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仙台ユースが山形ユースに3発逆転勝ち。プリンスリーグ東北で唯一無敗をキープし、首位浮上

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試合終了直後、勝利を喜ぶベガルタ仙台ユースの選手たちと、悔しさを表すモンテディオ山形ユースの選手たち

[4.27 プリンスリーグ東北第4節 仙台ユース 3-1 山形ユース マイナビベガルタ仙台泉パークタウンサッカー場]

 4月に開幕した高円宮杯JFA U-18サッカープリンスリーグ2024東北。4月27日に第4節5試合が行われた。宮城県仙台市のマイナビベガルタ仙台泉パークタウンサッカー場では、前節、聖和学園高(宮城)に勝利して2位に浮上し、3試合で2勝1分のベガルタ仙台ユース(宮城)と、前節、尚志高セカンド(福島)に敗れ、1勝1分1敗の5位となったモンテディオ山形ユース(山形)が対戦した。

 前半、ペースを握ったのは山形ユース。中盤でボールを奪うと、ルヴァンカップ・富山戦でトップチーム出場を果たし、トップ下でプレーするキャプテンMF永井英次(3年)が、スピードに乗ったドリブル突破で決定機をつくり出していく。

 そして16分、「自分で(脚を)振りたかったのですが、周りがフリーだったので落ち着いてサイドを使って、そのままゴールにつながったので良かった」と永井が振り返った通り、永井からのパスを受けた右サイドハーフのDF菅原大幹(3年)がクロス。クロスを受けたMF曲山蹴斗(3年)がゴールを決めて山形ユースが先制した。その後も前半は山形ユースが多くの決定機をつくり出し、優位に試合を進めた。

 この流れを変えたのは仙台ユースFW齋藤俊輔(3年)だった。前節・聖和学園戦終盤の接触プレーで鼻骨骨折し、この日は先発メンバーから外れてベンチから戦況を見守ったが、MF永守大宙(2年)に代わり、前半42分にフェイスガードを付けてピッチに立った。「木曜日(試合2日前)からフェイスガードを付けて練習に合流していました。出たい出たいと思っていたので、出たらどんどん積極的にボールをもらって攻撃に良い影響を与えたいと思って入りました」という齋藤はこの日は右サイドハーフに入って攻撃に絡み始める。

 後半に入ると、齋藤のスルーパスから再三チャンスが生まれ、仙台ユースに流れが傾く。そして後半20分。左サイドでボールを受けたMF浅尾涼太朗(2年)が左サイドからクロスを上げる。そこに右サイドからゴール右ポスト近くへ猛然と走り込んだのは、DF門脇康太(3年)だった。「あそこ(ゴール右ポスト近く)に突っ込んでいくのは自分がサイドバックをやる上でマストだと思うので、それが出た感じです」とポストの脇でヘディングシュート。これが決まって仙台ユースが同点に追いついた。

 これで仙台ユースが勢いづき、後半28分には3月のルヴァンカップ・沼津戦でトップチーム出場も果たしたキャプテンMF横山颯大(3年)のCKがPA外にいた齋藤へ。そして、齋藤の浮き球スルーパスに反応したのはFW櫻田彪仁(3年)。「俊輔とはお互いプレーが見えている感じがして、俊輔がボールを持った瞬間、自分に来るなと準備をしていて、ちょうど良いボールが来てどフリーだったので、決めることができて良かったです」と右脚を振り抜き、逆転ゴールを決めた。

 試合終了間際には浅尾からパスを受けた齋藤が左サイドに抜け出し、齋藤からのクロスボールを門脇がゴールに押し込み、そのまま3-1で仙台ユースが勝利。同時間帯に行われた首位の青森山田高セカンドがブラウブリッツ秋田U-18に敗れたため、仙台ユースがプリンスリーグ東北唯一の負け無しチームとなり、首位に浮上した。

 仙台ユースの木谷公亮監督は「入りの内容は悪くなかったのですが、カウンターで失点した後、取り乱してまたカウンターを喰らいました。失点しても落ち着いて慌てずにできたら良かったです」と前半の戦いを反省し、その上で「今日の目的は勝つことなのでしっかり逆転できて良かったです」と勝利できたことを喜んだ。

 前節の聖和学園戦では左サイドバックのDF古川柊斗(2年)がゴールし、この試合は右サイドバックの門脇がゴール。仙台は現在アカデミースカウトを務める菅井直樹氏がトップの選手だった頃から、サイドバックがゴール前に上がってきて点を取るのがクラブの伝統となっている。

 そうした伝統をユース選手が継承しているようにも見える。木谷監督は「まず最初にリスクマネジメントを考えるのではなく、ゴール前に人数をかけたいので、サイドバックがゴール前のエリアに入っていくことはずっと言っていて、それにプラスしてリスクマネジメントと考えています。前半はリスクマネジメントが足りなかったですが、あそこにサイドバックが行くことで点が取れます」と両サイドバックの攻撃への貢献を称えた。

 ここまでの4試合、先制点を取ったことは一度も無く、必ず相手に先制を許しているが、引き分けた秋田U-18戦以外、全て逆転勝利を挙げている。「もちろん先に点を取りたいですが、これも良い経験になっています」と失点してもひっくり返すリバウンドメンタリティが醸成されている仙台ユース。昨年のプリンスリーグ東北は青森山田セカンドが優勝し、2位でプレミアリーグプレーオフに出場したが、今年は優勝でのプレーオフ出場、そしてクラブの悲願であるプレミアリーグ初参入を目指す。

 一方、敗れた山形ユースは連敗となり、8位に後退。内山俊彦前監督がJ3福島ヘッドコーチに就任したため、今年より指揮を執るのは自らも山形ユースで選手としてプレーし、その後トップ昇格して主力選手として活躍した秋葉勝監督だ。試合については「良い前半を終えて帰って来たのですが、前節もそうだったのですが、後半自分たちが落ちましたし、そういう隙を突かれたというところはあります」と振り返り、前節・尚志セカンド戦に続いて後半に足が止まり、逆転されてしまったことを悔やんだ。

 秋葉監督は、昨年はFW起用の多かった長身DF水戸部東次(2年)をこの試合ではセンターバックで起用し、試合終盤に前線へ上げるトライをしている。「ジュニアユースの時から両方のポジションで起用されていたので、ポジション固定せず使っていきたい」とポテンシャルを見て、将来を見越して選手を成長させようとしている。「選手にタフにたくましくなってほしい」という強い思いの下、今後の戦いで巻き返しを図っていく。

(取材・文 小林健志)

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小林健志
Text by 小林健志

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