叩き込まれたプロとしての在り方
――ラモスさんとの出会いを振り返っていただけますか。
「僕が読売クラブ(現東京V)の下部組織にいる頃にラモスさんがトップチームに入団しました。我々下部組織の選手とも遊んでくれて、とても可愛がってもらったんですけど、僕がトップチームに上がると一転、ものすごく厳しかった。『都並は中流家庭の次男で育って甘かったから、鍛え直した。素直だし、才能があるから伸びると思っていた』と後でその理由を聞かされました」
――どういった点で厳しかったのですか?
「ラモスさんは、積極的な姿勢だったらどんなミスでもOK。逆に、ちょっとでも消極的な姿勢を見せたら烈火のごとく怒る人で、消極的なプレーでミスをすると『お前なんかプロじゃない!』と怒鳴られました。ただ、ピッチの外に出たら別。練習後に恐る恐るロッカーに帰ると『都並、焼き肉食いに行くぞ!』という面倒見のいい兄貴になるんです。メリハリがすごい。まさにプロ。ラモスさんより恐いものなんてないですから、どんな相手と対戦しても恐くなくなりました(笑)」
――思い出に残っているエピソードを教えてください。
「僕が24歳くらいのときに、たった1年だけなんですけど読売クラブのキャプテンになったことがあるんです。いまなら理解できますけど、当時はラモスさんのプロ意識が分かっていなくて。エースのラモスさんは、監督からある程度コンディション調整を任されていて、練習は別メニューでも、試合で活躍すればいいわけです。でも、昔は体育会系のノリだし、僕も気合いが入っていたから、チームの和を大切にしたかった。みんながハードな練習をしている横で、のんびりしている姿を見て燃えてしまったんですね(笑)。『和を乱さないでほしい』と直談判しに行ったら『監督に許可もらっているのに何だ! お前はフロントか!』って返り討ちにされました(笑)」
――手厳しい話ですね(笑)。
「ここまでの話だと厳しいだけの人に思われるかもしれないですけど、ラモスさんはとても温かい方なんですよ。元々DFなので、みんなでサッカーをやるという意識がとても強い。決して自分自分の人ではないんです。だけど言いたいことは全部言う。そのかわり、お前も言ってこいという人だから、遠慮していたらダメ。根性がある先輩たちはバンバン言っていて、ラモスさんからすごく信頼されていた。あえて厳しく言うことで周りも良くなって、それがラモスさんにも還ってくることをわかっているんです。僕もラモスさんに意見できるようになった頃には、読売クラブがチャンピオンになっていましたね」
勝つことから逆算できるプレーヤー
――プレーヤーとしてのラモスさんの印象を教えていただけますか。
「サッカーの教科書。360度の視野を完全に持っていて、それを人にも言える人。たとえば、サイドバックのポジションが10cm違うだけで、相手のパスが通ってしまうんですけど、試合中にラモスさんに言われた通りに動くと、そこでボールが取れちゃうんです。『これが正しいポジショニングなんだ!』というのをラモスさんの言葉で覚えました」
――ボールテクニックが印象的ですが、違うんですね。
「ラモスさんがボールを取られたら、FWから最終ラインまで戻って奪い返すんですけど、当時は『頑張る人だな』という印象でした。いざ自分がやってみると、できないんですよ。相手が逃げて行くところを追いかけるわけで、逃げる猫が最後にどこに行くかなんてわからないですよね。でも、ラモスさんのセンスをもってすればそれがわかっちゃう」
――ラモスさんのプレーで印象に残っている場面をひとつ挙げていただけませんか?
「ラモスさんの上手さをひとつのシーンで語ることはできないですけど……、テクニックがある選手は、ボールにさわりたがって、パスをつないでポゼッションしたくなるんですけど、ラモスさんは違うんです。勝つことから逆算してプレーしているので『いまは前に蹴っておけ』『いまは相手を潰しておけ』となる。本当はそこがサッカーの肝で、自分たちがプレーするより先に相手を潰す。その点、日本サッカーの先を行き過ぎていた人ですね。ラモスさんの技術的なところでよく話題に出るチャンピオンシップ(1994年12月2日、V川崎対広島)のループシュートでのゴール(※ページ下部に動画あり)。あのゴールには裏話があって、ある選手が『ミスキック』と言ったんですけど、チーム全体で『何もわかってない!』と怒っていました。昔からラモスさんは浮き球のシュートが得意で、読売クラブの初優勝も同じようなシュートで決めていました。一番の得意技が大舞台で出るのは、練習量の賜物なんだと思いますね」
真のプロフェッショナルを体感せよ
――日本サッカー界にラモスさんが残した一番の功績はなんでしょうか?
「それは圧倒的なプロ意識です。100年以上サッカーの歴史があるブラジルから来た人ですから。ラモスさんだけでなく、ジーコさん、ドゥンガさん……。日本サッカーが良くなるために自分を犠牲にした彼らのおかげで、日本サッカーのレベルは格段に上がったと思います。実際、ラモスさんがいたヴェルディ、ジーコさんがいたアントラーズ、ドゥンガさんがいたジュビロは優勝しています。アマチュアにプロの意識が注入されてチームが変わったんです」
――そんなプロ中のプロとも言えるラモスさんと「Dream Match Challenge」では一般の方が対戦することができます。
「貴重な機会だと思います。それはラモスさんのプレーを間近で見られるというよりも、サッカーに対する真剣さを体感できるからです。エキシビジョンマッチでも、『ラモスのプレーを見に来るんだから、プロとして当然だ』と1か月くらい前からコンディションを整えてきますから。あと、本当のプロフェッショナルなので、『Dream Match Challenge』でも楽しむと思います。楽しむというのは、まず真剣にやる。でもメリハリをつける」
――メリハリですか?
「昔、ラモスさんと子どものサッカー教室をやっていたときに『マジメに遊べ!』と怒られたことがあって。プロが本気でやったら子どもはボールに触ることもできないですけど、だからといってわざとボールを取られたりすると子どもたちに伝わってしまうんですよね。だから、本気のプレーで圧倒する一方、わざと遅れ気味に本気のスライディングにいったりする。相手を楽しませる技術も持っているんです。これは子どもを教えるときに僕もやっていますね」
――『Dream Match Challenge』で対戦する方にアドバイスはありますか?
「相手を楽しませるために隙をつくってくれるはずなので、その間に攻めたほうがいい(笑)。試合を質の高いものにするために、相手にスペースをくれますから、そこを一気に攻める! もし先に1点取れたら、『最高に楽しい』ことが起こりますよ。ラモスさんの『本気』をぜひ楽しんでください」
(写真撮影 金澤智康)
(取材・文 奥山典幸)
かつて日本代表の10番を背負った日本サッカー界のレジェンド、ラモス瑠偉率いるチームと対戦できる、ヘア&スカルプエキスパートシリーズ「CLEAR for MEN」「CLEAR」のキャンペーン「Dream Match Challenge」。CLEARレジェンドへの挑戦権を獲得できるのは1チームのみ。当選したチームは来年1月、ラモス瑠偉率いるCLEARレジェンドと15分ハーフ、5対5のフットサル対決を行い、勝利すれば賞金として100万円が手に入る。
