beacon

松本国際はエース不在を乗り越え連覇。個ではなくチームで戦う集団に:長野

このエントリーをはてなブックマークに追加

松本国際高が2年連続6回目の全国出場

[11.11 選手権長野県予選決勝 都市大塩尻高 0-1 松本国際高 サンプロアルウィン]

「一人に頼らないチームになった」。2年連続6回目の全国出場を決めた松本国際高。チームを率いる勝沢勝監督は、誇らしげな表情を浮かべた。

 指揮官が口にした“一人”とは、FW佐々木晄汰(3年)だ。プリンスリーグ北信越2部で挙げた総得点30のうち、実に10点は彼が沈めた。3年生主体の昨季に唯一スタメンを張ったことからも、スケールの大きさがうかがえる。

 連覇が懸かった今大会は、そんなエースをコンディション不良で欠いた。初戦から10-0、5-0、4-0と攻守に圧倒し、危なげなく進んだ決勝の舞台。堅守を誇る都市大塩尻高に対し、チームの真価が試された。

 序盤から優位に進めるも、なかなかGK熊切悠真(3年)を脅かすには至らない。右サイドハーフのMF山本湧大(3年)を筆頭に外から攻め込んだが、都市大塩尻も中央だけは破らせなかった。それでも選手交代を重ねながら、攻勢を貫く。先制するのは時間の問題かと思われた。

 延長後半の94分、CKからDF渡邊智紀(2年)のヘッドで先制。時間はかかったものの、粘り強く堅守をこじ開けた。守備でもその渡邊とDF城元諒星(3年)のセンターバックコンビを軸に、集中を切らさない。都市大塩尻の武器であるセットプレーを極力与えず、与えたとしても一枚岩となって跳ね返し続けた。

「お前らはいままでで一番成長してきた」。勝沢監督は試合前やハーフタイムに、そう投げかけたという。さらに「苦しくなったら応援席を見ろ」と続ける。その応援席にはエース・佐々木の姿もあった。

 振り返れば、夏のインターハイは佐々木ばかりが目立っていた。敗れた準決勝・市立長野高戦のシュート数は10本。そのうち5本は、彼の左足を中心に放たれた。「練習でもあいつ任せみたいになっていた。インターハイで負けてから火がついて、選手権でいなくてもやれる自信がついた」と山本は言う。

 今大会もコンディションやパフォーマンスに応じて、メンバーの入れ替わりは少なくなかった。準決勝ではMF関泰洋が体調不良によって欠場。その準決勝で途中出場からゴールを決めた山本は、決勝でスタメンの座を射止めた。さらに言えば決勝のスコアラーである渡邊は、夏からAチームに上がり、3年生から定位置を奪ってヒーローに輝いたのだ。

 昨季はJクラブに練習参加したMF矢越俊哉(びわこ成蹊スポーツ大)らを抱え、個を生かすチームだった。しかし今季は突出した個がいない分、これまで以上にチーム力を高めてきた。まさにその成果があらわれたファイナルだったと言える。

「あいつ(佐々木)が戻ってきて、また一緒にできる。もっと強くなれるんじゃないか」。そう山本が声を弾ませたように、全国までの1カ月半でさらなる成長が見込まれる。

(取材・文 田中紘夢)

●第102回全国高校サッカー選手権特集
ゲキサカ編集部
Text by ゲキサカ編集部

TOP