところで相手に勝らないと結果にも繋がらないと思ったので、『相手どうこうじゃなくて、まず自分たちのプレーをやろう』と話しました」。

 大宮U18には前線に192センチのFW磯崎麻玖(3年)がそびえ立っていたが、年代別代表でも一緒にプレーした長身ストライカーを意識しつつも、自分のやるべきことを改めて整理する。

「相手フォワードには9番の背の高い選手(磯崎)がいることは把握していたので、そこでまずは競り負けないことと、セカンドを拾うというところは意識して、自分たちが引っ繰り返せれば、押される展開が少なくなると思ったので、チャレンジアンドカバーは隣の駿佑と徹底してやっていました」。センターバックでコンビを組むDF林駿佑(2年)との連携で、相手のアタックがチャンスになりかけた芽の段階で未然に潰していく。

 結果的にはそこから4ゴールを奪った上に、許した被シュートも1試合を通して失点したシーンの1本のみ。「今年は本当に『ひっくり返す力』というのがJ-VILLAGE CUPも含めて出せていて、その経験から自分たちに自信がありましたし、1人1人が『自分たちにはひっくり返す力があるんだ』という想いは持っていると思うので、それがこういう結果に繋がったのかなと思っています」。そう胸を張ったキャプテンも納得の逆転勝ち。開幕戦は今季のチームが有する『ひっくり返す力』を証明する一戦になった。



 プレシーズンではトップチームのキャンプにもフル帯同。「足元の技術やビルドアップというところではなかなかうまくいかないところも多かったんですけど、対人だったり空中戦や球際という自分の武器を発揮するところで少しは戦えた手応えもあったので、自分の自信にも繋がったのかなと思います」と今の自分が向き合うべき課題と、より伸ばしていくべき武器を、再確認する貴重な機会となった。

 とりわけその凄味を実感したのは、今シーズンからチームに加わったベテランセンターバックだったという。「丸山(祐市)選手とは1回隣でコンビを組ませてもらったんですけど、丸山選手の経験値は言葉で言われなくても隣で感じる部分が凄くありました。常に声を出して周りを動かせる選手だったので、そういうリーダーシップも含めて、『凄い選手だな』ということは肌で実感しました」。今季はU-18のキャプテンにも就任しているだけに、さまざまなチームを最終ラインで牽引してきた34歳のリーダーシップには、大いに感じ入るところがあったようだ。

 2023年は忘れられない世界との邂逅を経験することになった。11月にインドネシアで開催されたU-17ワールドカップのメンバーに選出された土屋は、ディフェンスリーダーとして全4試合にフル出場。アルゼンチンやスペインのアタッカーたちと、同じピッチで身体をぶつけ合った。

「今でもあそこで経験したことを忘れないようにトレーニングに取り組んでいます。フィジカル面やスピードと自分に自信のあった部分でも、ワールドカップでは消されていた部分もあったので、そこは改めて見つめ直していますね。筋トレもやっていますし、スピードの強化という面では今年からフィジカルコーチの方も付いてくださっているので、コーチングスタッフに相談しながら、フィジカル面も上げていっています」。

 イメージしている揺るがぬ基準は、マンチェスター・シティ入りが決まっているアルゼンチンの新星FWクラウディオ・エチェベリや、既にバルセロナでトップチームデビューを果たしているスペインの俊英FWマルク・ギウといった将来を約束されている才能たち。彼らと再び同じピッチに立つまでに、もっともっと成長してみせる。

 今シーズンは得点にも意欲的だが、リーグ戦での具体的な数字に言及すると、「今年も佐原(秀樹)コーチがセットプレーもいろいろ考えてくださって、去年は1点しか獲れなくてそれに応えられなかったので、今年はその期待に応えて、5点は少ないかな……、いや、5点は獲ります!(笑)」とまだまだ初々しい高校生らしさが滲んだ。

 ただ、ひとたびピッチに立ってしまえば、その優しい風貌とは対照的な容赦ないハードなプレーで、相手フォワードのメンタルを折り続けていく冷徹な守備者としての一面が逞しく顔を出す。フロンターレの、そして日本の未来を担い得る、しなやかで、屈強なセンターバック。最終ラインに堂々と立つ土屋櫂大が纏い始めている存在感、要注目。



(取材・文 土屋雅史)

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土屋雅史
Text by 土屋雅史

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