[3.17 フットサル全日本選手権 決勝 名古屋4-4(PK4-3)フウガすみだ 代々木]

　負けるはずが、ない。強い確信は、決して揺らぐことはなかった。今シーズン、デウソン神戸から名古屋オーシャンズに加入したFP吉川智貴は、常にフウガすみだに先手を取られる試合展開の中でも、全く焦らなかったと明かす。「先制されたときも、その後も、焦りはありませんでしたね。みんなも『まだ時間があるから』と話していましたし、落ち着いてプレーできました」と、振り返る。

　1-2で迎えた前半15分、吉川はFPリカルジーニョからパスを受けると、左足でゴールに叩き込んだ。その後、両チームが1点ずつを取り合い、試合は延長に突入する。迎えた延長前半4分、今度は右足を振り抜き、ゴールに突き刺した。この試合、ようやく名古屋がリードできた瞬間だった。試合終了4秒前に得点を挙げられて追いつかれたが、PK戦の末に名古屋は全日本選手権初優勝を遂げた。

　大会MIPには、決勝で2ゴールを挙げる活躍を見せた吉川が選出された。「表彰台に上る前に、スタッフの方に『MIPになりました』って耳打ちされたのですが、とにかくビックリしました。MIPは川ちゃん(川原永光)だと思っていたので」と、笑顔を見せた。

　試合中にも、驚くことがあったという。国内唯一の完全プロクラブである名古屋が試合をするとき、敵地での試合だけじゃなく、中立地開催の試合でも、アウェーゲームで戦っているような雰囲気になる。この決勝も、対戦相手が東京のクラブだったこともあり、まさにアウェーの中で行われた。初めて名古屋の一員として、中立地での決勝を経験した吉川は「こんなにアウェーになるものなんだって、ビックリしました。まさか会場全体がフウガの応援に回るとは思っていなかったので」。吉川がゴールを決めた瞬間、会場は一瞬、静まり返った。「あれは、気持ち良かったですね」と、吉川は満足気に振り返った。

　名古屋に加入して1年目で、主力に定着した。来季は新監督の下、新たな船出を迎えることになる。今季、無敗で3冠を達成したチームには、大きな期待がかかってくる。「そうですよね」と、一瞬、不安そうに声を落とした吉川だが、すぐに「大丈夫です」と切り替えた。「来シーズンはホームの名古屋でアジア・クラブ選手権もありますからね。無敗で…っていうのは、難しいと思いますが、4冠を目指していきたいと思います」。日本代表入りも期待される逸材は、更なる活躍を誓った。
(取材・文　河合拓)

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