beacon

名将の就任から6年目、霞ヶ浦は躍進の一年に。選手権予選も初の決勝進出、準優勝:茨城

このエントリーをはてなブックマークに追加

霞ヶ浦高は選手権予選でも初の決勝進出を果たし、準優勝

[11.12 選手権茨城県予選決勝 明秀日立高 4-0 霞ヶ浦高 カシマ]

 後半の4失点で敗れたものの、霞ヶ浦高にとって飛躍の一年となった。いずれも都立高の三鷹高(現三鷹中等教育学校)、駒場高を全国高校選手権へ導いた名将・山下正人総監督の就任から6年。今年は5月の関東高校大会予選で初優勝と、初の関東高校大会出場を果たした。続く、6月のインターハイ予選でも初めて決勝へ駒を進め、準優勝。選手権予選でも、昨年度のベスト16から初のファイナリストにまで駆け上がった。

 今大会準決勝では、4連覇を目指した名門・鹿島学園高を2-2からのPK戦の末に撃破。決勝で勝てば、山下総監督にとって3校目の選手権出場という快挙だった。周囲からの反響は大きかったという。

 チームは準決勝に続き、決勝でも鹿島アントラーズのホームスタジアムである県立カシマサッカースタジアムでのプレーを経験した。決勝の観衆は3,559人。その中では、ベンチからの声は届かない。「(選手権決勝を)初めてやるってことは、色々なことを経験したチームと違うから。細かいことを言っていかないといけない」と山下総監督。緊張もあり、決勝は難しい戦いだった。

 それでも、前半は相手のスピード、強度に苦戦しながらも0-0。どうしても押し込まれる時間帯が増えていたが、引いて守るのではなく、前へ出てボールと1点を奪いに行っていた。

「守ろうと思えば、守れなくはない。でも、全国行って勝つには、0-0のPKじゃ(代表校になっても全国大会で)勝てない。1-0でも何でも点を取らないと」(山下総監督)。回数は少なかったものの、いずれも突破力のある10番MF大谷陸斗(3年)とMF安部友兜(3年)の両翼を活かした攻撃や、右SB柴田瑞基(3年)のフィード、FW谷本一翔(3年)のロングスローからゴール前のシーンを作り出した。

 前半32分には大谷の左クロスからFW吉沢友慶(2年)が決定的なヘッド。さらに前半終了間際にも大谷のクロスにMF久保木周主将(3年)が飛び込んだ。だが、ここで決め切れず、逆に後半立ち上がりにセットプレーから先制点を献上してしまう。

 15分にも失点。攻撃的なカードを切って攻め返したが、24分に相手の高速カウンターから3点目を奪われて勝負の行方を決定づけられた。それでも、スタンドの応援に後押しされる中で久保木を中心に気迫のプレーを継続。最終的にスコアは0-4まで開いたものの、堂々の戦いだった。

 6年前は県南地区予選の壁に阻まれていたチームが、この1年間で3度も県決勝進出。関東大会を経験し、全国大会出場まであと1勝に迫った。山下総監督は「タラレバはない。(決勝は)力負け。それはどうしようもない。(でも、3度決勝まで来ることができて)良かったんじゃない? 何も無いところからだったからね」。女子サッカー部も昨年度の女子選手権に初出場し、今回の関東予選でも強豪・前橋育英高を撃破するなど全国大会出場を目指して奮闘中。霞ヶ浦のサッカー部全体が勢いづいている。

 男子は関東や東海1部リーグの大学へ進む選手もいる。この1年の経験でチームの視線が高まったことは確か。ただし、ここから、もう一つ勝って全国大会へ行くことは簡単なことではない。吉沢やCB須崎佑星(2年)、MF青野嘉寿紀(2年)らこの日、選手権予選決勝を経験した2年生やスタンドの下級生、挑戦心を持って霞ヶ浦を目指す中学生たちが、チーム力を向上させて来年以降、新たな歴史を刻む。

チームを牽引したMF久保木周主将

準優勝の悔しさを来年の活躍に結びつける

(取材・文 吉田太郎)
吉田太郎
Text by 吉田太郎

TOP